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白-2.新たな生活

転生して十年の月日が流れ、俺は十歳になった。


「フェル、ちょっとこっち来て手伝って。」

「分かったよ母さん。」


 フェル。フェルナンド=オルグウェイと言うのが俺の名前で、愛称としてフェルと呼ばれている。安直だけど愛称ってそう言うものだよね。

 今は家の庭にある畑で野菜の収穫作業をしている。収穫しているのは赤く熟したトマト。この世界での野菜、いや野菜に限らず殆どの食材は前世の物と同じだ。異世界ならではの物もあるけど親しみのある方が食べていて落ち着く。


「取り敢えずこんな所かしら。さてと、フェル、片付けたらいつもの稽古をするわよ。」


 俺の母親、サシャ=オルグウェイは昔、この国の軍で魔法兵として働いていた。同じく軍の剣士をしていた父さんと結ばれて軍を離れるまでは軍の中でもかなりの魔法の使い手だったとかで、今では俺に英才教育をしてくれている。

 俺が五歳になった時から毎日やっている訳だけど、母さんも俺の飲み込みが早いって教えるのも楽しそうにしている。それもその筈、俺が女神様から授けられたスキルの一つに『魔法適正:神』があるからな。

 俺はこのスキルのお陰で全属性の魔法を初級から上級まで使うことができる。火も水も風も思うがまま。これなら戦争を止めるってことも楽勝かもな。


「じゃあ次は結界魔法。いつも通り展開してみて。」


 俺は両手を前に出し、その先に透明な壁を作り出した。母さんはその壁に向かって魔法で出だした火の玉をぶつける。その衝撃に大きな音が響くが、爆発による風や熱は俺には届かない。続けて何発も火の玉を受け止めていくが、最後には傷一つ無い壁がそこに残った。それを見て母さんは嬉しそうに頷く。

 結界魔法は血統魔法と呼ばれる特殊な魔法に分類される。自分の親など血の繋がった者からしか引き継がれないその血統魔法は強力であり、一人使える者が居るとその兵力は百人分を超えると言われている程だ。その結界魔法も女神様が授けてくれた特典の一つなのかもしれない。

 日も少し落ちてきた頃、稽古は終わり、母さんは残った家事に取り掛かる。俺はと言うと、家の近くにある森へと向かっていた。

 その森は少し奥へ入ったところに開けた場所があり、目印のように五メートル程の木が一本生えている。その木の上には木の枝を上手く利用した小屋を建て、秘密基地として使っている。前世は比較的街中に生まれたせいかこういった遊びは新鮮で楽しい。

 とは言ってもここは俺一人の秘密基地では無くて…。


「フェル、遅かったじゃない。」


 近所に住む俺と同じ年の女の子、ローナだ。リンゴのように赤い髪を両サイドに三つ編みにしているのが特徴の可愛い女の子で、貴重な幼馴染みである。前世は恋人とは無縁だったが故にこの巡り合わせは嬉しい誤算だ。大切にしていきたい。


「いつも通り母さんから魔法の稽古を受けててさこの時間さ。」

「ふうん、いつも大変ね。それで、今日は何する!?」


 わくわくした様子のローナが首を少し傾ける。


「そうだなあ、今日は…。」


 それから日が暮れるまで俺達は森の中を駆け回り遊んだ。家に帰れば母さんが用意した温かい夕食があり、優しい月の明かりの差し込む部屋で眠る。

 何気ない一日。だけど充実した一日だ。前世が楽しくなかった訳では無い。むしろもっと楽しみたかったと思うこともある。だけどそれを置いても今の暮らしは楽しいのだ。

 翌日。今日は朝からお使いで町の市場へと来ていた。俺の住むルコの町は千人規模の町で、市場や食事処、宿屋に武器屋等とそれなりにお店もある。俺の家はそのお店の並ぶ商業地区とは大凡反対にある生活地区なのだが、森も近いこともあり別の町と村のように感じてしまう。

 さてと今日のお使いは鶏肉と豚肉を一塊ずつ。今日の夕飯にはどっちが出てくるだろうか。そんなことを思いながら町中を歩いていた。

 そんな時、カンカンカンと煩く金属音が鳴り響いた。

 これは警報音。一体何があったんだ?町の中央にそびえる物見やぐらに目をやる。小さくしか見えないそこに立つ兵士はある方向を指差している様に見える。あれは生活地区の方だ!

 警報音に反応し現場に急行する兵士達の後を俺は追いかけていた。胸騒ぎがする。母さん、ローナ、無事で居てくれ。

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