表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【2巻も準備中!】転生皇女はセカンドライフを画策する  作者:


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

400/429

400 船と準備

顔の傷が綺麗さっぱり跡形もなく消えた頃、離宮にアルヘルムからの手紙が送られてきた。


手紙には大陸との交易にあたり船の購入を考えている、皆がアデライーデの意見を聞きたいという事が書いてあり、明後日に王宮に招きたいと簡潔に書いてあった。



「交易用の船って、バルクでは造ってないの?」

「はい、漁船のような小型船はバルクでも造れますが、地形的に中型より大きな造船は難しく、バルクが持つ警備艇は北のノアーデン国から購入致しております」

アデライーデの問いに、レナードはバルクの初夏のフルーツであるカシスのジュースと炭酸水を1:1で割ったカシスソーダを差し出した。


赤いカシスソーダはルビー色をして、とてもきれいである。飾りとして入れられた赤スグリの実が炭酸の泡に包まれてふわりとグラスの中で踊っていた。



「でも、私。船の良し悪しとか全く分からないわ。見たことはあるけど、乗ったことも…ないし」

ストローでカシスサイダーに口をつけながら、アデライーデは呟いた。


ボートになら乗ったことはある。子供の頃に父親が漕いでくれた手漕ぎボートと、若かりし頃のデートで乗った足漕ぎの白鳥ボートくらいなら…。


そんな自分に交易用の船について意見を求められてもなんと言っていいかと悩んだ。



「難しくお考えにならずともよろしいのでは? 船を話題にしたアルヘルム様達との気軽な茶会とでもお考えになればよろしいかと思います」

「そういう事なら…」

この手紙の真の意図を知っているレナードは、さりげなくアデライーデの気持ちのハードルを下げた。



ーそれなら、まぁいいかしら。横浜の開港祭や帆船のイベントに昔行ったくらいなのよね。フェリーもだけど、豪華客船とか乗ったことないし。一度くらい東京湾ナイトクルーズとか行っとくべきだったかしら…。あ、この世界の水兵さんってセーラー服なのかしら?



そんな事を思いながら、アデライーデはレナードとマリアに明後日のお出かけの準備をお願いした。



この招待は『船の購入について』というのは名目で、アデライーデの事を心配していたテレサとメラニアがアルヘルムとタクシスに、アデライーデの頬の傷が治ったら王宮に茶会に招くようにせっついたのだ。


本当は離宮に飛んでいって慰めたいが、それをすればアデライーデの「内々に納めたい」という気持ちをないがしろにしてしまう。でも、本当に完全に傷がなくなったのか、どうしても自分達の目で確かめたかったのだ。



アデライーデが王宮の王族プライベート談話室に入ると、アルヘルム達はすでに揃い、ソファで談笑していた。


「遅れて申し訳ありません」

慌てて挨拶をすると、すぐにテレサが立ち上がり素早くアデライーデに近寄ってきた。


「お久しぶりですわ。アデライーデ様。歓待の午餐会のお疲れは取れまして?」


いつもは適度なあいだをとって挨拶をしてくるテレサが、息もかからんばかりの距離まで近づきアデライーデの手を取った。

しかも、笑顔に謎の気迫がある…。



「え? ええ、もう…すっか…り?」


ー近い。近いですよ? どうされました?テレサ様。

テレサはいつもはもっとふんわりとしたラインのドレスなのに、今日に限って膨らみの少ないドレスを着ている。



「ええ、あれは半日ほどの長い社交でしたからね。少人数ではございましたが、殿下方も交えた密度の濃い社交でしたもの」

いつの間にか近寄っていたメラニアも同じような膨らみの少ないドレスで、にこにこと笑いながらテレサと同じ距離で、空いているアデライーデの手を取った。



にこにこ。にこにこ。

じーーーーっ。

ドキドキドキ…。


ーえ? なになに?

頬の傷のことなどすっかり忘れていた陽子さんは戸惑いながら「はい」と、小さく笑う。


数秒の笑顔タイムが終わると、ホッとしたような顔でテレサが口を開いた。



「良かったですわ。すっかりお疲れも取れているご様子で」

「ええ、本当に」

メラニアもテレサと顔を見合わせて、ホッとした顔をした。ソファでアルヘルムとタクシスは苦笑いをしながらその光景を眺めているだけだった。



「どうぞお座りになって。船の見本図が届いてますのよ」

テレサとメラニアに、両脇を抱えられるようにしてソファまで連れられたアデライーデはぎこちなくソファに座ったが、すぐに帆船の話からセーラー服の話題になり、急遽用意された紙にセーラー服のデッサンを描くことになった。


そんな楽しい話題の途中で、アデライーデはお茶を吹くような話題を耳にした。



「へ? フィリップ様の婚約者の選定ですか?」

「あぁ、そろそろ始めてもおかしくないな」

「そうですわね」

アデライーデの驚きに、アルヘルムとテレサは当然のように答えた。



「あまりに早すぎるのもなんだが、遅すぎるのも国内がざわつく。そろそろ本格的に始めなければな」

「懐かしゅうございますね。私の時もちょうどアルヘルム様がフィリップの年の頃からでしたもの」



ーフィリップ様って今年11歳よね? 11歳って小学校5年生よね? ランドセル背負ってる年に結婚相手を決めるんだ……。


確かに自分アデライーデも14歳で白い結婚をしているが、中身が色々経験済みのアデライーデの身に起こる事とフィリップの話だと、また受け止め方が違ってくる。


ティーカップを口につけながら、王族の話を庶民として陽子さんは黙って聞いていた。

https://www.tombow.gr.jp/uniform_museum/pocket/03.html

学生服のトンボさんのサイトでのセーラー服の歴史のページです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
貴婦人の顔の傷というものの重大さが実感されますが、本気で心配しているテレサとメラニアの親愛の情の深さが嬉しいですね。 距離を詰められているアデライーデ=陽子さんは、相手の心の内が分からず平常の態ですが…
この世界にはセーラー服は無いんですね。 アデライーデ(陽子さん)がどうやって誤魔化したのかが気になります(笑) それにしても、フィリップの婚約話ですか〜。 やっぱり、ズェーデンのお姫様辺りとかになるん…
400話到達おめでとうございます。 お顔の傷。きれいさっぱり消えてよかったです。 これで傷が残ったりしたら、帝国で粛清の嵐が吹き荒れていたかもなんて思うと…… アデライーデの周りは優しい人でいっぱ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ