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僕の見た夢

 ――うーさーぎーおーいし、かーのーやーまー……。こーぶーなーつーりし、かーのーかーわー……。


 ――お兄ちゃんは!? お兄ちゃんは大丈夫!?


 ――うん。だからもう、心配しなくていいよ。


 ――助けて……。助けて……! お願い助けて……!!


 片目と鼻、口を残して、全身のほとんどを包帯でぐるぐる巻きにされた少女が、何度も何度も助けを求めながら、暗い廊下の奥の方へと担架で運ばれてゆく……。ずいぶんとめまぐるしく内容が変わる夢だった気がするけど、起きる直前の内容はだいたいそんな感じだった。


「……なんなんだ」


 時計を見ると、夜中の2時を回っている。こんな中途半端な時間に起こされたところで、メリットなんてなにもない。その上僕は、再び寝付くことができなかった。迷惑千万な夢だ。


 ……いや。夢、なのか?


 夢にしてはリアルすぎなかったか? 僕が覚えているのは包帯ぐるぐる巻きの少女がどこかに運ばれていくシーンだけだけど、見ていた夢はそれだけじゃない。

 

 なんとなく、僕はその少女を助けようとして失敗した気がする。

 

 昨日も、変な夢を見た。やたらと懐かしいくせに何も身に覚えがないという、変な夢。こっちに関しては内容すら覚えていない。ただなんとなく、青と白の服を着た小さな女の子が出てきた……ような気がする。そして、幼い少女が歌う「ふるさと」のメロディーが、起きた瞬間にいつまでも脳内に焼き付いていた。


 ここ最近、見る夢の内容が無闇に現実的すぎて、「夢」なのか、それとも「自分の過去」なのか、区別がつかなくなってきた。


 起きた瞬間は覚えている夢でも、一日もすると内容があやふやになって忘れてしまう。きっとこの夢も、明日の昼頃には忘れているんだろうな。そしてふと思い出したときに、「過去の記憶」なのか「ただの夢」なのかが分からなくなっているんだ。……正直、少し不気味ですらある。

 

 僕は再び目を瞑った。もしかしたらこれは、前世の記憶なのかもしれない……そう思いながら。


 そう、僕には前世がある。……今の僕は、過去の僕とは違うんだ。……何を言っているのか分からないだろう? 僕だって分からない。


 夜は、昼間とは思考回路が違うらしい。昼間は絶対に考えないようなことを、夜は平気で考える。平気で考えた後、忘れてしまう。


 さて、眠れるかどうかは分からないけど、もう一度寝る努力をしてみよう。寝たらまた、あの子に会えるかもしれないから。夢の中でしか会ったことのない、笑顔の素敵なあの子に。

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