11話 父親として……
一部間違えていたところがありましたので修正しました。
感想で教えてくれた方ありがとうございます。
部屋に入ってきた男性は、豪奢な服を身に着け王冠を被っている。この人がソーパー王国の国王様なんだろう。
ソーパー王は僕達を見て一瞬驚きはしたものの、一通り見回した後、偽聖女さんの所で視線を止め溜息を吐く。
「ローレル……今度は一体何をしたんだ? ここにいる面々に迷惑をかけたのだろう?」
ソーパー王は、悲しそうな顔で偽聖女、ローレルさんの目をジッと見ている。ローレルさんはその目に耐えられなかったのか、目を逸らしている。
「お、お父様……わ、私は……」
「言い訳はいい。お前を幽閉して教育しなおす。そして、他国に嫁いでもらう。正直、嫁の貰い手がないかもしれないが、婚約者は何とか探し出してやる。それが、親としての責任だからな」
「……はい」
ローレルさんは、言い返す事も出来ないようだ。
「そちらはアロン王国国王、レオン殿だな。歓迎したいが、今回はそうも言ってられん。娘が迷惑をかけて申し訳ない」
「いや、実際は俺の国では問題を起こす前にアロン王国の勇者が、ソーパーの勇者一行を捕らえてくれたからそこまでの被害は出ていないから気にしなくてもいい。ただ、ローレル姫はともかく、他の二人にはそうは言えない」
ソーパー王はローレルさんの事を聞かされて少しホッとしたようだけど、オーソン達の事を聞いて再び厳しい顔になる。
ソーパー王は再び僕達を見る。
ローレル姫はいつきさんのすぐ近くに拘束されて立っているけど、オーソンと戦士はグルグル巻きにされてオーソンはあまりにもうるさいので、よいやみが踏みつけている。
「一つ聞いていいか? カレ……いや、カイトはどこだ?」
「あぁ……勇者カイトは「陛下、その事は私が話します」……お前は本当に俺相手には遠慮をしないな」
王様は少しだけ呆れた顔でいつきさんを見るが、当のいつきさんは笑顔で王様を無視していた。
「勇者カイトさんは、アロン王国にある私の店に監禁しています」
「監禁!? カイトは無事なのか!?」
何だろう?
ローレルさんに対しては冷めた態度だったのに、勇者であるカイトに対しては血相を変えて心配している。
……そう言えば、カイトはソーパー王に直接勇者に任命されたんだっけ?
任命した勇者がそんなに大事だったのかな?
「私はセリティア様の聖女、いつきと言います。カイトさん……いえ、本名ではないでしょうが、彼女は無事です。怪我もしていませんよ。黒女神……勇者一行である黒女神としては、平民であるカイトさんには今後黒女神専属の解体職として働いて欲しくて交渉するためというのもありますが、今回の事ではカイトさんには何の責もありませんから店の方でゆっくりしてもらっています」
彼女?
いま、いつきさん彼女とか言わなかった?
気のせいかな?
僕が首を傾げていてもいつきさんとソーパー王の話は続く。
何事も無かったように話が進んでいるから、気のせいだったんだろう。
「では、カイトは無事なんだな……」
「はい。怪我一つしていませんよ」
いつきさんからそう聞いたソーパー王は先程までとは違って落ち着きを取り戻したようだ。
そんな姿を見て、よいやみの足の下のオーソンが騒ぎ出した。
「国王!! この国の宰相の息子である俺がこんな目に遭っているんだ!! 平民であるカイトよりも俺達を心配しろ!!」
「そ、そうだ!! 俺は騎士団長の息子だぞ!!」
「うるさいっす!!」
よいやみが、オーソンを踏みつける力を強めたみたいで、オーソンはうめき声をあげている。アシャもそんなオーソンの姿を見て顔を青褪めさせる。
そんな様子を哀れんだ目で見ているソーパー王が再びため息を吐く。
「オーソン、お前は廃嫡だ。アシャお前もだ。先程、お前達の父親である宰相のアストロと騎士団長のフラーブの二人が俺にお前達の廃嫡と官職の任を辞すると言って来た。私としては、お前達二人は必要ないと思っているが、お前達の父親とお前達の家は必要だと思っている」
「ふざけんな!!」「お、親父がそんな事を言うわけがない!!」
二人は必死に「嘘だ」「この無能国王が!!」等と国王に向かって罵声を浴びせさせている。
僕は村出身だし、貴族社会というのは分からないけど、いくら将来が有望だからと言って、これって許されるの?
よいやみの顔を見てみると、オーソン達をゴミを見るような目で見ている。
王様は、アシャの前にしゃがみ込み、顎をくいっと持ち上げる。
「おいおい、お前等、自国の国王に向かってなんて口きいてやがる。俺の国だったら、宰相のシドがお前等を殺しているぜ? というか、俺自身が殺すかもしれねぇなぁ。俺と違ってソーパー王は聡明な方だ。ソーパー王の優しさに感謝するんだな」
「お前等の行動が論外なのはガストでも同じっす。あ、イヴァン陛下、お久しぶりです」
「き、君は、魔導大国ガストの第六王女のよいやみ姫ではないか。なぜ君がここに?」
「今の私はすでに王族ではありません。今は、黒女神……ここにいる勇者みつきとともにアロン王国で暮らしています」
「そ、そうなのか? 最近もガスト王が「よいやみちゃんが家出して帰ってこない」と嘆いていたが……」
「あの糞親父……」
よいやみが肩を震わせている。顔も少しだけ赤い。
……照れているのかな?
そんなやり取りをしていると、執務室に二人の男性が入ってきた。
一人は立派な鎧を着ている。
もう一人は、オーソンに似ている。
という事は、二人はオーソンと戦士の父親なのかな?
「む!? 貴様等!!」
戦士の父親と思われる人が、剣に手をかけるが、ソーパー王が騎士を止める。
「フラーブ、彼はアロン王国の国王レオン殿だ」
「お久しぶりです。レオン陛下」
オーソンの父親と思われる人は、王様に頭を下げている。それを見て、戦士の父親も剣を収めた。
「前に会ったのは世界会議の時だったな。今回はお前の息子……いや、お前達の子供の事でこちらに来させてもらった」
二人はそれを聞くと、疲れ切った顔をしていた。
二人の話ではオーソンと戦士がソーパー国内で起こした事の謝罪と賠償のために走り回っていたらしい。
しかし、二人がこの国の為に必死に働いていた事を知っていた被害者達は、親には責任が無いと言っていたそうだ。
となると、責任を負うのは……。
「オーソン、アシャ、お前達二人は廃嫡だ。そして、今から一つ一つの罪を清算してもらう。オーソンは賠償金を支払う生活になる。お前がやった事は最低な事だが、命を奪ってはいないからな……恐らく炭鉱での強制労働になるだろう。ただ、アシャお前は間違いなく処刑になるだろうな」
「え?」
戦士、アシャは顔が青褪めている。
しかし、その頭をアシャの父親が踏んで。
「お前にその顔をする資格はない。その顔は、お前に殺された人々がする顔だ。お前は何を勘違いしたのかは知らんが、騎士団というのは国民を守る為に存在しているのだ。国民は、冒険者はお前の力試しの道具ではない。俺達は騎士団として国を守ってやっているんではない。国を守らせてもらっているんだ。俺達貴族が贅沢できる理由が分かるか? 守るべき国民が税を払ってくれて、その金を俺達は貰っているんだ」
「で、でも……」
「俺は騎士団長だ。お前一人に責任は負わさん。俺は騎士団長の任を辞する。そして、副団長を騎士団長に昇格させ、俺は一般騎士として生涯、この国の為に生きる。それとお前の処刑は俺がやる。それが俺が出来る最後の優しさであり贖罪だ」
「ちょっと待ってよ。なんで貴族の俺が処刑なんだよ!!」
「黙れ!! ここまで言ってもまだ分からんのか!! 陛下、私は息子と話があるので、これで失礼する」
アシャの父親はアシャの髪の毛を掴み部屋を出ていく。
「陛下、私も息子と話をする為にこれで失礼させてもらいます。レオン陛下、たいしたおもてなしも出来ずに申し訳ない」
「いや、気にする必要はない」
「では失礼する」
宰相さんは、騎士を部屋に入れオーソンを連れて外へ出て行ってしまった。
この部屋に残っているのは、お店で留守番をしてくれているゆーちゃんを除く黒女神三人と、王様、ソーパー王とローレルさんだけだ。
ソーパー王はローレルにはこのままここで話を聞いて貰うと言い、静かに話し始めた。




