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日本は異世界で生き抜く  作者: 亜細亜
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3

旧太平洋


『ウィザード1からガルーダへ、未だ発見ならず。どこを見ても綺麗な海と空だけだ』


『ガルーダからウィザード各機へ、後はライダー隊が引き継ぐ。帰投せよ、報告書が待っているぞ』


『ウィザード1了解、帰投する』


「気が抜けているな」


「しょうがないのでは。手探りな状態な上に、人工物もしくは住民が存在する陸地の捜索との命令ですから」


 そんな会話を交わす佐川艦長と沖田副長は、空母しょうかくの艦橋にいた。周りでは、それぞれの機器にかじりつくように隊員が見ていた。佐川艦長は航空団を咎めるような発言をしたが、自身も何の発見が無いため少々飽きていた。それを察したように、沖田副長が話しを振ってくる。


「にしても、FCSの書き換えがすぐに済んで良かったですね。レーダーの索敵範囲が、広がらないのは痛いですが」


「そうだな。空軍のレーダーサイトの連中も頭を抱えているらしいぞ。

防空圏の再設定や費用の捻出なんかでな。最もうちも同じような問題を抱えているがな。」


 この星では、物理的に戦闘空間が広がった為に、各軍の戦略や戦術の再構築や主にFCSの書き換えが急遽なされた。システムの書き換えと共に、人員の再訓練もされているが、費用や時間の問題であまり進んでいなかった。


「そういえば、新たに編入された島から鉄やレアメタル、謎の鉱石なんかの様々な資源が発見されたらしいですよ。その中に、石油に替わる藻類や海藻が見付かったらしくて、かなり喜んでいましたよ」


「ほう、確かに嬉しいニュースだな。ただかなり詳しいな?」


「知り合いが調査隊居まして。ですが、背広組の話を聞いた時は、笑いそうになりましたよ。」


「背広組がどうした?」


「連中、秋葉原や各地の書店で、ファンタジー系や異世界系の本を買い占めていると」


「公費で何やってんだ」


 そんな話をしていると、ウィザード隊が着艦していた。その様子を横目に見ながら、今回の調査派遣艦隊の構成艦を思い返していた。


旗艦 空母 しょうかく


ミサイル駆逐艦 あたご なち


駆逐艦 ながら しもつき さざなみ あまつかぜ ふぶき おぼろ


強襲揚陸艦 のうみ


補給艦 ましゅう まみや かざはや


潜水艦 うんりゅう はくりゅう あさしお なるしお


 ここ最近では見られない大艦隊であった。ここまでの艦隊だと他国から警戒されるようなものだったが、ここでは文句を言う相手も居らず、不足の事態に備えるのと同時にあらゆるデータの収集も兼ねているからだ。


 あたご艦橋内でも同じような会話がされていた。


「しかし、遅いな」


「またですか」


 鬼塚艦長の呟きに聞き飽きたとウンザリした様子で、北川副長が返す。


「いや、未知の海だからってのは分かっているけれどさ。それにしちゃあ遅すぎない」


「ですから、海流や気流などの情報が全て役立たずになったので、新たに収集するのと、衛星から支援が受けられないからと何度も伝えていますよね。そもそも、艦長の方が詳しいでしょうが」


「そうなんだけどね。こうも結果が見えないと何だがやる気が出なくて。そもそも日本海や太平洋を捜索している理由は、ロシアや半島、アメリカ、ハワイがあったからだよ。理由にしては、弱すぎない?ここまで来たら神頼みでもすれば良いのに」


「部下に不満を語られても困ります。其処まで言うならば、上官に進言なされれば良いと思うのですが」


「したけどハネられた。そんなオカルトに頼るなと有り難いお言葉とともにね」


「そうですか」


「北川副長、かざはやからの燃料補給を受ける時間です」


「分かった。各艦に通達、これより我が艦は補給作業に移ると伝えろ。総員、補給作業に掛かれ」


 部下からの報告により、不満タラタラの上官との会話が切れた事を幸いにと指示を出していく。


「元気だね。そんなに話すの嫌だったの?」


「嫌ではありません。ただ、同じ話を何度も聞いて飽きてきただけです」


「嫌と言ってるようなものじゃないか」


 よよよっと大袈裟に反応している艦長をおいて、補給作業に掛かる隊員達。


 潜水艦うんりゅうは、本来よりも浅い所を潜行していた。


「充分なデータ無しに潜れなんて何考えているんだ、上は」


「しょうがないですよ。それより、新しい海図を作り上げていると思っていましょう。太平洋はアメリカの海でしたが、今は日本の海ですからね」


 発令所では、機嫌の悪い春川艦長を宥める西田副長がいた。


 元々閉鎖的な潜水艦で有るため、全く知らない海に潜るのは不安を誘う。ただ、現状は誰も知らない海のデータ集めているというめったに出来ない事をしている。


「陸には上がるには、後3日の我慢か」


「いっそのこと、浮上しますか?そろそろ充電しなければならないので」


「そうか。なら余裕を持って今の内にしておくか」


 発令所から浮上の命令が出され、ゆっくりとその巨体を浮かばせる。


 まみや艦内にある食堂で休憩している隊員達がいた。


「結局、アレはなんだっただろうな?」


「アレって、あの電磁バリヤとか空間の歪み言われてた奴か?」


「そうだよ。なんか不気味じゃないか。新しく編入した島の外側からグルッと日本を囲むようにあってさ、然も島の調査が終わって移住だ何だと問題が片付くのと同時に無くなるんだから」


「何だって良いじゃないか。もし仮に神様がいたとしても、どうにか出来る相手じゃない事は確かなんだから。人型ロボットで悪の組織や怪獣とバトッたり、地球政府と宇宙植民地とのいざこざから全面戦争したり、銀河の帝国と連邦の戦争とか、歌で異星人と分かりあったり、スーパーなロボットで大戦する世界の住民じゃないだから」


「言いたい事は分かったけど、後半部分はいらなく?そもそも関係無くない?」


「この話は俺らが考える事じゃなくて、学者だろ。軽く流しておけよ。それよりよ、異世界と言えば猫耳の女の子とか魔法だろ」


「何でそんな元気なん?気になるとちゃっなるけどさ、お前ちょっとキモい」


「こうでもないとやる気が無いんだよ。ご褒美ぐらいあっても罰は当たらないぜ。第一、秋葉とかでその手の本を買う背広の連中がウジャウジャいるって有名なんだぜ」


「何してをの背広の奴ら!」


「頭の固い連中だって期待してるんだぜ。これは出て来ない方がおかしい!一番手は俺だ!」


「お前がおかしい。ちょっと医務室行ってこいよ、外科医も居るんだし頭の中看てもらえ。そもそも一番手は陸の奴らだろ。それに変な病気を貰えば、艦砲でミンチだぜ」


 そんなくだらない話しを上官に呼ばれるまで続ける。

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