14話 ソーパー王国の冒険者ギルド
誤字報告にて指摘があった部分をできるだけ違和感のない様に修正しました。
詳しい変更点は活動報告に載せます。(19.6.15)
僕達はセリティア様を呼び出す為にアロン王国に帰って来た。
勿論、王様も一緒に帰って来て、王城の執務室に送って来た。
その後、お店に帰ってきた僕達は、今後については話し合う。
「いつきさん、今日のうちに教会に向かうの?」
「いえ、今日は行きませんよ。大司教の母親がシスタークリスという事はほぼ間違いないと思いますが、大司教……いえ、他の神官の誰かがこちらにスパイを入れているかもしれません。それに陛下が兵士を派遣してくださるそうなので、準備期間を含めると明日以降がベストだと思います。できればベストな時間でシスタークリスを捕まえたいので……タチアナさんに協力を要請しましょう」
タチアナさんと言えば、いつきさんが今も黒女神に勧誘している魔法具技師の女性だ。
ヴァイス魔国にお店を持っている彼女に。今も良い返事を貰えていない。
でも、どうしてタチアナさんの意協力がいるのだろう?
「今後の事を考えると各国の王にいつでも連絡できるように、連絡用の魔宝玉を持ってもらっている方が良いと思いましてね。タチアナさんの連絡用の魔宝玉の性能の高さは、クロウディアさんをも遥かに超えていると思っています。だからこそ、タチアナさんの魔宝玉が欲しいのですよ。この交渉は、今日のうちに私が動きます。最悪でも、事情を説明して魔宝玉だけでも買ってこようと思っています」
「じゃあ、今日はこのまま自由時間?」
「いえ、カレンさんにソーパーでの話をしに行こうと思っています」
「え? いいの?」
「はい。ソーパー王に許可は取ってはいませんけど、ソーパーの教会にとどめを刺しに行くときは、カレンさんもつれていく予定なので、どうせその時にバレるのですから、今話しておいても構わないでしょう……それに」
いつきさんの笑顔が悪くなる。この顔をしている時は、たいてい碌でもない事を考えている。
「と、いう訳でカレンさんの部屋へと行きましょう。そろそろ、ゆづきちゃんも起こさなきゃいけませんからね。みつきさんもゆづきちゃん成分の摂取が必要でしょうし」
確かに、早くゆーちゃんに会いたいけどさ、よいやみが言う、ゆっきー病も良く分からないけど、いつきさんが今言ったゆづきちゃん成分って何だろう?
確かに、早くゆーちゃんを抱っこしたいけどさ、ゆーちゃん成分って何だよ。
カレンさんを監禁しているのは、お店の三階にある僕達の部屋の隣だ。
監禁と言っても、別に結界を張っているわけではないので、逃げようと思えば逃げる事は可能だ。
扉を開けようとすると、カレンさんの悲鳴が聞こえてきた。
僕は急いで部屋の扉を開ける。
部屋の中では、ゆーちゃんが目を輝かせながら、カレンさんを脱がそうとしている。
カレンさんも必死に脱がされない様に服を掴んでいる。見た目が幼いゆーちゃんに実力行使で抵抗もできずに必死に服を剥ぎ取られない様に頑張っていた。
カレンさんは僕達が部屋に入ってきたのを見て、涙目で助けを求めてきた。
「ちょ、この子を止めて!!」
「ぬげ」
「ゆーちゃん! 何やっているの!?」
僕は、ゆーちゃんをカレンさんから引き剥がす。
ゆーちゃんはじたばたと暴れている。
「こいつからめすのにおいがする」
「い、いや、雌って」
「みーちゃん、とめちゃだめ」
「ゆ、ゆーちゃん。カレンさんが女の人という事はもう分ってるから、無理やりは駄目だよ」
「かれん?」
カレンさんに事情を説明する前に、ついカレンさんの名前を言っちゃった。
よいやみもいつきさんも呆れた顔をしている。
カレンさんは驚いた顔をしていた
「え? 今僕の事をカレンって……。どうして僕の性別の事を……も、もしかしてアディに何かしたんじゃ」
アディ?
もしかして、いつきさんの話に出ていたカレンさんの幼馴染の事?
「いえ、そのアディさんという人には会ってもいないですよ。貴女の事を話してくれたのはソーパー王です。王が貴女の出生の事を教えてくれたんです」
いつきさんは、ソーパー王の弟の話や、政争に巻き込みたくないと親友であり平民の今の両親に預けられたとの事をカレンさんに話す。
流石にこの話を聞いて、カレンさんも驚いたみたいだ。
「わ、私が王族? 確かに、自分が養子である事は知っていたけど、まさか、王族だったなんて……政争に利用されないためなんて……でも、王族には王太子のヨハン様がいたはずだ。あの人は優秀だったし、彼がいる以上政争なんて……!! きょ、教会か……」
カレンさんも教会が聖女としてローレルさんに目をつけていた。もし、カレンさんが王族のままいた場合、カレンさんが聖女をやらされていた可能性もある。
「そうです。教会としても、もし貴女がいれば評判の悪いローレル姫を聖女にせず、貴女を聖女にして利用していたでしょう」
「なら、陛下は、どうして私を勇者に任命したんだ? アロン王国に行けと言った意味も分からない」
「それはソーパー王なりの思いやりですよ」
いつきさんはソーパー王が話したカレンさんを勇者にした理由を説明する。
「どちらにしても政争に利用される可能性は会った訳か……」
カレンさんは少し戸惑っていたけど、ソーパー王がカレンさんをアロン王国に送った理由を理解したようだ。
「で、今の話を聞いて、貴女はどうしますか? 王族になるというのなら私達は貴女を諦めますし、解体職を続けるのなら、是非、黒女神の専属として勧誘したいのですが」
「うん。私は今までのままでいいよ。別に王族になりたいわけじゃないし、アディと一緒に解体職ができるのなら、ソーパー王国でもアロン王国でもどっちでも良いんだ」
「じゃあ、アディさん次第という事ですね」
「うん、そうなるね」
「分かりました。じゃあ、一度ソーパーに戻りましょう」
え?
さっき帰って来た所なのに?
僕もよいやみも驚いたけど、今回は冒険者ギルドへと転移するみたいだ。
アディさんはギルドにいるのかな?
「カレンさん、ソーパー王国の冒険者ギルドってどうなの?」
「カレンでいいよ。冒険者ギルド自体はアロン王国と大して変わらないよ。ただ、教会とはかなり仲が悪く、冒険者達と貴族はお互いを嫌っている」
「そうなの? 貴族って冒険者を嫌うモノなの?」
「そんなもんっすよ。アロン王国もレオン陛下によるクーデターがあったから、貴族と冒険者の中が比較的いいだけで、よその国ではソーパーよりも嫌いあっているところもあるっす」
「そうなんだね。それならカレンが入るのは危険じゃない? カレンはソーパー王が決めた勇者なんでしょ?」
「その点は大丈夫だよ。ただ、ギルマスも私が女とは知らないんだ」
という事は、別の問題が起きるって言う事?
僕達は冒険者ギルドに入る。
ギルドはアロン王国の冒険者ギルドよりは小さいけど、賑わっているようだ。
い、いや、これは騒ぎになっているのかな?
僕達が入り口で戸惑っていると、四十代くらいのおじさんが駆け寄って来た。
「か、カイト!! お前、無事だったのか!?」
知り合いだろうけど、なんとなく危険と判断したのでよいやみと僕がカレンの前に出る。
すると。
「お前、また女を増やしたのか!! アディが悲しむぞ!!」
「ち、違……」
「全く、お前は顔はいいからな。羨ましいぜ!! 姉ちゃん達、カイトはやさしっ!!」
おっさんが言い終わる前に、よいやみが腹を殴る。
おっさんはその場で膝をつく。
「な、何を……」
おっさんは小刻みに震えながらよいやみを睨んだ。
すると、よいやみがおっさんの髪を掴む。流石にガラが悪いよ。
「あしはみつきの女っす。次に間違えたら殺すっすよ」
い、いや、何言ってんだ?
「よいやみちゃん、離してあげてくれないか? その人はカイトとしての私しか知らないんだ」
「そうっすか?」
よいやみは、不満そうに手を離す。
「な、なんて事しやがる……って、カイト、その胸についているのは何だ?」
「ムカつく事を言うと思ったら、今度はセクハラっすか? 本当にここで殺すっすよ?」
「よいやみちゃん、大丈夫だよ。ギルマスは本当に知らないんだ」
「それならそれでいいんすけど、このおっさんはいちいちムカつくんすよね」
「なんでいきなりこの子に嫌われてんの!!」
おっさんが絶叫していると、冒険者ギルドに一人の女性が駆け込んできた。
「おっさん!! カイトに何かあったって本当か!!」
「アディ!」
「え? か、カイト!! あんた、胸隠さないでいいの!!」
「え、あ、うん。もうバレっちゃってるんだ。ギルマスも含めて話があるからちょっと別室でいいかな?」
「あぁ、俺も色々とあって混乱している」
僕達はおっさんに案内されて応接間に通された。




