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【2巻も準備中!】転生皇女はセカンドライフを画策する  作者:


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38 蜂蜜と紅茶


タクシスの馬車に先導され、王宮の正門から入る。

そして、王宮の入り口に馬車が着けられた。


侍従長とずらりと並んだ文官達に出迎えられ、先に馬車を降りたタクシスにエスコートされ迎賓室に通されると、侍従長の挨拶を受けた。


「フローリア帝国 第7皇女アデライーデ様 バルク国にようこそおいでくださいました。私は国王陛下の侍従長をしているクライン・ナッサウと申します」


「歓迎ありがとうございます。アデライーデでございます」

アデライーデは淑女の挨拶で応え、にっこりと微笑む。


クラインは笑顔の表情は変えず、一拍おいて恭しくお辞儀を返す。


「アデライーデ様、長旅お疲れでございましょう。国王陛下にお会いする前に少しお疲れを癒やされるとよろしいかと。お部屋をご用意しております。女官長に案内させましょう」

タクシスがそう言うと、控えていた女官長が進み出た。


「ありがとうございます。それではお言葉に甘えて少し休ませていただきます」そうアデライーデが告げると女官長は、アデライーデとマリアを連れ貴賓室を出ていった。


「タクシス様、あのお方が『忘れられた皇女様』ですか?」

「そのようだが…」

「気になることでも?」

「ああ…陛下とお会いしたい」

「かしこまりました」


タクシスはナッサウを伴い、急ぎアルヘルムの執務室に向かった。



バルク国にもアデライーデが忘れられた皇女との話は入っていた。


当初、降嫁されるのは第6皇女のカトリーヌ様との打診であったが、すぐに、第7皇女のアデライーデ様ではどうかとの使者がバルク国に訪れた。

強大なフローリア帝国の意向に小国のバルク国が否と言えるわけもなく、大国と縁を結べるのであれば誰が降嫁されても変わりがないと受け入れた。


元々この輿入れ自体、盟約を結んだばかりの小国にとっては降って湧いたような『うますぎる』話だったのだ。



が、政略結婚とは言えど急な皇女のすげ替えに調査をさせれば、どうも小国には大貴族に縁のあるカトリーヌより後ろ盾もないアデライーデで十分…と言う話が流れていると報告があった。



「バカにされたものよ」

いかに小国とは言え、小国なりの矜持は持っている。

帝国の厄介払いに付き合わされるとは…と腹が煮えるが、帝国は後ろめたいのかアデライーデの輿入れには破格の条件を付けてきた。


アデライーデが婚姻している間、帝国が直接買い上げる帝国への輸出品の関税を大幅に引き下げるとの事だった。


皇帝の娘婿と言うのも栄誉だが、それでは腹が膨れない。

帝国にとっては僅かな金額でもバルク国にとっては経済効果の方が大きな魅力だった。



「アルヘルム様、アデライーデ様お着きでございます」

「そうか…とうとうお着きか…」


入室の許可を得て、侍従長がアルヘルムに報告すると

書類から目を上げるアルヘルムは、その黒みがかった深いグリーンの瞳の色には疲れの色が強く出ていた。



「陛下。少し休まれては?」

「そうだな…このあとは大儀な事が続くしな」

「タクシス様が目通りを願っております」

「皇女様の出迎えの報告であろう。茶は二人分。ポットは置いて行ってくれ」

「かしこまりました」


すぐにタクシスが入室し、アルヘルムに挨拶をするとアルヘルムは目の前のソファを勧めた。

ナッサウはテーブルにティーカップを置き、タクシスのサイドテーブルにシルバートレイごとティーポットを置いて静かに退室する。


扉がカチャリとしまってから、2人は、たっぷり蜂蜜を入れカップの紅茶を飲み干す勢いで口にするとやっと一息ついたようだ。


「どうだった?」

「本物の皇女様だな。噂は当てにならん。他の皇女達より見劣りがするとか言われていたが、あれで見劣りがするなら他の皇女達は女神か妖精だな」

「随分買っているな」

「あぁ、帝都でご婦人方に揉まれたからな。だがな…」


「だが?」

「子供だ」


「ふぅ………だな…」

「13だったか?」

「いや、今春で14になったそうだ」

「………いくつだ」

「だから、14だと…」


タクシスがティーカップを置いて手をアルヘルムに向ける。

アルヘルムは顔を横にそむけてぼつりとつぶやいた。


「……………31」

「夏が来れば32だろう?」

「でも、今は31だ!」

「女の様に1つの年に拘るとは…」

「それでも、倍以上の年は離れてるぞ」


「正確には18だな」

「…………あぁ。まだゲオルグの方が年齢的には釣り合うな」



ゲオルグ・バルク王弟殿下、25才。本物の独身貴族である。



「それでも11も上だが…。国王は皇女と違って一人だからな。変えられないぞ。譲位するなら別だが」

「………」

「真剣に悩むな。年の差婚は王族貴族にとってわりと普通だぞ」



この2人は年も近く、母方の従兄弟で幼い頃から一緒に育ったせいか二人だけになると兄弟以上に砕けてじゃれ合う。



タクシスはティーポットのお茶を2つのカップに継ぎ足し勝手に蜂蜜を入れた。


「この紅茶を美味いと言っていた。お世辞には聞こえなかったな。それに…皇帝はあの皇女の為にうちから海老を取り寄せたらしいぞ」

「うちから?帝都に着くまでに傷むだろう」

「今の時期なら、早馬と氷でなんとかなる。すこぶる高価になるがな。うちの祝いの席には海老を使うと聞いて取り寄せたらしい。皇帝もうちの海老を気に入っていたと言っていたぞ」



「厄介者じゃなかったのか?」

「噂はわからん。お前の目で見て判断してみろ。年は近くとも、第6皇女より良かったんじゃないかと思うがな。まぁそれも噂だが」

「……そうだな」



「このあと、会うのか…子供相手にどうすればいいんだ…」

「ちゃんと着替えて食事もするんだぞ。初見は大事だからな。どうしても無理ならお客と思って扱えばいいさ」


「お前も…」

「断る」


「婚約者2人の間に入るほど無粋じゃない。それに俺も今から食事の約束なんだよ。グランドール宰相閣下名代のヨハン・ベック次席文官殿とな」


にやっと笑ってそう言うとアルヘルムを1人執務室に残し、タクシスは自室に戻っていった。

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とある国王「え?娘ちゃんって言ってもいい歳が…え?」 とある宰相「そこは上手く……宥めて下さい。…(圧) ね?お願いしますよう!!」 王「あ、はい。」 ※こんな関係性を予想…にゃ。
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