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【2巻も準備中!】転生皇女はセカンドライフを画策する  作者:


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284 休暇の始まりと挨拶


「アデライーデ様もだが、テレサ様も才豊かと思っていたが、まさかここまでだとはな」

タクシスは2杯目の蜂蜜酒を手酌でグラスに注ぎ、口に運んでいた。



「元々軍閥家門の出だとは言え、テレサにあれ程の軍事的な考えがあるとは知らなかったよ」

「先の大戦で国防について色々話していたのではないのか?」


「確かに話してはいたが、テレサはいつも控えめで聞けば応えるという程度だったんだ。それに、どのようにすれば予算を使わずに最大限に兵を効率的に使えるかの話が多かったからな」


「まぁ、使える金はかなり限られていたからな。この話は1から自由に自分の理想の街を造るという話から始まったんだ。今まで予算がなくてできなかった事を詰め込んだのだろうな」

「あぁ…」


苦笑いをしながらアルヘルムは、傍らの立体模型ジオラマの小指の先程の馬車の模型を指でつまみ、細かい細工を目をじっくりと見はじめた。



「ところで、休みの間はどうするんだ?」

「屋敷に引きこもる。邪魔はするなよ?何があっても呼び出すな。お前でなんとかしろ。半年ぶりのまとまった休みなんだからな」

「私もまとまった休みなんてなかったが?」


「ほぅ…。何かにつけて離宮に行って楽しんでなかったとは言わさんぞ。その間の仕事は全てこっちに回ってきてたんだからな」

「あの晩餐の後は、数えるほどしか…」

「俺は1日も休みがなかった!」


キッと睨むタクシスに、分が悪いと踏んだアルヘルムは手にとった馬車を置き、3階建ての集合住宅の模型をとっておもむろに話を変えはじめた。


「しかし、よくできているな。まるで小人が住んでいるようだな」

「メラニアお抱えの工芸家達が作ったんだから、当たり前だ。それに正確な縮尺で作っているからな。まさに立体地図だ。それに建物1つ街路樹1つをとっても、美術品と言ってもいいくらい手がかかってる」

「うむ。大臣達もしばらく見入っていたからな」


タクシスは、グラスに残った蜂蜜酒を一気に飲み干すと「では、休暇前のご挨拶も済んだ。今から休暇だ。いいな?今から休暇明けまで絶対呼び出すんじゃないぞ。絶対だぞ!」と念を押して執務室を出ていった。


陽子さんがここいれば、「それって、押すなよ押すなよ?ってやつ?バルクにもそんな誘い文句があるのかしら」と呟かれそうである。



--何かあれば真っ先に飛んでくるくせに。

愛妻のもとに足取りも軽く向かう宰相を、アルヘルムは1人笑いながら見送った。


アルヘルムはタクシスが残した蜂蜜酒の瓶をとり、自分のグラスに酒を注ぐとソファに座り暖炉の薪がぜるのをしばらく見つめていた。


「たまには1人で飲むのも悪くないな」

そう呟いて傍らの書類を手にとった。



あの秋の晩餐の後、深夜になるまで街道と新しい街の話で5人は大層盛り上がったのだ。最初は新しい街道と街の話に驚いたアルヘルムとタクシスだったが、確かに今のメーアブルグを建て替えるより現在のまま港町として機能してもらい、近隣に新たな街を造る方が理にかなっている。テレサが選定した街の場所も問題となる点はない。


それに新たに街を造るのであれば、これから街が拡大することも視野に入れながらの計画も立てやすい。街道の選定も各派閥に配慮してあり、このまま会議にかけても反対意見は出てこないだろうと思われるほどであった。



晩餐の翌日、メラニアはすぐにお抱えの指物師を呼び出し、新しい街の立体模型ジオラマを作るよう依頼を出した。


「お願いするわね。きっと、素晴らしいものができると期待しているわ」


昨晩書き散らしたスケッチブックを広げ、1枚1枚に描かれた建物を熱心に細かく説明した後に、女神のような笑顔でにっこりと微笑んだメラニアだったが、これから見たこともない立体地図ジオラマを作れという悪魔のような依頼を聞いた指物師さしものしは顔色を無くし、冷や汗をかきながら「恐れながら…」と口にした。


「なにかしら?」

「メラニア様ご考案の建物を、新しい街をどのように配置するのでしょうか?」

「あぁ、そうだったわね。それはテレサ様にお聞きできるように伝えておくわ。後日一緒に王宮に行きましょうね」

「しょ…承知いたしました」


指物師さしものしは、メラニアから手渡されたスケッチブックを手に、何をどうするべきかブツブツとつぶやきながらタクシス邸を後にした。




後日、メラニアはお抱えの指物師さしものしを連れてテレサを訪ねるとテレサは2人をにこやかに迎え、1人の青年貴族を紹介した。

彼は王宮や離宮の増改築や新築を一手に引き受けているジマーマン伯爵家の次期当主であるティシュラー・ジマーマンだった。


王宮には緊急時に備えた隠し部屋や、緊急時の秘密の脱出通路がある。しかし、その事を知る者は王や王妃、そして跡継ぎに限定される。ジマーマン伯爵家は表向きは建築貴族として知られているが、先祖が造ったバルク王宮の隠し部屋や通路の管理を代々している家なのである。



かなり強めの巻毛の明るい茶色の髪を束ね、小柄で童顔なティシュラーは成人したばかりのように見えるが、すでに子が3人もいる妻帯者である。


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― 新着の感想 ―
[一言] 陽子さん(アデライーデ)がその場にいなくても、話は進んでいくんですね(当たり前ですが) 再び2人に会った時の陽子さん(アデライーデ)の反応が楽しみです(笑) >いいな?今から休暇明けまで絶…
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