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日本は異世界で生き抜く  作者: 亜細亜
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謎の現象から1ヵ月後


「ーーー以上で全ての報告を終わります」


 会議室に設置されたテレビのスピーカーからの報告が終わる。


「分かった、ご苦労。現状維持を続けてくれ」


 鈴木葵国防大臣がそう言うと、テレビ中継された映像が切れた。


「これで決まりましたね。いや、にしても出来過ぎてますね。新たに発見された大きな3つの島の全てが日本の生態系である事なんて。釣り針の先の餌を見ている気分で気味が悪い」


 土御門拓三総理大臣は、出来すぎた結果に対する不自然さを持たざるを得なかった。


「しかし、これで未知のウイルスでも発見されていたらと思うとゾッとしません。何せ、どれも近いですから。火葬場は未だにフル稼働で、これ以上死体が増えられたらバイオハザードは避けられませんから」


 安川誠也厚生労働大臣は、心底ホッとした様子で言う。謎の現象の影響と思われる突然死で、衛生上の喚起や年金、保険の対応に追われていたからだ。


「安全と判ったならば、発表を。経済はボロボロで、経済界からの圧力も高まっています。直ぐにでも開発をしていかなければ」


 笠井雅美経済産業大臣も気味が悪いと思っているが、安全ならば資源調査や開発を優先して、何とか経済を安定させたいと思っている。


「経済の立て直しは確かに大切ですが、無秩序の開発をしてせっかく手にした自然や資源を無駄にするのはどうかと。計画的な開発を行い、貴重な資源を大切にすべきです」


 内海良治内務大臣は逸る笠井をたしなめる発言をしながら、これから出てくる環境問題にどう対処するか頭を悩ました。


「既に赤字国債の大幅増が決まっているので、予算は多く出せません。来年度からの予算は今までよりも絞めていきますので、無駄使いが有るようならば減らしていくので」


 朝田誠財務大臣はどうしても出てくる予算の増加要請と、それに伴う赤字国債の発行増加とのバランスが、取り返しにつかない状態に成らないようにするにはと、頭の中でうなだれている。


「開発のし過ぎで、海洋資源を減らすのは勘弁してくれ。ただ、耕作地を増やすのは早くして欲しい。陸と海のプラントで野菜の栽培や魚貝類の養殖をしてはいるが、量が圧倒的に足りない。それと、新たに見つかった魚の鑑定を早くしてくれなければ、漁師達が干やがる」


 松本亮農林水産大臣は、日本が抱える問題の解決を新天地となる島にあると見てた。ただ、自然のしっぺ返しがどれほどになるかや、治水の対策費の問題などを心配している。


「現行の法律内での開発をしてください。急ぐあまりに逮捕されるような事態にはならないで下さい。もし、現行法では無理があるならば早めに修正や新法を出してくださいね。」


 開発を勢いに任せて、無自覚な違法行為でケチが付くことが無いようにと、田口大介法務大臣は各自に警告をした。


「一段落着いたならば、研究や調査はもっと此方に回して欲しいです。参加出来ていない研究所や大学からの要望書が、無視出来ない数になっているので」


 今までは、それなりの設備が有る施設でないと研究ができず、調査も人数が限られており、それなりに安全と伝わってくると嘆願書や要望書が増えてきて、何もしなければ陰謀論なんかが飛び交うため、姫川右京文部科学大臣は飴となる物を欲しいと思っていた。


「各地の犯罪率の上がり方が早いので、不満や鬱憤を晴らす為にも開発はして欲しいですが」


 予想以上に各地の犯罪率が上がっているのを懸念して、外に目を向けることで下げようと小松裕也公安大臣は考えている。


「開発は勿論大事なことですが、貿易をする相手も必要ですよ。このままでは、資本主義の我が国は体制の再構築をしなければいけなくなりますから」


 開発に偏る事を懸念して、外交にも力を入れることを浦辺美雪外務大臣は主張した。ただ、資本主義は他国の存在あっての事なので、あながち間違ってはいない。


「発表をする事で皆さんは良いようなので、3日後に発表するので宜しいですね。各省庁に持ち帰り、開発に関する詰めをするようにしてください。主導権争いで、無駄な争い事にならないようにしっかりと、言い含めて下さいね」


 坂本晋三官房長官は、発表に反対する大臣がいない事を確認した後、省庁間の無益の争いが無いようと念押しをしたが、起こるだろうなと思いついどうするかと、頭を悩ました。


「外交の件については、アレの影響がそろそろ切れるようなので始めて行きましょう。まず、軍の派遣に合わせて他に国家があるかからですね」


 土御門総理が、鈴木大臣と浦辺大臣に確認をするように見ると、それぞれからも賛同の意が帰ってきた。


 こうして、日本の手探りで始める外交とそれによって起きる戦乱の幕開けがされた。


「にしても、今でも信じられない」


 会議が終わり、緩んだ空気に誰かが何気なく呟いた言葉が響いた。

 その言葉に誰もが、無言で賛同した。


 真実は小説より奇なりと、一部の公務員を除いて、実感すること無く国民の下僕として、ストや組合が無いことに嘆き仕事に励んだ。


 星図が今まで確認された事のない形になり、国外からのあらゆる通信が無くなり、離島との通信途絶、一部の動植物と国民の突然死、観光客や在留外国人、一部の国民との連絡の途絶、各地に現れた邦人と外国人の確認など仕事をするほど増えた。


 そのため、徹夜が常態化し辞職届や願いを出しても笑顔で拒否を受けたりと、漫画のようなやり取りが各地で行われたのは仕方ないとしたい。


 そんな公務員達の犠牲によって、ここが地球以外の天体であり、その大きさは地球より数倍と大きく、水平線や大気圏、海流、気流などの変化が分かり、また別の特別な公務員達が涙した。


 研究者たちは未知の発見が出来ると狂喜乱舞したり、色々と張り切ることになった。そのおかげで、様々な研究や調査が進み判明した事実が多く出た。

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