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 馬で走ればアルマの家まで数分。

 (ほお)を真っ赤にしてプリプリ怒ったクロエ。

 家に着くなりさっさと馬から飛び降りると中に行ってしまい、余計なひと言で痛い目にあったマリウス。

(軍人の俺にここまでの痛手喰らわせるあいつは大物だぞ)

 未だ痛む鳩尾(みぞおち)を押さえながら家の傍らの(うまや)にブロンテスをつなぎ、玄関へ向かう。

重い一枚板の玄関の扉の呼び鈴を鳴らす前に中から扉がギイ、と開いた。


「よく来たの、灰色頭(はいいろあたま)


 灰色頭、とは、アルマがマリウスにつけた見た目そのままの仇名(あだな)

 モスリンの生地にエプロンをまとったアルマの姿。昔の金髪は真っ白に変わり、その髪を一つに結いあげている。いつも変わらないそのスタイル。

 クロエよりもさらに小柄なまるで十歳の子供の様な背丈。腰は全く曲がっておらず、丸顔で少しふくよかなアルマは丸い老眼鏡の下から鋭い眼光を放っている。


「婆さんも元気そうだな」


「お互いになと言いたいが、クロエに変なこと言うんじゃないよ、このバカ者が。

 帰ってくるなりオカンムリじゃあ、こっちもびっくりだ」


 この口調をきくと、ああ、この婆さんらしいな、とマリウスは毎回実感する。

 帝都にも伝説を残している薬師。


「そりゃあ、婆さん、俺は正直に言ったまでさ。

 あいつも今度十七だろう。都の姫さんたちじゃ、結婚していてもおかしくない。

 花の盛りになったな、と言いたかったのさ」


「まったく、はすっぱなお役人だよ。

 で、なんだい、クロエが言っていたけど、あたしに帝都に来てほしいって?」


 琥珀色の丸い目をきらっと輝かせる。


「さっすが婆さんだな。そう、皇太子殿下と帝都の最高学府、アマルーテ学院の院長からご招待だ。

 一応表向きでは帝都で再び薬草学を活性化する知恵を貸してほしいっていうのが婆さんを呼ぶ名目だ。

 爺さん、じゃないや、学院長なんかえらい乗り気で」


「あたしを呼ぶのに乗り気?

 あいつの頭もボケだしたんじゃないか?

 学院長交代も間近だな。

 立ち話も何かね、中にお入り。

 クロエは今日、もうお前さんの顔は見たくないそうだから長居は困るよ」


 取り付く島もないきつい口調だが、それが本心じゃないことは今までの付き合いで分かっている。

 扉の中に入るとしっかりした木で出来た大きなカウンターテーブルと椅子。

 その奥の棚には多くの薬瓶に大きな鏡。

 この部屋の二階は乾燥した薬草や、調合に使う道具達などがぎっしり保管してある。

 薬を取りに来る人たちの待合室兼相談場所のこの建物と続きで建っているのが本来の住居。石造りの見事な邸。

 扉を開けると応接になっていて使い込まれた東国渡りの黒檀のテーブルと椅子、そして陶器が並べてある。


「そこにお座り」


 更に奥の扉を開けて姿を消したアルマがお茶を持って戻ってくる。


「クロエがジャスミンを用意しておいてくれていたよ」


 お茶から芳香高い柔らかい香りが漂う。


「あれは本当にお茶をいれるのが上手い。

 香草の香りのタイミングをすべて知っているかのように淹れる」


 お茶の香りを味わいながら、クロエの才能を自慢げに話すアルマの顔は孫を可愛がる祖母のようだ。


「婆さん直伝(じきでん)か?」


 白磁(はくじ)のカップを受け取り、香りを楽しみながら一口飲む。

 ジャスミンの香りが口の中に広がり、その後ほんのりと爽やかさが残る。


「まさか。あたしは茶を入れるのは全くダメ、クロエの母親も下手だった。

 あの子のどっかに生きているのかもしれない父親に似たのかもしれないね」


「なるほど。

 あの短剣の主だな」


「あんた、何かわかったのかい?

 あの短剣の紋章の主を調べたのか?

 あたしとしては、身重の女を置いて行った男のことなど知りたくないねえ。

 だが、かといってこちらが何も知らないに相手から急に来られても困るからねえ」


 三年前、クロエとマリウスが出会った数日後。

 偶然彼はクロエが身につけている紋章入りの短刀を見て、クロエから生い立ちを聞いてアルマの血縁ではないことを知った。

 もともと黒髪は東方の象徴だから珍しいな、と思ってはいたが、帝都には東方から出てきた黒髪の人間はいる上に、アルマは若い日を帝都で過ごしている。

 それまでアルマの孫だと思っていたマリウスはクロエの生い立ちを知った。

クロエの父親は、彼女が生まれる前に母の(もと)を去っている。

 今、クロエが持つ短刀は、人を殺めるために武器ではない。

確かに作業できるように刃は研磨されているが、その品はおそらく家の血統を伝えるために作られたものだと武器を扱う彼には一目でわかった。

 鞘、柄に施された金銀宝石の細工と、両方に刻まれた略された紋章は明らかにただの金持ちの品ではない。

 クロエの生い立ちや短刀のことをアルマに聞いたマリウスは個人的に家紋を調べると伝えたのだ。


「いや、すんません。そこまではまだ。

 だって、婆さん、この大陸の王族や貴族の紋章って言ったら数百、個人の紋章数えりゃ下手すりゃ数千ってあるんだぜ。

 そう簡単には無理だろ」


 どこの国でも紋章には共通の定めがあり、この大陸の王家はまず王冠の文様が入る。

 三大国の王族は王冠(おうかん)(がら)とともにウィンバーには天馬(てんま)、カレンデュラには竜、エリスフレールは鳳凰(ほうおう)といった聖獣の文様が入る。

 その紋章を使える者は王族の直系のみ。

 そこに兄弟や親子で区別する為に個人で好き勝手に図柄を変えるのは自由とされる。

 貴族の紋章はおのれの国の聖獣と、例えば騎士なら聖獣と剣、文官なら聖獣と本などといった模様となる。

 だが、王冠は直系の王族以外絶対使用してはいけないなど、事細かな規則がある。


「で、そんな話じゃないだろう。

 なんでこんなド田舎に隠居した薬師に帝都まで来いと?」


 話が横道にそれすぎた、と思ったアルマは既に大半のことは知っている帝都(ていと)召喚(しょうかん)依頼(いらい)の内容を目の前の男から聞くことにした。


「先月、皇帝が病気で倒れたと発表されたのを知ってるかい?」


「ああ。友人の手紙に書いてあったな」


 アルマは二十年ほど前まで帝都で生活していた。今でもその時の友人たちと文の交流がある。

 しかもその友人にその事件のヒントの返事を書いたばかりだ。


「実はそれ、ここだけの話だが毒殺未遂事件だったんだ」


 声を潜めて語ったマリウスの言葉に目線だけ動かし表情を崩さないアルマ。

(食えない婆さんだな。毒殺未遂で顔色一つ変えないか)

 マリウスはアルマの反応を観察しながら話を続けた。


「陛下は何とか一命を留め意識はあるが、なかなか回復しない。

 王宮の奥にある奥宮ではなく、今は帝都病院で入院中。そこでもあらゆることを試したが、一進一退だ。

 毒の正体はある程度分かったんだが、詳細が特定できないらしい。

 実は他の薬草を組み合わせた、世には知られていない配合の毒薬とか、品種が貴重とか、専門家がいなくて色々意見が分かれているんだ。

 残念ながら、今回の件が起きるまで薬草を扱える薬師がたて続けて死んでいたんだ。

 信じられない話だが、この暗殺未遂事件が起こるまで警察庁の誰もが一年以内に何人も死んでいることに気が付いていなかった。

 今は、薬師の件も警察は一から洗い直しをしているんだが、今、毒薬の解明には薬師が必要だ。

 帝都の流行りの科学の医者では今限界だという結論に達している。

 そこで思い出したのが婆さん、あんたの顔。

 で、ここの領主の公爵と一緒に皇太子と相談したわけだ」


 マリウスの話を聞きながら表情どころか視線すら動かさないアルマだったが、その後の言葉で目の色が変わった。


「ほら、それに去年婆さんもクロエをそろそろ帝都で勉強させてやりたい、って言ってただろう? 

 だから、俺は、皇太子に婆さんは小さい娘と一緒に住んでいるから二人一緒に呼んだらあの婆さんも来るだろうからどうだって言ってみたんだ。

 我ながらいい思い付きだと思ったね。

 ちょうどクロエに帝都を見物させてやって、あの子が帝都で勉強できるかどうか体験できるいい機会だろ?」


「皇太子殿下はどう答えたんだい?」


「連れて来いってさ。士官学校で一緒だったがもともとケチな性格じゃねえしな。

 ただ、婆さんを呼ぶって話をどっかで聞きつけたあのアマルーテ学院の今の学院長がまあ、一日も早く連れて来いって当事者で事情も知らない癖に。

 だったら、医学博士の免状を持ってるお前が解決しろって言うんだ」


「灰色頭の言うとおりだな。

 まったく、手も足も出なくなってから助けを求めるとは情けない」


 自分が帝都にいたころは、これからは科学の時代、科学が一番とばかりに世の今までの薬草学や療法をすべて否定していったくせに。

 アルマは遠い昔の記憶を思い出し舌打ちした。


「あの頃から学院は自然薬草の薬草学は必要ないって傾向だったしねぇ。

 今更、情けない。

 薬草なんぞいざというとき役に立たない、これからは科学の時代とかぬかしたくせに。

 まあ、陛下に罪はないと思うが、あたしの知識でも駄目かもしれないよ」


「ああ、それはもちろん。状況が悪くならない限りおとがめなしさ」


「悪くなるか。犯人は捕まってないのかい?」


「一番疑わしいのは王弟殿下だったが、証拠はなかった。

 毒を入れたのは女官の一人で、内密に事は処理された」


 王弟。今の皇帝陛下とかなり年の離れた母親違いの美少年だったと記憶している。おそらく今三十代後半かそれ位だが、結婚したという話を聞いていない。


「あれがねえ。どっちかといえば、皇帝なんぞなりたくないと言っていた人間かと思ったが。

 それに独身だろう?」


 二十年ほど前までは帝都で暮らしていたのだからある程度の記憶がある。アルマは、何度か薬師の仕事で王宮に出入りしたこともあるのだ。


「ああ、相変わらずあの方は独身貴族で政治とは無関係のことに専念していらっしゃる方だ。

 でも、捕まった女官が王弟殿下の口利(くちき)きで入った女官であることは確かだから疑われても仕方がない」


 マリウスの情報網(じょうほうもう)に舌を巻く。一般の役人ではそんなことまで知らないだろうに、と思ったが、アルマは顔には出さず、目の前の男を観察する。

 ただの役人なのか一回聞く必要があるな。まあ、この男なら黙っていなくてはならないこと以外は喋るだろう。だが、帝都で灰色の髪の一族などおっただろうか。


「どうした、婆さん。俺の顔に見惚れたのかい?」


 どうやらじっくり見つめすぎたらしい。


「いや、それはないな。

 それよりも仕方がないから、行ってやろうかと思ってな。

 それにクロエにも都を見せるいい機会だと思っているのは本心だ。

で、クロエも連れていって大丈夫か?

 あたしは別にかまわないが皇帝暗殺未遂事件に関わるとなれば、クロエも妙なことに巻き込まれないかい?

 でもまあ、将来あの子も薬師になるんだったらそういう「ごたごた」も知っておかなくちゃいけないからねえ」


「ああ、確かにな。

 一応「将来有望な帝都に見学に来たアルマ婆さんの身内の娘」という役を与えるそうだ。

 それに、もちろん婆さんもクロエも護衛を付ける。

 暗殺未遂とは別口の「薬師の連続死」ってことも忘れちゃいけないからな。

 婆さんを狙う命知らずな奴はいないと思うが、婆さんを知らない犯人なら薬師ってだけで狙われる可能性があるかもしれない。

 記録によれば帝都でざっと昨年でアマルーテ学院卒業の免状を持っている薬師の十四人他界していることが数日前に判明した。

 彼らの共通事項は、昔は最高峰の薬師として人気が高かったアマルーテ学院卒業ってことと、前日ライ麦パンを食べているってことだな」


 さらっと憎まれ口を叩かれたが、その後の情報で突込むどころではなくなった。


「十四人? 自然死にしては多すぎる。

 ってことは帝都に今アマルーテ学院の薬師免許を持つ薬師は誰も居ないのか?」


 数年に一回学院卒業の医師名簿や薬師名簿、弁護士名簿などそれぞれ免状のいる職業に就いた人間の名簿が学院から発刊され届けられている。その名簿によれば帝都の開業している専門の薬師はアルマの記憶では十四人。

 薬師はこの十五年の間にほとんど「死んだ学問」となってしまい、教養として学ぶ課はあっても、免状を取って薬師になる人間は皆無だった。


「そういうこった。ここ十五年ほど廃れた学問だったしな。

 今帝国内にいるのはアマルーテ学院薬師名簿で、アウシュリッツ公爵領、ミラルール各公爵領に婆さんと他四人、セレン伯爵・ベルク子爵領に三人って話だ。

 明らかに絶滅(ぜつめつ)危惧(きぐ)職種(しょくしゅ)だと判明したから、これから例え婆さんが帝都に行かなくても、数日以内に帝都から派遣された何人かが事件が解明するまで護衛につくぞ」

 そうなったら、きっとこのマイペースな個人主義の婆さんは鬱陶(うっとう)しがるだろうな、とマリウスは内心苦笑いする。


「ああ? そんなことになってるのかい。

 面倒くさい。

 じゃあ、いくよ。

 クロエをアグレイアか帝都へ出そうかと考えていたところだから、お前の提案はちょうどいい。

 それにここを出れば、あれの父親がわかるかもしれん。

 もしその父親が見つかってまともな奴なら、文句の百や二百でも言わせてもらわないとな」


「一つや二つじゃないのかよ」


「当たり前だろ?

 まともじゃない奴なら絶対会わせないようにしないとならん」 


 アルマ自身気になっていたクロエの父親の問題。

 クロエの母イレーヌが会うためだけに国を離れ遠い西方の地まで流れ着くのも厭わなかったほど恋い焦がれた男。

 クロエの父親の件は、アルマの帝都でのささくれ立った心をいやしてくれたイレーヌへの一番の供養だと思っている。


「色々一気に進めることになるな。

 それに、あれも街で洗練させた文化の風に触れないと、あの年で美しく着飾ることも知らないのは可哀想だ。

 あれは飾ればそこらのお前が目を(つむ)って相手をする宮殿の不細工貴族の娘よりはいいだろう?」


 はっきり言うなあ、と呆れてもマリウスは口に出せなかった。


「とりあえず婆さんの王宮訪問理由はアマルーテ学院の(すた)れた薬草学部活性化の助言ってことだから、その辺頼む。

 で、いつ旅立てる?」


「出発はすぐ出来ん。

 明日、村の皆には(しばら)く帝都の知人の病気の見舞いに旅に出るから、モリゲンの町医者にかかる様にいう。

 明後日は荷物を準備しなくちゃならんから三日後だ」


 ジロリ、と目で射すくめられては、アルマに比べれば青二才のマリウスはカクカクと頷くしかない。

 人生の年期も人格の器も明らかに違う。


「了解。三日後なら十分早いうちに入る。

 じゃあ、三日後の朝、馬車とともに迎えに来る。朝に出れば夕方にはアグレイアにつける」


「アグレイアで一泊?」


 直行するかと思っていたアルマは少し拍子抜けした。


「そう。そりゃあそうだろう。

 大の男が不眠で馬走らせてもここから帝都じゃ二日かかる。

 婆さんを眠らせずに、夜も馬車で移動させたらあの世に行っちまうかもしれないだろ」


「そりゃあ、そうだ」


 憎まれ口もこの男の口から出るとすべてが許せてしまうのが不思議だ。

 アルマはあの世に行っちまう、と自分が年寄り扱いされたのにもかかわらずころころと笑い転げた。


「でな、腰抜かすなよ。アグレイアでは公爵の城に泊まるんだからな」


「なんでまた?」


 アルマの頭の中に白金髪の美しい少女の顔が浮かんだ。

 自分が教鞭をとっていた時に教えた娘が確か・・・・・・。


「学院長が公爵に話をしたときに、公爵があの金色の髪をなびかせて「わが屋敷で宿泊すればよい」って一言さ。

 まあ、あいつの騎士道精神というか博愛精神というか、あれは称賛に値するね」


「おや、まあ。あたしもこんな年で急に出世したもんだ。

 そうなったらあたしもあの子もちょっといい服着ないとまずいかね」


 アウシュリッツ公爵のイリアス・フォン・アウシュリッツ。

 若干十九歳で、大陸で有数の美男子と名を馳せる裕福な独身貴族。

 元はと言えば祖先は帝国皇帝の先祖と戦友と言う言い伝えがあるために、アウシュリッツ公爵家は特例で王冠の紋章が「貴族」と称しながら使うことが許される。

 元々公爵家は軍門の家系で代々皇帝に仕える騎士の一族。

高潔かつ誠実、ノブレス・オブリージュを絵に描いたような矜持(きょうじ)の持ち主なのだ。

とりわけ今の当主イリアスは皇帝の覚えも誉れも高く、民衆からも熱烈に愛される当主である。

 家紋である獅子の(たてがみ)のごとき金色の髪を(なび)かせ、琥珀色の瞳には知性と勇気が佇んでいる。

 神の使わした知性と勇気を持った美しき騎士を絵に描いたらこうなるのではないか、と美しいものに関しては慧眼のあるウィンバー国王が評したほどである。

 もちろん女性達からも絶大な人気を誇っている。


「街に着いたら既成(きせい)の品でもいいから服を買わなくちゃいけないね」


「婆さん、心配無用だ。充分、別嬪(べっぴん)だから」


 椅子から立って、いけしゃあしゃあとアルマを背にしながら言うマリウス。


「じゃあ、俺は今日モリゲンの宿に泊まるから帰る。公爵の城には三日後に行くって伝えておくから頼むぜ、婆さん」


「あっちの方向見て「別嬪」て言うんじゃないよ、このバカ者」


 何だかんだ言ってもマリウスを見送りに椅子から立つアルマ。


「ははははっ、じゃあな、婆さん。

 クロエ、お茶うまかったぞ」


 奥の方を向いて叫びマリウスはクロエが顔を出すかどうかなんてお構いなし。台風一過だ。


「おそらく、あいつは全て知らされておるまい」


 その後ろ姿を見送りながら、アルマは部屋に戻ると、机の上に置かれた帝都から最近届いた書状達をしげしげと見直すのだった。

 その手紙の差出人は二人。公爵の君主であり、今は摂政(せっしょう)皇太子(こうたいし)として皇帝陛下の代わりに大陸一の国カレンデュラ帝国を治めはじめた男。

カレンデュラ帝国皇太子オスカー・エル・ファリス・カレンデュラノーム。もう一人は帝都の警察庁長官である。


読んでくださってありがとうございます。

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