22 リーフ村到着
簡易結界を後にした私たちは、目的地の「リーフ村」に向かって歩き続けます。
国から最も近い距離にあるはずの町ですが、かなりの距離があるようです。
黙々と歩き続けること半日ほど。
ときどき現れるモンスターは、レオナルドが鬼神のような強さを発揮して瞬殺していきます。
「やっぱり、レオナルドは最高の戦士です!」
「いいえ。これもミリアお嬢様の結界あってこそです」
レオナルドが心の底から、そう思ってくれているのが分かるからこそ。
自然と気合も入ろうというものです。
モンスターに遅れを取ったのは、本当に最初の1回だけでした。
最初はレオナルドの後ろをついて歩くだけで精一杯でしたが、余裕が出てきたので何か出来る事はないかと考えてみます。
「ミリアお嬢様、今度は何をされているんですか?」
「魔力を薄く広げることで、モンスターの気配を察知できないか試していました。
私を中心に結界を張って、引っかかった生物の気配を探っているのですが――上手く出来そうです」
侵入を防ぐ必要がないので強度は皆無で良く、付与する効果も必要ない簡単な術式。
結界の範囲内に、薄く魔力を巡らせるだけ。
今までの結界術と比べると、魔力の消費はほとんどないと言えるものでした。
「少し先の木の裏に、モモント牛が隠れてそうです。
動かない――眠っているのかもしれません」
「こちらから近づかなければ、のんびりしたモンスターですからね」
「美味しかったですね、モモント牛」
「お望みながら狩ってきますよ?」
「いいえ、まだ早いです」
お昼にはまだ早いです。
モンスターを見つけたとは思えない、ずいぶんと吞気な会話を繰り広げられます。
結局は「下手に刺激するのはやめておこう」とレオナルドは迂回することを選択。
歩き始めた先には、
「あれ……?
レオナルド、この先の地面からモンスターの気配を感じます」
「地面から……。地面から――?」
ハッとした表情で飛びずさるレオナルド。
「どうしたんですか?」
「ミリアお嬢様、お手柄です!
あそこの地面を注意深く見てください」
レオナルドが指さした場所を、注意深く観察します。
よくよく見ると、土の色が違う円形の場所があるようです。
「地面の色が、一箇所だけ違いますね?」
「ミリアお嬢様、正解です。
あそこに潜んでいるモンスターはワーム。
突然現れて冒険者を地中に引きずり込む、恐ろしいモンスターですが――」
そう言いながら、レオナルドは落ちていた石を拾い投擲。
レオナルドの手を飛び出した石は、見事に色の変わった地面まで飛んでいき、
「こちらが先に気付けば、あっさりと倒せますよ?」
そうレオナルドは宣言。
それと同時に地中から巨大なミミズのようなモンスターが登場。
獲物を求めて出てきたワームは、目の前に人影がないのに気づくとキョロキョロと辺りを見渡します。
「あ、引っ込んでいきます!」
「させませんよ」
地中に戻ろうとするワームに急接近して手掴み。
そのまま一気に地上に引きずり出し、剣で一刀両断。
息もつかせぬ早業でした。
「聖女の結界術というのは、本当に万能ですね!?
まさか地中にいるワームの気配を探り当ててみせるなんて」
「私も驚きました。
あんなモンスターもいるんですね?」
「地中にいるワームは、奇襲を受けると本当に厄介なんですよ。
遠征のときには、地中に引きずり込まれた仲間もいて――殺されかけた奴もいます。
ミリアお嬢様、本当に助かりました」
「力になれたなら、嬉しいです」
かけられたストレートな感謝の言葉。
その優しい横顔を見るだけで、どうしようもなく喜びがこみ上げてきます。
それからの旅は、モンスターの奇襲を受けることもなく平穏そのものでした。
まずは私が、一定範囲内に入ってきたモンスターの気配を察知。
私が口にした情報を元に、レオナルドがモンスターをあっさりと撃退。
モンスターとの戦いでは、私は見ているだけ。
結局ここでは役立たず。
「私も旅を続けたら、レオナルドみたいにモンスターを戦せるようになりますか?」
そう思ってレオナルドにそんな質問をしましたが、
「ただでさえ探知にはじまり、色々とミリアお嬢様に任せきりなんです。
それ以上活躍されたら、僕の役割が何も無くなってしまいます」
レオナルドは恐縮したような、焦ったような表情でそう答えたのでした。
そんなことはあり得ないのに。
そうして旅は順調に進み。
――ついに夕暮れ時には、目指していた「リーフ村」に到着したのでした。
のどかな村だと、レオナルドからは聞いていました。
しかし目にしたエリーザの村は、村の中を大人・子供が飛び交っていて、非常に物々しい雰囲気が漂っています。
(とても、旅人を受け入れてくれる状態ではなさそうですね?)
私は思わず、レオナルドと顔を見合わせました。
新作の短編書きました!
え、宮廷【結界師】として国を守ってきたのにお払い箱ですか!? ~結界が破られて国が崩壊しそうだから戻って来いと言われても『今さらもう遅い!』エルフの王女様に溺愛されながらのスローライフが最高に楽しい~
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