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【2巻も準備中!】転生皇女はセカンドライフを画策する  作者:


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309 工房見学

「こちらは、ワイングラスやタンブラーなどを主に作っている場所となります」


そうヴィドロに指さされた建物は、馬車を止めた村の中央広場からさほど遠くない場所にあった。


元は納屋かなにかだったのだろうか。

木造屋根の古い石造りの建物の大扉の中に入ると、中は意外と明るい。明かりとりと通風を兼ねているであろう屋根と屋根が合わさった横の柱以外の壁は、開閉式になっていた。


広い屋内の真ん中に小山のような丸い窯があり、6つのオレンジの口を開け、職人が窯の後ろから火の色を見ながら薪を()べている。


アデライーデ達が石造りの建物に入ると、職人達は一斉に帽子を取り誇らしげな、そして少し緊張したような顔をしてお辞儀をしたが、アルヘルムが「続けよ」と声をかけると、また黙々と作業に戻っていった。


小雪がちらつく季節なのに工房内は、ぽぅと暖かい。すぐさま後ろに控えていたマリアがアデライーデのストールとケープマントを、アルヘルム付きの侍従がアルヘルムのマントを手早く脱がし、側付きの者に手渡した。


「危のうございますので、炉や職人には近づかないようにお願いいたします」

そう言うと、ヴィドロはグラスを作る工程の説明を始めた。


窯の6つ口の中にはそれぞれ坩堝(るつぼ)があり、ガラスがどろどろに溶かされている。その溶かされたガラスをパイプ状の吹き竿の先に巻き付けて、少しずつ息を吹き入れグラスの形を作ってゆく。


ヴィドロが説明を始めると、ヴィダがその説明のとおりにガラスを吹き竿で膨らませてゆく。


-ドキュメンタリー番組で見たとおりだわ!作り方って変わらないのね。


テレビでしか見たことがないグラス作りを目の前にして、わくわくしながらヴィダの手元を見ていると、ヴィダは吹き竿をくるくる回しながら少しずつ息を吹き込み、まぁるくリン-グラスの丸い部分-を形作(かたちつく)ってゆく。


ヴィダはそうやって膨らませたリンに、坩堝(るつぼ)から再度ガラスを巻き付け、また吹き竿を吹きリンの形を整えた。次にヴィダは膨らませたリンを足元の水で濡らされた鋳物の形に差入れ、再度膨らませはじめた。


「鋳物の形に入れることで同じ大きさのグラスに仕上げます。この工房には今、約16種類程の形がございます」

「16種類も?!」

驚いて声を上げたアデライーデにヴィドロは、コクリと頷いて答えた。


「はい、まだ少ないほうかと…。王より試せるだけ試せとご指示がございましたので、それぞれの職人が工夫して型を試しております」


「グラスの厚さってどうやって揃えるのですか?」

アデライーデは興味津々に、形に入れたリンを回しながら膨らませるヴィダの手元と、型の中から溢れるように膨らむリンを交互に見ながらヴィドロに尋ねる。


「吹き竿に巻き取るガラスの量と、形に入れたあと吹き込む息の量でございます」

「ガラスの量と息…」

ほぅと感心していると、リンが型から外された。


「ガラスの量って毎回同じ量をとれるものなのですか?」

お菓子を作る時、材料の量を測る時にも(はかり)を使わないといけない。目分量だと出来上がりに差が出るからだが、あのドロドロに溶けたガラスの量をどうやって測っているのだろう。


「はい、坩堝(るつぼ)の中から同じ量を巻き取れるようになれなければ、ガラス職人とは言えません。そこは職人としての経験とカンでございます」

「すごいわ…」


少し誇らしげに語るヴィドロを称賛の目で見ている間にヴィダは、他の職人からリンに足となるガラスをつけられていた。


飴のように柔らかいガラスを大きなピンセットのような道具で摘むと、まるで芽が伸びるようにグラスの足ができてゆく。


その足にまた溶けたガラスをつけてもらい、ヴィダは何種類かの道具を使って台を成形していった。


ヴィダが、グラスの形になったのを確認すると別の職人に、それを吹き竿ごと手渡した。


「このあとグラスを手で持てる温度まで冷ますのですが、急激に冷ますと割れますので吹き竿を取った後、徐冷炉(じょれいろ)と言う専用の炉で半日ほどかけてゆっくりと冷ましてから口を作っていきます」


ヴィドロが説明しながら歩を進め、少し離れた場所に移動した。


「あのように冷ましたグラスの口の部分に傷をつけ温めると口が出来ます」

ヴィドロが指さした先には、足で蹴って回す小さな旋盤に固定されたグラスがあった。ヴィダはその前に座り、慎重に歯の小さいナイフのような工具を軽くあてた。


そして、窯の横穴の隣に据え付けられている手で回す旋盤に吊るすようにグラスを固定すると、旋盤を勢いよく回し始める。

しばらく回すと傷がつけられた所が熱で膨張して余分な部分が、下の木箱にぽとりと落ちた。


「この後、数度グラスの口に細かさの違う旋盤ヤスリをかけ形を整えます。次に窯の火を口にあて滑らかにし徐冷炉(じょれいろ)で半日冷ましてから磨き工程を経て、グラスが出来上がります」


工房のあちこちに旋盤や作業机があり、職人達はそれぞれの作業に集中している。


「たくさんの工程があるのね。それぞれ素晴らしい職人技だわ。これを1人の職人さんがされるのですか?」


「いえ、全工程をできるのは私と息子のヴィダだけでございます。今は多数のグラスを作るため各工程を分業しそれぞれ専門の職人の手を経て1つのグラスを作り上げます」

長く釜の前にいるからだろう赤ら顔のヴィドロの目には、職人としての自信と誇りが宿っていた。


今回はグラスの製作についてをメインに書いています。

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― 新着の感想 ―
[一言] 陽子さんがガラス吹き体験をしたことがなかったことに驚いています。 カルチャースクールで1度ぐらい体験してそうだったので(^_^;)
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