愛すべき人々 ~深夜の訪問者~
今回は、独身寮にいた頃、コンビニでバイトしていた時のお話です。
某服飾専門学校に通っていた私は、スッチーさんとお付き合いをしておりまして、
何かとお金が入用なので(謎)姫島の駅前にある某コンビニでアルバイトを始めました。
夜型人間でもあるし、夜中の方が暇だろうと、
21時から6時まで、週3~4日ほど働いておりました。
当時は終電が終わるとほとんど客は来なくなるので、
仕事と言えば、0時のレジ売上チェック、
賞味期限の切れた弁当類やパン類の処分、
簡単なモップがけぐらいで、朝の商品入れ替えまでは、
バックヤードで最新の週刊誌を読み漁るといった楽しい日々でした。
午前0時の売上チェックも終り、期限切れ弁当とエ○トピアを持って、
バックヤードで夜食を食ってると、
『ピ~ンポ~ン、ピ~ンポ~ン♪』
(ちぃぃぃっ!客が来よった。)
私:『いらっしゃいませ~。(^^』
まずは酔っ払いのおっさんがご来店。
一応、レジカウンターで見てると、
おっさん、ふらふらと店内を一周したかと思うと、
日用品のコーナーの前で座り込んで、なにやらごそごそしております…。
(…おいおい、吐くんちゃうやろなぁ!)
何気なく見に行くと、おっさん、商品の靴下を袋から取り出し、
おもむろに履き替えてるじゃぁ、あ~りませんか…。
(こらこら、おっさん!何をしとんねん!何を!)
(そっちの履くかい!?)
私:『すいません、お客さん。勝手に商品を開けられると困るんですが…。(^^;』
おっさん:『おぅ?おぅ?おぉぉぉう???』
私:『…いや、お支払いの方を…。(^^;』
おっさん:『…おぅ?』
(…やばい。日本語、わからへんのんちゃうかぁ?…。)
おっさん:『…おぅ?』
おっさんは履きふるした靴下を突き出した。
(そんなもん、いるかい!!!金払えっちゅうとるんや!)
私:『いや、そうじゃなくて、お金を払っていただけますか?』
おっさん:『おぉ!っぷぅー!』
(ぷぅー!やないがな!つまみだすぞ!)
私:『…お客さん、398円になります!』
おっさん:『おぅ?…うぅ~ん、おぅ!?』
おっさんは、くしゃくしゃの5千円札を出してきた。
(おぉ!払いよった!)
私:『ありがとうございます。4602円のおつりになりますので、少々おまち…』
おっさん:『…にいちゃん、ええれ!ちゅりはいらん!おきに!っぷ~!』
(なんや、しゃべれるんかいな…。)
私:『お客さん、困ります!おつりを…』
おっさん:『えぇ、えぇ。しょれ捨てといて。おきに!っぷぅ~。』
おっさんは履き古した靴下と5千円を残し、夜の闇へ消えていった。
(おぉ~!ラッキー!ええ客やがな…。)
気を良くした私は、再びバックヤードに入り弁当を食べはじめた。
エ○トピアの若奥さんが、宅配業者に襲われそうになったその時…
『ピ~ンポ~ン、ピ~ンポ~ン♪』
(ちぃぃぃぃっ!これからえぇとこやのに!)
今度はお水風のおねぇさんとサラリーマン風おっさんのカップルがご来店。
なにやらヒソヒソ、いちゃいちゃしながら、日用品のコーナーへ…。
ねぇちゃん:『ねぇ~ん…。こっちの方がいっぱい入ってるよ~ん♡』
おっさん:『そんなもん、1ダースも買ぉてどないすんねや!』
ねぇちゃん:『もしあまったら、置いといたらえぇやぁ~ん♡』
(…も、もしって…ねぇちゃん、おっさん死んでまうで…)
かぶりものやら、歯ブラシやら、いちゃいちゃと選んでおります所へ、
『ピ~ンポ~ン、ピ~ンポ~ン♪』
今度はあきらかに酔っ払ってる中学生ぐらいの3人組み様ご来店。
ぼくちゃんA:『にいちゃん、つまみあるか!つまみ!』
(…おのれは、誰に向かって物言うとんねん!)
私:『いらっしゃいませ~。そちらの方にございます。(^^』
ぼくちゃんB:『おっさん、えらい楽しそうやのぉ~。』
ぼくちゃんA:『どないしてん!』
おっさん&おねぇさん:『…。』
ぼくちゃんB:『おぉ~!見てみいやぁ!ゴム買ぉとるでぇ!』
おねぇさん:『うるさいわねぇ!子供はあっち行っとき!』
ぼくちゃんC:『おっさん、え~の~。これからお楽しみかい!』
(うっとぉしいなぁ…。客にからむなよ!)
キレそうになりながら、声をかけようとしたその時、
『ピ~ンポ~ン、ピ~ンポ~ン♪』
サトちゃん:『俺のぉぉ車はぁ~♪つぅしぃたぁ~♪クーラーききまくりぃ~♪』
ちゃー坊:『はぁら減り減りほぉ~♪』
独身寮の最強コンビ登場。(愛すべき人々~独身寮~参照)
私:『毎度ぉ~♪いらっしゃぁ~い♪』(…と目配せをする)
サトちゃん:『ちみたち!なぁにを騒いでるのかな?』
ぼくちゃんA:『なんや!おっさん、関係ないやろ!』
ぼくちゃんB:『ひっこんどれや!』
サトちゃん:『にゃにおぅ!いっぺん、トラック押してみるか!?』(~サトチャン編~参照)
ぼくちゃんA:『なんやそれ!どういううこっちゃ!』
サトちゃん:『こっちこい!おっちゃん、怒ったる!』
ちゃー坊:『だいじょぶ、だいじょぶ!あっち行こ!あっち!』
ぼくちゃんB:『痛い、痛い、痛い、痛い!何すんねや!』
ぼくちゃんA:『痛たたたたた!』
ちゃー坊は片手で一人づつ、まるで魚を釣り上げるように、
顎の横の部分に指を突っ込むと、そのまま二人を店の外へ連れ出した。
もう一人は、サトちゃんが肩を抱くようにして、同じく外へ…。
私:『ちゃー坊、サトちゃん!乱暴はあかんよ!乱暴は!』
(う~ん。大丈夫かな。中坊くん…。)
今のうちにとばかり、おねぇさんとサラリーマン風のカップルはレジをすませ、
逃げる様に出ていった。
私:『ありがとうございました~♪(^^』
(あいつら、無茶してへんやろなぁ…。)
なかなか帰って来ないので心配になって店の外を覗いてみると、
中坊君たちはしょんぼりしているが、
ちゃー坊とサトちゃんはやけに盛り上がっている。
私:『おい!もうええから、勘弁したり~な。』
サトちゃん:『ちゃうねん!こいつん家、スナックやっとるらしいんですわ。』
ちゃー坊:『そんで、今日店休みやから飲み放題らしいねんて!な~!』
サトちゃん:『こいつらそこで飲んでて腹へったから、弁当買いに来たらしいんですわ。』
ちゃ―坊:『兄貴ぃ、弁当おくれ!』
私:「よっしゃ!ほんならこれやるから、仲良ぉ飲むんやで!」
私は期限切れの弁当を7~8個渡してやった。
ちゃ―坊:『そんなら兄貴!なまから、んじ、ちゅーん!』
サトちゃん:『お~きにぃ~。』
そういい残すと夜の街へ消えていった…。
それから半年ほどその店で働いたが、中坊君達が現れることはなかった。