表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
166/413

166 久しぶりの再会と女子会


グスタフが離宮を訪れて数日後、帝国から挿し絵画家のティオ・ローゼンこと、アメリー・ノイラートがやってきた。


久しぶりに離宮に来た彼女は、すでに手紙を何度もやり取りしていたマリアとメイド達と打ち解けた様子で再会を喜んでいた。



「お久しゅうございます、アデライーデ様。ご健勝のようで何よりでございます」

「お久しぶりね、アメリー。元気だった?」

「はい、お陰様で」



テラスで久しぶりのマリアとアメリーとで3人の女子会が始まった。


帝国での流行りのお芝居や、最新流行のドレス。そして女優と貴族の恋物語など、いつの時代も女子の話題は華やかで豊富だ。


そして帝国でも炭酸水が、爆発的なブームになっていると言う。バルクと違い庶民向けにも売られていて、ちょっとお高めだが夏の暑さも手伝って皆よく飲むようになったとアメリーが教えてくれた。


貴族向けには、皇后様お気に入りのバルクの炭酸水が定着しているようで、涼し気なブルーのバルクの炭酸水の瓶をテーブルコーディネートに使う事が流行っていると言う。


また、帝国からバルクに来るまでの道も、整備が始まっていて沢山の人夫達が整備していたから、以前よりちょっとだけ馬車の乗り心地が良くなったらしい。



そんな話をしていると、ふわふわのホットケーキにホイップした生クリーム、ベリーソースをたっぷり添えがアメリーの前に出されアメリーが感嘆の声を上げた。



「まぁ…!これはなんですの?」

「ホットケーキよ」

「温かいケーキ?ケーキが温かいのですか?」

「そう。焼き立てのケーキに冷たい生クリームを添えて、ちょっと甘酸っぱいベリーソースをかけていただくと美味しいのよ。食べてみて。いくらでも食べられるわよ」



わくわくした顔でアメリーは、ホットケーキに生クリームとベリーソースを添えて一口食べるとそのふわふわとした口当たりに感動していた。


この世界のケーキは、前世のパウンドケーキのようにずっしりと重く食べごたえのあるものが主流なのだ。

生地には砂糖もバターもたっぷりと使い、ナッツや砂糖漬けのフルーツを刻んで入れシロップを染み込ませ、バタークリームでデコレーションしたり砂糖衣をかけたりする。



シュークリームやクッキー等もあるが、ケーキと言えばそんな感じだった。もちろんそれもとても美味しい。しかも王宮勤めの職人が作るのだから美味しくないはずがないが、続くとちょっと重い。


ふわふわとした軽い口当たりのホットケーキやふわふわのスポンジケーキがアデライーデの希望で作られ、離宮では定番になっている。



バタークリームも前世ではとんと見かけなくなり、帝国で食べたケーキで久しぶりの再会をして懐かしさにバタークリームのケーキをよく食べていたが、ふわふわのスポンジケーキに重厚なバタークリームはちょっと合わなくて、最近生クリームを出してもらっている。



「幸せですわ!こんな美味しいものを口にできるなんて!」

「アメリー様、他にもアデライーデ様は色々作らせているのですよ」

「まぁ…他にも?ぜひ教えてくださいませ」



アメリーは目を輝かせて話を聞きたがり、午後のお茶会は賑やかな声に包まれて終わることがなかった。



お茶会は、終わることなく…。

そのまま、アメリーの歓迎の晩餐に突入した。


バルク自慢の海老や魚介類をふんだんに使った前菜に、メインは小ぶりなトンカツをスライサーでスライスしたキャベツで巣ごもり風に盛り付けたものを、アメリーは幸せだと言いながら完食した。


お茶会から晩餐と、結構な量をぺろりとアメリーは平らげ幸せそうな顔をしていた。その細っこい身体のどこに収まったのだと言うくらい食べて飲んでいた。




「あちこちのお屋敷に招かれて、振る舞われる事が多かったですが、今日ほど幸せな日はありませんでしたわ」

とうっとりと言った。



「ところで、私をお呼びになったのはスケッチブックのご依頼でしょうか?」

「それなのだけど、レシピやそろばんの初級向けの教科書の挿し絵を描いてほしいと思って来てもらったの」



「レシピに挿し絵はわかりますが、そろばんってなんですの?」



そう…そこから説明だ。


レナードにそろばんを持ってきてもらい、今使っている教科書を出してきて説明をした。ふんふんとアデライーデの話を聞きパチパチとそろばんの珠を動かして計算を始めた。



「これ…結構楽しいですわね、アデライーデ様この教科書を使うのはどなたでしょうか」

「子どもたちよ」

「じゃ、可愛い方が良いですわね」

「そうね!可愛い方が楽しいわ」



そう、可愛いは正義なのだ。



「明日、村のリトルスクールへ行ってみる?コーエンが忙しくなければ、工房の見学もお願いしちゃおうかしら。そして、村の食堂でランチをすれば良いわよね」

「良いですわね、湖の散歩も素敵ですわよ」

「そうね、メーアブルグにも行きましょうね。ゆで海老が美味しいお店もあるのよ」

「楽しみですわ!」



もう、そろばんの見学なのか何がなんだかわからなくなっているが、楽しみだと言うのだけはわかる女子会は、レナードの「夜ふかしはお肌に悪いです」の一言で閉会された。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ケーキって、絵本の題材というイメージがあるのですけれど。陽子さんは子どもに読み聞かせてあげた経験はないでしょうか? アデライーデがアメリーに話して聞かせたら、喜んで絵本に仕上げてくれそうに…
[一言] >そして帝国でも炭酸水が、爆発的なブームになっていると言う。バルクと違い庶民向けにも売られていて、ちょっとお高めだが夏の暑さも手伝って皆よく飲むようになったとアメリーが教えてくれた。 炭酸…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ