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こんな世界は間違っている!~勇者に生まれなかった僕がハーレムパーティーを作るまで~  作者: 小十郎
1章 転生したのに勇者に生まれなかったこんな世界は間違っている!
1/1

1.転生したらショタエルフだった件

見た目はショタエルフ、頭脳はおっさん。

その名は転生者「メルビン」!


というわけで、皆さんこんにちはメルビンです。

ただ今絶賛(はりつけ)中です。

なんで磔にされているかって?僕もわからないから聞いてみたんだ。

磔にされた僕を取り囲む村の男衆(いわ)く、「明日この村を旅立つ前に皆さんからたっぷりお礼がしたい」とのことらしい。

やれやれ、またぼこぼこにされるのか。


「いいさ!やればいい!ぼこぼこにされるのには慣れている!」


この世界ではどんな傷も魔法で解決。痛いのを我慢すればいいだけなのだ。

え?そんな生意気言ってられるのは今のうちだって?ははは、僕は脅しには屈しませんよ。


しかし、一向に手を出そうとしないが何か待っているのか?

あ、やばい。

扉からご高齢のおばさまがたちが近づいてきた。

嫌な予感がする。


「待て!や、やめろー!僕の体に触るんじゃない!」

「服を脱がさないで!乳首を触るな!あっ、すごいテクニック…ッ!って、なにをする!」

「謝るから助けてください!お願いします!僕がすべて悪かったです!反省します!」

「え?みんなこんな状態の僕を置いてどこいくんですか?楽しめって?」

「このおばさんたちの目を見てください!!正気じゃないですよ!!」

「ちょっと、そこは、ズボンは!ズボンだけは堪忍してつかーさい!」

「そこは、そこはデリケートなんですううううぅぅぅ。」

「あ、あ゛あああぁぁぁぁぁ―――!」


メルビンの叫び声は一晩中続くのであった。


後に世界を救う男メルビンの冒険はこうして始まるのだった!

はたしてメルビンは、明日無事に旅立つことができるのだろうか。

頑張れメルビン!明日の朝は9時出発だ!


=============================================


少し時は(さかのぼ)り、メルビンが(はりつけ)にされる12時間前のことである。

メルビンは母の著作物である新作「ゴブリンでもわかる魔法学~応用編~」を読んでいた。

母の蔵書はすべて読んでいるから基礎魔法指南書なんて今更読む必要はないんだけどね。

ぺらぺらと目を通していると居間にいる母から声がかかった。


「メルビン、ちょっとこっちに来きなさい。少し話があります」


僕は母の呼び出しに不穏な空気を感じ取った。

わざわざ『少し話がある』なんて言葉を選ぶってことはやっかいな話であることは間違いない


もしかして隠れて母さんの執筆した本を僕名義で販売していたのがばれたのだろうか?

いや、もしかしたら母さんの美人なママ友にアプローチしたのがばれたのかもしれない


俊足の加護(ファスト)


杖を取り出し靴に速度上昇の付与魔法を唱え、いつでも逃げられるようにする。

備えあれば憂いなしなのである。


「母さん今行きます!話とはなんでしょうか」


母と言っても、エルフ族である母は若々しくとても母親には見えない。

エルフ族は寿命が長く、年をとっても見た目が美しいままなのだ。


「メルビン、今年で何歳になりましたか?」


「見た目の年齢であれば10歳ほどです」


「実年齢の話です」


「さて、何歳だったか…」


僕は母の質問にとぼけるように返した。

メルビンの身長はおよそエルフ族の成人男性よりも40㎝程低く、130㎝程しかないのである。

身長の低いドワーフ族である父の血がメルビンの身長を少年のままにさせているのだろう


「あら?とぼけるのかしら?いいのですよ、|私の執筆した本を勝手に販売している《・・・・・・・・・・・・・・・・・》ことだとか、|私の友人フローラに手を出そうとした《・・・・・・・・・・・・・・・・・》ことについて話をしても」


さすが母である、悪行を全て把握されていた。

これはまずい、三十六計逃げるに如かず!

座席を立とうとしたが、母が杖を取り出して床を叩く方が早かった。


凍りの息吹(フリージング)


短く呪文を唱えると立ち上がろうとしていたメルビンの足が床に凍りつく。

さすが元とはいえ最前線で活躍していた魔法使いである

しかも足首まで凍ってやがる。

靴を脱いで逃げることもできない、将棋でいうところの『詰み』である。


「座りなさい」


「はい…」


「成人してから何年たちましたか?」


「…」


「雷鳴のいかず…」


「じゅ、17歳です!成人してから2年たちました!正直に答えるので杖をおろしてください!!」


沈黙してやり過ごそうとしたが、杖の先が帯電しているのを見て僕は慌てて返事をする。

母に冗談は通じないのだ、いつも本気なのである。


「よろしい。同世代の村のみんなは親元を離れ立派な大人になれるよう王都に独り立ちしているというのに、あなたは2年間なにをしているのですか?私の息子だから大丈夫だろうと様子を見ていましたが、あなたがこの2年で何をしたか覚えていますか?」


「…」


「この街の観光資源になるといって『温泉』なるものを作ったのはいいですが、女性の裸を覗く部屋を隠れて作ってたのがばれて吊るし上げられてましたね?」


「はい…」


「御禁制の材料を使った精力増強ポーションを作って売っていたのがばれて一時村から指名手配されていましたね?」


「はい…」


「複数の女性に手を出したのがばれてぼこぼこにされていましたね?」


「…」


「なんで私の息子はこんなにスケベに育ってしまったのでしょうか…」


「…」


母さん、前世の記憶が悪いんです

異世界物の小説を好んで読んでいた僕からするとここは楽園(パラダイス)なんです


あのモフモフの獣人尻尾がいけないのです!

エルフが美人すぎるのがいけないのです!

ドワーフの大きい乳が揺れるのがいけないのです!


まあ、そんなことを話せるわけもなく僕は俯くのみなのである


「この前フローラは自慢げに王都へ働きに行ってる息子の話を聞かされました。ええ、3時間もです。自分の息子とよそ様の息子を比べてはダメだと、母は必死にこらえていました。」


リンゴを握りつぶせそうな握り拳を作りながら力説する母。


「私の育て方が悪かったのか、環境が悪かったのかパパと一緒にたくさん話をしました。そして息子がこのままではダメ男(ニート)になってしまうと結論になり、母はパパと決めました!」


「この国のために勇者と冒険にでなさいメルビン!」


「それだけは、いやだあああぁぁぁぁ―――!」


「もう決定事項です。一緒に冒険する勇者のご家族にも話をすべて通してありますから、逃げられませんよ!」


「なんでですか母さん!ただの冒険者でいいじゃないですか!なんでわざわざ勇者のパーティーに入らなければいけないのですか!」


「なにをそんなに嫌がっているのですか?」


「勇者って言ったらあれでしょ?『ふう、やれやれ』とか言ってチート能力で無双して街を救ってお姫様に惚れられたり。街に着いたらなぜかちょうど事件に巻き込まれた美少女がいて助けたり。奴隷を買ったらなぜか秘めた力を持った獣人族の美少女だったりして、いつのまにかハーレムパーティーになるような奴だろ?なんでそんな勇者による勇者のためのハーレムパーティーに何が楽しくて入らなきゃいけないのですか!」


「勇者を『奴』呼ばわりするのを止めなさい」


「はい…」


「メルビン聞きなさい。昔、私とパパは有名な冒険家だったことを知っていますね?私たちは勇者のいないパーティーでした。勇者の力がなくても魔物は倒せます。しかし、ダンジョンを進むにつれて魔物は強力になり、勇者の強大な力なくしてはいつか大きな壁にぶつかってしまうのです。私たちのパーティーはその壁を越えられず、やがて解散してしまいました。あんな思いを息子にさせたくないのです。」


母親から初めて聞く冒険者を止めた経緯を聞いて、僕の心は少しだけ揺れ動いた。


「そしてメルビン、あなたの固有スキル『付与術師(エンチャンター)』はとても強力なものです。エルフ族とドワーフ族のハーフであるあなたはこれから長い人生になるでしょう。固有スキルを秘密にするのにも限度があります。いつか能力が漏れて犯罪に巻き込まれるかもしれません。そんな時自分を守れるのは自分しかいないのです」


メルビンの持つ付与魔法は、歴代勇者のパーティーで大いに活躍した前例の少ないスキルだった。

その能力は秘匿されており、パーティーを強化できるという情報しか出回っていないのだ。


「強くなりなさいメルビン!自分と大事な人を守れるだけの力を持ちなさい!」


母の言葉はニートの(ハート)に深く刺さった。

しかし、僕は頷くことができなかった。

勇者になれないと知って2年引きこもったほどである。

勇者ではない僕が勇者のハーレムパーティーに参加するのはどうしても嫌だったのだ。

せっかく転生したのだから勇者になれなくても脇役ではなくて主人公になりたいのだ。


僕が勇者のパーティーに入ることを渋っていると母は話し出した。


「そういえばあなたが同行する勇者の固有魔法(ユニークスキル)について伝えるのを忘れていました。力を使うと女性になるそうです」


「詳しく話を聞こうじゃないか…!」


僕はこの日、旅立ちを決意するのであった


そして時は磔にされた時間まで戻る。




























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