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クジ引きで勇者に選ばれた村娘。後に女神となる。  作者: ふるか162号
三章 異国の教会編

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1話 聖剣フレースヴェルグ

三章『異国の教会編』始まりです。

三章は、全23話の予定です。

一部に脱字がありましたので直しておきました。


 僕達がティタンを倒してから、一ヵ月が経った。


 一応、人魔王を倒した僕達四人もバトスさん達と同じく英雄とされ《黒女神》というパーティ名も国内外にまで広まってしまった。

 

 有名になった事で、僕達とバトスさん達のパーティに、指名クエストの依頼が殺到した。

 難しいクエストや、凶悪な魔物なら指名してくるのはわかるのだが、ケダマのような弱い魔物の討伐まで僕達への指名クエストになってきてしまったため、冒険者達の仕事が無くなってしまった。

 そうなって来れば、僕達は悪くなくても冒険者達のヘイトは僕達に向かってくる。

 バトスさん達ならばそんな事になったとしても軽くあしらうのだろうが、僕達は違った。


 まず一番に問題を起こしたのが僕だった。 

 懐かしい《流れ星の流星》が、僕に絡んできたのでボコボコにして冒険者ギルドの壁に貼り付けておいたら、リリアンさんに怒られた。


 次に問題を起こしたのがゆーちゃんだ。

 ゆーちゃんが冒険者ギルドに遊びに来ていて、舌打ちされたらしく、ひーるで苛めているところをルルさんに止められた。


 暴力的に一番の問題だったのがよいやみだった。

 よいやみの場合は、文句を言って来た冒険者が二度と冒険者をできない様に心を完全にへし折っていた。勿論暴力でだ。


 最後に冒険者ギルドが一番の問題視したのが聖女であり商人のいつきさんだった。

 冒険者が一番敵に回してはいけないのが商人だ。

 商人は、冒険者達に道具を売ったり武器を売ったりする。それを敵に回すという事は、物を買えなくなるだけではなく、商品に関わる依頼をして貰えないという事だ。

 そう、指名依頼だけではなく逆指名依頼もある。要するに、こいつが受けるのを拒否というのを商人がしてしまうと、その冒険者はその仕事が出来なくなってしまう。

 そして……、いつきさんは聖女である事よりも商人である事に誇りを持っている。


 僕達の悪口を言った冒険者にお店で物を売らないのは勿論の事、別の店で買っていると情報を手に入れれば、そのお店には一切の商品を卸さないと言った報復処置を行った。魔大陸経由の商品やいつきさんが作った魔法具等は、別の店にも卸している。それを取引なしにするのだ。別の商人からすれば死活問題になる。

 

 これだけが理由ならば、冒険者ギルドもわざわざ動かないだろう。あくまでその商人が痛い目を見るだけだからだ。

 しかし、いつきさんはそれだけで済まなかった。

 突然「そう言えば、大本は冒険者ギルドであり、アロン王国でしたね」と言って、冒険者ギルドとも取引を停止して、僕達に「国を出ましょう」と言い出し、「黒女神は冒険者達の嫌がらせに腹を立て、国を捨てるかもしれない」という噂を流した。


 これを聞いたオルテガさんが、急遽僕達を呼び出し、僕達だけでなくバトスさん達の仕事を管理する事になった。

 このおかげで、僕達への指名クエストは冒険者ギルドを通してしか依頼出来なくなった。


 まぁ、問題ばかり起こしている僕達とは違い、バトスさん達への指名クエストの依頼はいまだに減らない。

 これは、後進の育成が仕事内容となっているために、バトスさん達でないと出来ないと判断されている。まぁ、それは仕方が無い。

 僕達と言えば、聖女であり商人であるいつきさんや、腕っぷしが強く、美人さんのよいやみは依頼が多いのだが、僕とゆーちゃんはあまり仕事がない。どうやら、あまり信用されていないらしい。

 これについて抗議に行った事があるのだが、リリアンさんから「ゆづきちゃんは問題児だし、みつきちゃんは何か危なっかしいし……」と言われた。

 ゆーちゃんが問題児なのは認めるけど、僕が危なっかしいというのは失礼だ。暴力という事でよいやみの方が危険だよ?

 ……と文句を言っていても仕方ないし、やる事も無いので、最近では魔大陸まで転移して魔物を狩ったりしている。


 魔大陸までの転移方法は、いつきさんとヴァイス魔国で魔法具屋さんをしている《タチアナ》さんの共同開発で作られた転移魔法陣だ。

 これは思ったよりも高性能で、ヴァイス魔国以外の国にも設置して欲しいと話が来ていると聞いた。


 ちなみにタチアナさんだが、いつきさんが粘り強く勧誘しているのだが、故郷であるヴァイス魔国を離れるのを躊躇っているらしく、今はいい返事は聞けていない。

 いつきさん曰く「今は迷っているだけです。あと少しですよ……ふふふ」と言っていたので、心配はないだろう。

 

 僕としても狩りばかりしているわけにはいかないので、いつきさんのお店を手伝ったり、冒険者ギルド内のお仕事を手伝ったりもしている。

 

 一週間のうち、六日間は狩りや手伝いなどをしているが、一日はオフの日だ。

 この日は、お店以外は全員お休みなので、店番に選ばれている人以外は基本自由だ。


 僕の場合、オフの日は人が少ない時間に冒険者ギルドへ行き、本屋さんで買ってきた魔物関連の本を読む。冒険者ギルドには無料コーヒーがあるのがありがたい。

 今日も、人が少ないお昼前を狙って冒険者ギルドに行く。

 


 冒険者ギルドに入り、コーヒーを淹れていると、勇者専用の受付からラビさんが声をかけてくる。


「みつきさん、今日はオフですか」

「うん。この時間は空いていていいね。今日はバトスさん達はいないの? それとも、また地下訓練場?」

「はい、今はクレイザーさんを鍛えています」


 バトスさんの主な仕事は、下位ランクの冒険者を鍛える事らしい。

 僕も一度だけバトスさんの訓練を手伝った事があるけど、下位ランクの人達にあの訓練は過酷だと思う。でも、じいちゃんの特訓を受けてきた僕やバトスさん達からすれば、めちゃくちゃ楽なんだけどね。

 バトスさんの話では、ある程度鍛えきったら、魔大陸のゴブリンと戦わせるらしい。危険だろうけど、強くなるためには仕方が無いと思う。

 クレイザーは、バトスさんに憧れているらしくバトスさんのオフの時に鍛えて貰っているそうだ。最初は、バトスさんを休ませてあげなよ、と思ったけど、バトスさんもクレイザーを鍛えるのが楽しいらしい。


 僕がそんな事を考えて本を読んでいると、ラビさんが僕の隣でコーヒーを飲みだす。


「今日は夕方までゆっくりするんですか?」

「うーん。お昼になったら帰るよ。まだ、魔力の使い方に慣れてないからね」

「魔力ですか……。町中でのあの話聞きましたよ」

「う、うん」


 僕のゼロの魔力の特訓事態は(・・・)順調だ。

 でも、まだ意識的に魔力を調整は出来ないのでいつきさんから、外で魔力を使う事は禁止されている。その理由は、常に最大魔力を放出してしまうので、魔力放出の余波で周りに被害が出てしまうのだ。前に、町中で魔力を放出してしまっていつきさんに怒られた事がある。ラビさんが言っているのはこの事だ。


 お昼の時間を過ぎると冒険者達がチラホラと帰って来たので、僕はラビさんに挨拶して冒険者ギルドを出ていく。その時に何人かから声をかけられた。

 一時は冒険者達と険悪なムードになっていたけど、今は普通に戻っている。というよりも、仕事が出来なくなった分、僕達の方が損をしているんだけどね。



 特訓の為にお店に帰ると、嫌そうな顔で店番をしているよいやみがいる。


「よいやみ、お客さんがいる時にそんな顔をしていたら、まーた、いつきさんに怒られるよ」

「そうは言うっすけど、あしの時は変な客が多いんすよ。前に客を殴ったらいつきに怒られたんすけど、殴ってくれとか言う変態が来るんすよね。勘弁してほしいっす」

「アレは殴って怒られたんじゃなくて、おしりを触られた事で半殺しにした挙句に魔大陸の川に投げ捨てようとした事が、やりすぎだって怒られたんじゃなかったっけ?」

「セクハラは万死に値するっす。あしは間違ってないっす」


 確かに間違っていないとは思うけど、川に投げ捨てたら完全に死ぬからね。

 まぁ、よいやみの気持ちも分かるけどね。


「みつき、店番代わってくれっす」

「嫌だよ。そんな事したら僕が怒られるじゃんか」

「うー。代わってくれても罰は当たらんと思うっす。みつきはこれからお昼っすか?」

「うーん。今から軽くご飯食べて、ゼロの魔力の特訓かな」

「そうっすか。ゼロの魔力っすけど、いつ頃完成しそうっすか?」

「わかんないよ」

「完成したら模擬戦するっすよ。約束っす」

「分かったよ」


 僕のゼロの魔力の完成を一番楽しみにしているのは実はよいやみだ。

 よいやみは、全開魔力の特訓をしたいみたいでその相手がいないとよく愚痴っている。

 今の僕では全開魔力のよいやみには全く手も足も出ないし、それはバトスさんでも同じだ。だから、今現在アロン王国で最強のなのはよいやみだ。


 

 僕は部屋に戻って軽くご飯を食べた後、地下の模擬戦室へと足を運ぶ。

 そして二時間ほどゼロの魔力の特訓をした後、部屋に戻ってお昼寝をする事にした。

 すると部屋の片隅に置いてあった、ワズの聖剣であるフレースヴェルグが光っていた。


「何あれ?」


 持ち帰ったあの日からずっと部屋の隅に置いてあるのだが、光っているのは初めてだ。

 何か気味が悪いのでアルテミスに光る原因を聞いてみる。しかし、理由は分からないそうだ。

 このまま光られても困るので横にアルテミスを置き布をかけておく。

 

 よし、これで光っても気にならないから大丈夫だ。


「ゆーちゃんはまだ帰ってきていないか」


 ゆーちゃんはまだ幼いのでクエストを一人で受ける事が出来ない。とはいえ、一人で狩りに行かせるのも危険なので、やる事のないゆーちゃんは毎日魔大陸の魔法具屋さんに行っている。なんでも魔法の特訓と研究をしているそうだ。

 最近は、あの凶悪な《ひーる》を自分の望む形で効果を出す事が出来るようになったと言っていた。それと一番驚いたのが、僕達を守る為に結界魔法を覚えてきたそうだ。

 あんなに小さいのに僕達の事を考えてくれるなんて、本当に良い子だ。


 僕はシャワーを浴びた後、ベッドに寝転がって最近買った魔物の本を読んで寝る事にする。

 魔物に殺されない為には、魔物の本を読んで研究するのが一番だ。研究ノートも五冊を超えたし、そろそろ新しいのを買って来なきゃいけない。

 そんな事を考えていると、程よい眠気に襲われ、そのまま眠ってしまう。



 あれ?

 この白い場所は……。


 アルテミスにたまに会う場所?

 そう思っていたら、目の前にアルテミスが立っていた。


『みつき、フレースヴェルグが光っていた理由がわかりました』

「そうなの?」

『はい。本人(・・)が話をしたいそうです』

「は? 本人!?」


 僕が驚いていると、目の前に大きな鷲が飛んでくる。

 何、この大きな鳥!?


『こうして話をするのは初めてだな』

「え?」


 耳で聞こえる声じゃなく、起きている時にアルテミスと話している時みたいに脳に直接声が響いてくる。

 これって……。


「フレースヴェルグなの?」

『そうだ。お前とは一度ちゃんと話をしておきたくてな』

「そうだね。いや、それは別にいいんだけど、聖剣って神様が入っているモノなの!?」


 僕としてはそこが一番気になる。

 目の前の神々しい鳥を見れば、フレースヴェルグも神の類だという事は分かる。

 しかし、フレースヴェルグの答えは違っていた。


『みつき、まずは神について話す必要があるな。神というのは一人ではない。神族という種族がいると考えてくれればいい。アルテミスは神族だ、だがオレは神族ではなく神獣と呼ばれる種族だ』

「神獣?」

『神獣と言っても、魔物の神獣種とは違うぞ』

「神獣種って何? 聞いた事は無いよ?」


 魔物にはランクがあって、下から雑魚・初級・中級・上級・王種だけのはずだ。神獣種って何だろう?


『お前だけではなく、この世界の殆ど者が上級魔物が最強であると思っているかもしれん。いや、あの魔大陸出身のお前ならば王種をも知っているかもしれんが、実はそのさらに上のランクの魔物がいる。それが神獣種、そして最強の魔物、最強種がいる』


 何それ? 王種だけでも下手したら国一つが滅びるかもしれないのに、その上の魔物がいるの!?


『あぁ、話が逸れてしまったな。お前が疑問に思っている、聖剣に神が入っているか? という話だが、答えは入っていないというのが正しい』

「え? じゃあ、アルテミスとあんたは?」

『アルテミスは……これは近いうちにアルテミスが話すだろう。オレの場合は、間違った使われ方をしたが為に、自我に目覚めたようだ。そもそも、聖剣に特別な力などはない』

「ちょっと待って、じゃあ、フレースヴェルグは魔剣なの?」

『うーむ。そこを説明するのは難しくてな……聖剣というのは、神の名を持つ事は知っているな。実はそこが一番の問題でな、神の名を持つ聖剣が勇者や力ある者に長く使われていると、その神と似た力を持つ事がある。オレの場合は『魂の強化』『神眼』の二つの力が本体の力なのだが、似た力で魂を操るという能力に目覚めた』


 ん? 操る?

 ワズは魂を奪い取るって……。


『だから言っただろう? 間違った使われ方をしたと……さて、話を戻すが、オレはお前と話がしたいと思っていた』

「ふーん、なんで?」

『そうだな。大本な理由はアルテミスから口止めされているので言えんが、オレ自身がお前を気に入ったのも理由だ。それでお前の力になりたくてな』

「うーん。気持ちは嬉しいけど、僕は二刀流なんて出来ないよ」

『そうか……なら、お前の戦いの邪魔にならない形になろう。一応言うが、自我に目覚めた以上、オレが認めた者以外には装備は出来んからな』

「え? そうなの?」

『あぁ、オレが認めた者以外には力は貸さんという、意思表示のようなモノだ。あ、お前の仲間には力を貸すから安心しろ』

「え? うん。ありがとう」

『じゃあ、俺は今から形を変える……じゃあな』


 ここで僕は目を覚ます。


「うーん。夢だったのかな? フレースヴェルグまで話し出すなんて……ないよね」


 窓の外は夕方になろうとしていた。僕の隣でいつの間にか帰ってきていた、ゆーちゃんが寝ていた。

 僕はゆーちゃんの頭を撫でながら、アルテミスとフレースヴェルグにかかっていた布を見てみる。


 ん?

 アレ? 

 剣が一本しかない?


 確かアルテミスと一緒に立てかけていたはずだ。

 僕はゆっくり布をどけてみる。

 アルテミスの横には、大きな鷲のレリーフが施された腕輪が置いてあった。


「夢じゃなかったんだ……」


 僕は、腕輪を左腕に身に着ける。

 うん。しっくりくるな……。


 

 その日の晩御飯の時に、いつきさんにフレーズヴェルグの事を説明すると、なぜか怒られた。

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