10話 決闘
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最後の一分を修正しました。19.6.13
セブッソとの決闘の時間が近くなってきたらしく、護衛兵士さんが僕を呼びに来てくれた。
僕は正直乗り気ではなかったのだが、よいやみに懇願されたので、決闘場へと向かった。
よいやみは、今回はガスト王と一緒に僕達の決闘を観戦するらしい。
表向きのこの決闘の目的は、よいやみの伴侶を奪い合う僕とセブッソの戦いだ……。
はぁ……。
決闘するのは、普段兵士達が訓練に使用している場所だそうだ。
そこには観客席もあり、数人の貴族の人が座っていて、王族はレイチェルさん、やよいさんにせいなさん。それにせいなさんの隣に金髪の大人の女性がもう一人加わっていた。
……アレは誰だろう?
僕は案内してくれた護衛兵士さんに、せいなさんの隣にいる人の事を聞いてみた。
「あの方は、ガスト王の三番目のご息女のすずめ様です。今はガストの大公爵家の跡継ぎのご婦人であります」
要するによいやみのお姉さんだね。
すずめ様はよいやみの事が大好きらしくて、よいやみの結婚相手を見極めるために、この決闘を見に来たそうだ。
それに他の貴族に関しても、「今回の件はブルット公爵家の存続を決める決闘ですので、大公爵や公爵、それに有力貴族が今回は観戦する事になったのです」と教えてくれた。
という事は、ガストの有力貴族の前で戦うの?
思ったよりも大事になっていない?
「みつき様。よいやみ様からの伝言で、殺さなかったら好きにやっていい。そうです」
よいやみの奴……楽しんでいるな……。
「それと、決闘場に立ったら確認するように。とも仰っておられました。何を確認するのでしょう?」
「あ……うん。今は気にしなくていいよ」
僕は〈生体感知〉を使う。
隠れている人が何人かいるみたいだね。よいやみの予想通りだ。
しかし、〈生体感知〉に引っかかるのは仕方ないにしても、これだけ殺気を出していたら、ガスト王でも気付くんじゃないんの?
僕は観戦席にいるよいやみに視線を移すと、よいやみは呆れた顔で頷いた。
まぁ、よいやみなら気付くよね。
ガスト王は気付いて……いない?
いや、違うな。
気付いてて無視してるんだ。
僕はよいやみの兄弟を見てみる。
キョロキョロしているところを見ると、せいなさんは、場所までは特定できないにしても気付いているみたいだ。流石、魔導兵団隊長だけあるね。
やよいさんとやと様はなんとなく違和感を感じているくらいかな?
まぁ、考えても仕方ないか。
「ところでセブッソはまだ来ていないんだね」
「よほど念入りに準備しているのでしょうね……そうでもなかったら、弱いだけの人ですからね」
護衛兵士さんはあまりセブッソに良い印象は無いのかな?
「どうしました?」
「うん。セブッソってどんな貴族なの?」
「一言で言えば最悪ですよ。普段は威張り散らし、戦闘や魔物退治になると真っ先に逃げるんです。そんな奴等に誰も慕いません。私はやよい様と同じ兵団にいますが、王族の方が必死に戦っているのを知っています。だからこそ、我々は王族を尊敬しているのです」
え?
「どうしましたか?」
「せいなさんが魔導兵団なのは知っていたけど、やよいさんも魔導兵団なの?」
「やよい様は違いますよ。せいな様の魔導兵団は魔法を主体にした兵団なのです。やよい様は前衛を主体としたガスト騎士兵団の一員です。私もガスト騎士兵団の一人なのです」
どうやらガストには三つの兵団があるそうで、一つは一番人数の多いガスト総兵団というらしい。ここはやと様とガスト王が取り仕切っているガストの主力だそうだ。そして、せいなさんが隊長をしているガスト魔導兵団。やよいさんや護衛兵士さんが所属しているガスト騎士兵団があるそうだ。
僕と護衛兵士さんが話し込んでいると、セブッソが重装備をして訓練場に入って来た。
随分と着こんでいるみたいだ。
鎧にアレは……魔法剣?
「アレはガストで開発された魔法具の剣です。属性魔法をため込む魔法具を剣に埋め込んであるんですよ。恐らくですけど強力な魔法をため込んでいるはずです」
「そんな剣を使うなんて、殺し合いになるんじゃないの?」
「恐らくセブッソ様はみつき様を殺すつもりなのでしょう。みつき様は勇者様ですから、殺して自分には力があるとアピールしたいのでしょう……」
「アホらし……」
しかし、相手は殺す気で来ているのか……。
「みつき殿。前に出てくれぬか?」
ガスト王からお呼びがかかった。
僕は護衛兵士さんから木剣を用意してもらう。
護衛兵士さんは驚いていたけど、僕は笑顔で「これなら普通に戦っても殺さなくて済むからね」と言ったら、苦笑いを浮かべて木剣を用意してくれた。
「本当にいいのですね」
「うん。これで充分だよ」
僕は木剣を振る。
その姿を見てセブッソは僕を馬鹿にした目で見てくる。
「くくく……勇者としてのプライドが君を殺す事になるけどいいのかな?」
「いいよ。別に殺される気もないし、今までコソコソ隠れていた人がそんな魔法具の剣を使いこなせるとも思えないし」
「なっ!?」
セブッソは決闘が始まってもいないのに斬りかかって来た。
僕はガスト王に視線を移す。
ガスト王が頷いたので頷き返す。
もうゼブッソは向かってきているが、ガスト王は呆れながらも「始め!!」と決闘開始の合図を出した。
しかし……、セブッソは遅すぎる。
そもそも、普段戦っていないのに重鎧を着こんでいる時点で、普通に歩く方が速いくらいだ。
この鎧を用意した人は……、セブッソを死なせたいのかな? ただのアホとしか思えない。
しかも剣を振りながら走ってくるから滑稽でしかない。
ゴブリンでも……、アロン王国の周辺にいるゴブリンでもそんな無謀な事はしない。
だって……。
首をいつでも斬れるんだよ?
僕は、セブッソが剣を振り下ろした隙をつき首に一撃をいれる。
まぁ、木剣でもいつも通りやってしまえば首の骨が折れてしまうかもしれないので、力だけで首を攻撃した。
僕はよいやみほど力は無いのでこれで充分だろう。
ゼブッソは首にダメージを受けて、そのまま白目を剝いて倒れてしまった。
あ、あれ?
僕はセブッソを蹴ってみるが反応はない。
く、首の骨、折れちゃった?
い、いや、手ごたえはなかったはずだよ?
護衛兵士さんがセブッソの状態を調べ、気絶しているだけと分かったのでとりあえず安心した。
「勝者、みつき殿!!」
ガスト王がそう宣言して、よいやみが僕の横に跳んできて来て僕に抱きつく。
「これで、みつきと結ばれるっす!!」
はぁ……。
よいやみが近付いてきた時にそんな予感はしていたんだ。
有力貴族が集まっている状況で既成事実を作ろうとしているんだろう。
よいやみに縁談なんて持ってくるな……と。
ここでガスト王から衝撃の言葉が発せられる。
「みつき殿とよいやみの婚約をここに認める事にする。賛成の者は挙手して欲しい」
は?
貴族の人達は全員手を挙げている。
すずめ様は涙を流しながら手を挙げていた。
は?
僕はよいやみを見るのだが、ニヤニヤしている。
こ、こいつ……。
「よいやみ、これでいいのだな?」
「はい。私はみつきと共に歩んでいきます。もちろん夫婦として」
「……分かった」
いや、分かったじゃないよ。
僕はよいやみを睨むが貴族や護衛兵士さん達の拍手によりもう逃げられないと悟る。
僕は茫然としていると、よいやみが抱きついて「はは。みつき、ガストを出るまでだから安心するっす」とボソッと言う。
「う、うん……」
「でも、あしは本気でも良いんすけどね」
「は?」
「冗談っすよ~」
こ、こいつ……。
このまま場が収まると思ったが、ブルット公爵がここで立ち上がった。
その瞬間、隠れていた私兵達が一斉に武器を構えて前に出た。
数は十八人?
この短時間で良く集めたものだね。
今の僕は木剣だ。これなら多人数戦でも人を殺さなくて済むだろう……。
「いや、ダメっすよ」
「え?」
「さっきの決闘でも、みつきは息を吐くように首を狙ったっすからね。みつきに対人戦をさせると危険極まりないっす」
「で、でも……」
「大丈夫っすよ。戦闘にすらならんっすから……」
私兵達は僕を殺そうとにじり寄ってくるのだが、よいやみが殺気を放つと私兵達は恐怖で動かなくなったみたいだ。
動けなくなった私兵達は、護衛兵士達に取り押さえられた。
ブルット公爵は喚いていたが、ガスト王が主催した決闘を阻害したと、ブルット親子は地下牢獄へ投獄される事になった。
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