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【2巻も準備中!】転生皇女はセカンドライフを画策する  作者:


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246 ペルレ島と男と女


ばたばたと時が過ぎ、バルクに年の瀬が迫ってきた。



ペルレ島の開発は進み冬になる前に娼館が完成した。言わねば貴族の別宅のような瀟洒な館は、連日船員達で賑わっていた。意外にもこの館の内装や調度品選定に大きく関わったのは、マダムの情夫いろであるガーランだった。キティの好みを活かし全体のバランスが取れるようにアドバイスをし、調度品を選んでやっていた。



「やっぱり、アンタって…」

「………」

「いや、なんでもないよ。野暮は言いこっなしだね」

「………」



ガーランはそれに対しては何も言わずに、ホールのカーテンの布見本を指差した。選ばれたカーテンは少し黒みが入った深い赤である。




娼館ができたのと時を合わせて、バルク国から島の上陸には入浴と医師の診断が義務付けられるようになった。


最初は上陸に風呂に入り医師の診断が必要な事や島内では愛用のナイフを預けお仕着せの服に着替えねばならないことに渋っていた船員達も、娼館に行けると聞いて我先にと進んで浴場に向かった。


広く真新しい風呂に入れば、年寄だが三助さんすけ--浴場で客の体を洗ったり湯を沸かす男の使用人--が、丁寧に髪や体を洗ってくれる。まるでどこかの貴族にでもなったような待遇に、慣れないうちはおっかなびっくりだった船員達も、気を良くして風呂を楽しんだ。


どうせ風呂に入り診断を受けなければ船でいつもの飯を食うしかないし、娼館にはいけない。ならばさっと済ませるに限る。


おまけに風呂上がりには小さなコップでレモンチューハイが1杯無料で振る舞われるのだ。風呂上がりの火照った体に炭酸の効いたレモンチューハイはぐっと胃袋に染み込んでいく。清潔な体に合うお仕着せを着て、いい気分で医者の診断の列に並んだ。



風呂はまぁまぁだったなぁ。背中を流してもらうのはちっちぇ頃にお袋に流してもらって以来だ。爺じゃなくて色っぽい女ならもっと良かったが…などと考えていたら診察の順番が回ってきた。


これまた年寄りの医者に手首を握られて、あっかんべーをして舌を出したり頭を見られたりと医者とはおかしなことをさせるものだと思いつつ、体の調子はと聞かれて「俺は今まで病気になった事なんぞねぇよ」と言うと、医者はにこりと笑って「そうかそうか、じゃペルレ島を楽しむんじゃな」と奥の扉を指差した。


奥の扉を開けて案内係に先導されて酒場のホールに行くと、すでに仲間達や他の船の船員達がわいわいと食事と酒を楽しんでいた。


この酒場では、この島でしか食べられない炭酸を使った珍しい酒や揚げ物食事がわんさかと出てくる。


酒場の所々には小さなテーブルがあり、この酒場で出している料理が並んでいた。案内係が言うには皆さん初めて食べる料理ばかりなので、ちょっと摘んで好みの物を頼んでくださいとフォークを渡された。


物珍しさに全ての料理を味見して、茶色のソースのかかったとんかつと言う豚の揚げ物とフライドポテトとレモンソースのかかった魚の揚げ物を頼んだ。


--うめぇ。旨すぎる。何だここの酒場は!


どの料理や酒にもふんだんにレモンやオレンジが使われ、船の味気ない食事とは比べ物にならない。おまけに酒場の一角にあるステージで踊る女達もとびきりのいい女達だ。腹ごしらえをして、気に入った女を指名すると隣に来て酒の相手をしてくれた。


女からは甘い良い匂いがして鼻をくすぐる。しばらく席でいちゃいちゃすると酒場から少し離れた娼館に誘われた。


歩いて数分の娼館は、これまたお貴族様のお屋敷のようでびっくりしたが、見れば酒場に行かず直接ここに来た仲間がホールで両脇に女を抱え、ご満悦に楽しんでいる。



「よう!やっと来たか?」

「お前、酒場に居ねぇと思ったら、ここにいたのか」

「おうよ、ここでも飯は食えると聞いてなぁ。美味い飯に旨い酒。ここは天国だぜ」

「天使もいるしなぁ」


男達は、ペルレ島の滞在を思う存分楽しんでいた。


ペルレ島で男達が喜んで楽しんでいたが、喜んでいたのは男達だけではない。娼館に勤める女達もだ。最初は働く日が減ればそれだけ年季があけるのが遅れると思っていた女達だが、この島では客はみんな風呂に入ってから娼館にやってくる。


汚くないのだ。以前は風呂にも入らず、そのまま娼館にやってきて事に及んでいた船員達は少々…いや…かなり臭っていたがこの島ではそれがない。メーアブルグの娼館時代では、なんとか言いくるめて風呂を使わせようとしていた苦労は過去のものとなっていた。


それに慣れてみれば、月に半分の酒場の裏方の手伝いも良いかと思うようになってきた。裏方手伝いでもちゃんと給金は支払われる。女達は皆、元は農家の娘であったり王都で商家や宿屋に務めていたのである。掃除や洗濯、厨房の下働きなどは慣れた仕事であった。娼館勤めの給金に比べれば多少安いが、以前の給金よりはるかに良いのだ。



船員達はメーアブルグの娼館で使うよりかなり多めの金を使っても、満足してまた来るからと船に帰っていった。

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― 新着の感想 ―
[一言] ペルレ島の花街関係、上手くいっているようでよかったです。
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