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【2巻も準備中!】転生皇女はセカンドライフを画策する  作者:


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390 クレッセズッペで始まる午餐会


「このたび帝国のフリードリヒ殿下エリザベート妃殿下両殿下、並びに皆様のバルクへの訪問を心から歓迎致します」と始まったアルヘルムの歓迎の言葉のあと、それを受けて帝国のフリードリヒ殿下が謝辞の言葉を口にする。


そして、アルヘルムと殿下の乾杯から私的な午餐会がバルク王宮の貴賓室で始まった。


他国の王族も順次フォルトゥナガルテンに招待が決まっているが、一番最初の招待は帝国からとなった。


そして、招待客の宿泊先は殿下達も含め、全てライエン伯爵のところと決まっている。


ライエン伯爵は辺境伯ではないが、ライエン領はバルクをはじめとした東の周辺小国へとの街道の要所であり非常事態用に拠点として利用できるように、屋敷は大きく造られているからだ。


そして将来の皇太子であるフリードリヒ殿下とカトリーヌ・クレーヴェ公爵夫人はアデライーデの肉親である。アルヘルムとも親族となる事から親族としての交流を深める為、今回フォルトゥナガルテン招待前に私的に交流を持つこととなった。


フリードリヒ殿下からの申し出で、バルクに負担をかけぬよう殿下夫妻とクレーヴェ公爵夫妻、それとカトリーヌの後見であるダランベール侯爵のみの出席となった。



本来の宮中午餐会であれば、他の貴族も招き上座にバルク王族と主賓、下座には何本もの流しテーブルを置くが本式だが、今回は貴賓室の中央に大きな円卓を置いて開催されている。


席次は上座中央には国王アルヘルムと、その右手には主賓のフリードリヒ殿下の二人が座る。


そしてフリードリヒの右隣は正妃アデライーデ、エリアス・クレーヴェ公爵、タクシス宰相夫人メラニアと続く。


そしてアルヘルムの左隣にエリザベート殿下となり、隣は王妃テレサが座り、続いてカトリーヌ・クレーヴェ公爵夫人、タクシス宰相、そしてダランベールの席はタクシス宰相夫妻に挟まれている。



円卓の中央には、料理の匂いの邪魔をしない香りのないテーブルフラワーが低く華やかに飾られていた。



ー結婚式の円卓って感じね。合計十名が座るから結構大きいわね。


本式であれば私的な宮中午餐会でもテーブルは流しテーブルを使うのだが、私的と言う事と正妃と王妃を平等に扱うバルクの意向を示す為に円卓にしている。

表向きは。


唯一カトリーヌの気質を知るマリアの話を聞き、円卓であればなにか不穏な空気になった時に流しテーブルより誰かが気づきやすい。そしてすぐに話術で抑え込めるように、カトリーヌの両隣にテレサとタクシス、ダランベールの両隣にタクシスとメラニアを配置したのだ。


アデライーデの後ろにはレナードとマリア、テレサの後ろにはナッサウと万全の布陣で臨んでいる。


そしてマリアは、カトリーヌの後ろに見慣れた顔を見つけた。カトリーヌ付きの侍女の中にいたローズは、表情は変えずにマリアと視線が合うとぱちりとウィンクをして静かに控えていた。



「本日のスープは、旬のクレソンのスープ、クレッセズッペでございます」

料理長の声とともに、給仕が鮮やかなグリーンのスープをチューリンから目に涼やかなガラスのお皿に注いだ。

そしてサワークリームで円を描くように回し入れ刻んだクレソンをあしらいに添える。


アルヘルムとフリードリヒが口をつけてから口にすると、クレソンのピリッとした辛味と爽やかな香りは残しつつも、長時間煮込まれた数種類の野菜ブイヨンの深みととろみをつけるために入れられたジャガイモのまろやかな味わいが口の中に広がった。



「とても味わい深いですね。帝国でもなかなかこのような味には出会えない」

フリードリヒの言葉に料理長は黙ってお辞儀をした。



「殿下にお褒めの言葉を頂けるとは、うれしいものですね」

アルヘルムとフリードリヒの和やかな会話を皮切りに各人が隣の席の人と会話の合間にスープを口に運ぶ。



「それに、この器はクリスタルガラス製では? 天井に飾られたクリスタルガラスのシャンデリアも見事だが、グラスだけでなくこのような食器までガラス製なのですね。さすがガラスの王国と言われるだけに素晴らしい」


早速、王族の社交が始まったようだ。


アデライーデは右隣のクレーヴェ公爵をちらりとみる。エリアスは整った顔立ちを崩さず静かにスープを口にしていた。

会話のマナーとして先に上位の者が下位の者に声をかけるのが基本である。


お客様であるフリードリヒがアルヘルムと喋っているので、アデライーデがクレーヴェ公爵に話かけるのが順当なので陽子さんは、タイミングを見計らっていた。



「遅れましたが、ご結婚おめでとうございます」

「祝辞、ありがとうございます。正妃陛下もバルク国に降嫁以来、陛下と睦まじくお過ごしと伺っております。両国にとって何よりでございます」

エリアスはナプキンで口元を拭いてから、貴族の笑みを湛えながら完璧な返事を返す。



ーどう見たって高校生くらいの年よね。それなのに完璧な挨拶…。すごいわね、貴族って。薫や裕人(ひろと)が高校生の時に、親戚の集まりで滅多に会うことのない親戚相手にこんな立派な挨拶なんて出来なかったわね。



「あ、どうも」や「ありがとうございます」が精一杯だった我が子達とエリアスをどうしても比べてしまう。


今回の帝国からの訪問で、事前にアルヘルムが離宮に訪れた時に、マリアはきっぱりと「今までの人生において流行本以外で『秘められたる恋』など、聞いたことがございません」とアルヘルムの問いに断言した。


貴族の生活は現代と違い、その全てにおいて使用人の手を通る。訪問もだが手紙や花束など身近な侍女やメイドの手を通らない交流はありえない。侍女やメイドも(あるじ)に仕える上の必須情報として、そういう事は共有するのだ。


まして、警備の厳重な帝国の離宮暮らしなのだ。マリアはカトリーヌに仕えていた間、エリアスに限らずカトリーヌに社交上の手紙や贈り物以外見たことはなかった。


以前仕えていた主の事をぺらぺらと喋るのは使用人としての規範に触れるので、マリアは言葉を選んだがそれでアルヘルムは察したようだった。


今度、フリードリヒ殿下夫妻とクレーヴェ公爵夫妻とダランベール侯爵を私的な午餐会に招くにあたり気をつけるべき事をアルヘルムがマリアに尋ねた。



「ダランベール侯爵様は使用人に対して厳格ではございましたが、理不尽なことはなかったと記憶しております。カトリーヌ様は……、アデライーデ様とはまた違った方面で細かい気配りが必要な方かと…」


ーん?


「そうか、わかった」


ーん? んん??


「アルヘルム様、給仕やメイドにはいつもより熟練の者を選ばれた方が良いかと」

「そうだな」


ー…………。

レナードを交えて、三人で真剣に話しだした為に、心当たりのあるアデライーデは何も言えずに黙ってお茶を口にした。



ーウニ事件、根に持たれているわね。

アデライーデは、エリアスの返事に「ありがとうございます」と笑顔で返して、少しぴりりとしたクレッセンズッペを空にした。

このクレソンのスープ、実はドイツだけでなく欧米の各地でよく飲まれていらしいです。

ドイツにはエアフルトという街に「Erfurter Kresse-suppe」という街の名を冠した

有名なクレソンのスープがあります。


https://x.com/leckermaul_jp/status/1767459428452982928


こちらはドイツの「今日のお料理」っぽいテレビ番組で紹介されているクレソンスープ。

https://www.swr.de/video/sendungen-a-z/ard-buffet/rezepte/osterbrunch-kresse-suppe-100.html



フランスではクレソンのポタージュが有名みたいです。

今回のクレソンのスープのイメージはポタージュの方が近いかも。


辰巳 芳子先生のクレソンのポタージュ

https://www.kyounoryouri.jp/recipe/2855_%E3%82%AF%E3%83%AC%E3%82%BD%E3%83%B3%E3%81%AE%E3%83%9D%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%82%B8%E3%83%A5.html



あとドイツにも春の七草がゆならぬ春の七草スープがあるそうです!


Sieben Kräutersuppe ズィーベン クラウターズッパ


https://x.com/masahitosato1/status/1214385064089440256


ふきのとうやタラの芽みたいに

やっばりドイツでも、春は苦みのあるものを食べてデトックスっ!という感じなのでしょうか。


作者、実は大のクレソン好きでw

今年プランターで育ててみようかなって思っています。


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― 新着の感想 ―
クレソンってうちの田舎ではタカナって呼んでて、川に自生してるのを摘みに行って、おひたしで食べてました(ㆁωㆁ*)田舎から出てきて、スーパーでクレソンって名前で売ってて、これってそんな名前だったんだΣ(…
前回の流れから、今回は対策会議かと思ったら本番でした。 きっと、マリアからのカトリーヌの情報の提供は簡潔で、アルヘルムたちは一を聞いて十を知るという感じだったのでしょうね。 いかに良い感情が抱けなくて…
そうか〜、カトリーヌ(+ダランベール)フォロー要員として兄夫婦と一緒に来ましたか〜。 これだったら、カトリーヌ(+ダランベール)が不用意な発言をしても何とかなるかもですね(老練なダランベール相手では分…
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