表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/140

2話 みつき、絡まれる

 ギルドが用意してくれた部屋は結構広く、二段ベッドが二個配置されて、テーブルと4つの椅子と箪笥のある生活するのには困らないような四人部屋だった。

 僕は高いところが嫌いなので、二段ベッドの下の方にもぐりこんだ。

 疲れているつもりはなかったけど、実際は疲れていたようで、お布団に入るとすぐに眠りに付けたみたいだ。寝起きもスッキリ。


 僕は目を擦りながら部屋を見回す。

 今、何時だろう? この部屋には時計がない。そういえば冒険者ギルドにも時計は無かった。

 時計が無いと何時かもわからない。不便だ。


 僕は身だしなみを整えて、階段を下りていく。


 階段を下りた先は冒険者ギルドのロビーで、冒険者達が掲示板を見ている。

 クエストは、冒険者ギルドのロビーに取り付けてあった掲示板に張り付けてあるようだ。

 冒険者達はクエストが書かれた紙を剥がして、受付に持っていくというシステムの様だ。

 ということは、良いクエストは早い者勝ちということか。だから、昨日よりも人が多いんだ。確かに夕方ではいいクエストは残っていないだろうしね。


 そういえば、あいつ等はいるのかな?

 僕は流れ星の流星(笑)を探す。今日はいないようだね。

 勇者専用の受付は誰もいない。ラビさんはまだ出勤してきていないのかな? それとも、職員専用の部屋で寝泊りしているんだろうか?

 僕は、ラビさんを探す。

 すると、後ろから声をかけられた。


「みつきさん。おはようございます」

「おはよう、ラビさん」


 どうやら、今出勤してきたようだ。


「ラビさん。冒険者ギルドには時計ってないの? 不便だよ」

「みつきさん。何を言っているんですか? 魔法具である時計は高価な物なんですよ? そんなものが個室にあるわけないじゃないですか。冒険者ギルドにだって、受付の中か、ギルマスの部屋にしかないのに」


 え? 時計が高価? そんな馬鹿な。僕の村では一家に一つだったよ?

 僕が困惑していると、ラビさんは封筒と一本の剣を受付カウンターに置いた。


「これは?」

「支度金として30万ルーツと支給品のロングソードです」


 へぇ。剣を支給してくれるんだ。僕はロングソード手に取り抜いてみる。

 新品の様だ。

 中古でも良いと思っていたんだけど、ちゃんと新品を用意してくれるんだね。


「あ、もし剣が重いというのであれば、ショートソードに交換しますが、どうします?」

「え? 全然重くないよ? 町で練習していた剣はもっと重かったから」


 僕は護身術程度に剣を習っているのだ。

 剣の師匠は、アリ姉の親友のハインさん。

 吸血姫という種族らしくて、真っ赤なドレスが似合う女性だ。

 ハインさんに剣技を習っていなかったら、じいちゃんとの喧嘩がいつも一方的にやられていたかもしれない。

 それに、魔物を狩ることもできなかっただろう。ハインさんには本当に感謝しかない。


「うん。良い剣だね。で? 今日からクエストをこなしていけばいいのかな?」

「いえ。みつきさんは特殊な転移をしているので、今日は日用品や服などを買う為に、王都を探索でもしてきてください」

「探索?」

「はい。まずは自分の足で町を歩いて、アロン王国首都ナイトハルトを楽しんできてください」


 探索か……確かに大事だよね。

 まずは服をそろえなきゃ。それから、薬草なんかの回復アイテム。これは必須だ。

 いつ、凶悪な魔物が現れるかもしれない。備えあれば憂いなしなのだ。


 僕は冒険者ギルドを出て、大きな噴水のある広場へと出た。

 ラビさんから、この広場にはナイトハルトの町の案内板があると聞いたので、それを見に来たのだ。

 

「今はこの場所で……ギルドはこの位置……。服屋と道具屋はどこだろう?」

「道具屋はここだ」

「え?」

「ん?」


 後ろから声がして僕は振り返る。そこにはおじさんが立っていた。

 アレ? この人は?

 おじさんは僕の顔をビックリした顔で見ている。


「み、みつきの嬢ちゃんか!!?」

「ゲンさん!? どうしてって、あぁ。ゲンさんは、王都から来ていると言っていたよね?」


 この人はゲンさん。

 絶望の村までいろいろと物資を届けては、村の特産である上薬草を買い付けていった行商人さんだ。

 魔大陸には結界が張ってあるとリリアンさんが言っていたけど、ゲンさんはどうやって魔大陸に来ていたんだろう?


「ゲンさん。魔大陸にはどうやって来ていたの? 結界があると聞いたんだけど?」

「あぁ。結界な。それは企業秘密だ」


 教えてくれなかったか。

 もし、村に簡単に行く方法があれば、帰る事も可能だったんだけどね。


「ゲンさんてさ。この町でお店はやってないの?」


 ゲンさんは、王都全体の地図の北門近くのお店を指差す。


「ここが俺の店だ。今は娘が店を仕切っている。色々なものを扱っているから、みつきの嬢ちゃんが望む物もあると思う。サービスするから来てくれよ」

「うん。わかった。今日のお昼過ぎにでも顔を出すよ」

「そうか! じゃあ、待っているぞ!!」


 ゲンさんは笑いながら、去っていった。

 こんな遠くの町で知り合いに会えるとは思わなかったよ。しかし、僕がここにいる理由は聞かなかったなぁ。


 本当ならばゲンさんと一緒にお店に行きたかったのだが、僕にはやらなくてはいけないことがある。

 僕はギルドから少し離れた細い路地を進む。

 ゲンさんのお店に行こうと思ったら、大通りを通ってお城を回っていけば辿り着く。こんなに細い路地を通る必要はない。

 だけど、僕はここを進む理由があるのだ。


「出てきたら?」


 僕はある程度進み、立ち止まった後振り返ってそう呟く。

 冒険者ギルドを出た時からずっと見られていたんだよね。

 僕は生体感知を使う。

 生体感知とは、人間であれば必ず持つ『生気』を感知する魔法の一種だ。当然、生気を持たない不死系の魔物は感知できない。

 これは魔力を使わなくても使えるので、魔力の無い僕でも使える便利な技術だ。

 生体感知のおかげで、隠れている三人の場所を特定できる。

 僕は、隠れている場所を指差す。


「あのさぁ……いるのわかってるから」


 建物の影から、昨日絡んできた流れ星の流星(笑)が出てくる。


「な、何故気付いた?」

「生体感知って魔法を持っているから。で、何? 流れ星の流星(笑)さん達」

「お、お前は俺達を馬鹿にした。ここで痛い目に合ってもらう!!」


 三人は口角を釣り上げる。

 きっと三人ならば僕を痛めつけることができると思っているのだろう。

 だけど、今は僕も武器を持っているから反撃できるんだよ?


「泣いて許しを請いてみろよ!!」


 本当に声だけは大きいなぁ。

 わざわざ、人気の少ない場所で襲うつもりだったくせに、大声で気付かれるよ? 本当に頭が弱いなぁ。

 僕はわざとらしく溜息を吐いてあげる。


「ば、馬鹿にしてんのか!? 俺達はゴールドランクだぞ!!」


 ゴールドランクかぁ……。ビビらせているだけかな?


「御託は良いよ。襲ってくるのならさっさと来なよ。来ないのなら、こっちから行くよ?」


 僕は思いっきり地面を蹴る。

 懐に入ってしまえば、重戦士は何もできないのを知っている。それにあの鎧、脆そうだ。


 バキィ!!


 僕の拳が、重戦士の腹にめり込む。脆そうな鉄で作られた鎧は砕けていた。

 重戦士はその場に崩れ落ちる。

 おいおい……。その程度のパンチでやられてたら、ゴブリンにすら勝てないぞ?

 少なくとも、ゴブリンならこの程度の攻撃に耐えられるし、あの程度のスピードならば避けてしまう。

 でも、こいつは避けるどころか防御すらできなかった。これでゴールドランク? どういうことだろうか? 

 まぁ、いいか。


「はい。まず一人」

「な!? だ、ダスペの重鎧を砕いた? ば、馬鹿な……」

「あまり良い鉄を使ってないね。砕けかけてたんじゃない?」

「そ、そんなわけあるかぁ!! 三日前に新調したばかりだぞ!!?」


 三日前に新調って……。馬鹿だから騙されたね? 僕はちょっとだけ同情してしまった。

 あ、魔術師が詠唱している。

 ……え? マジ?

 僕は魔術師を狙って、再び踏み込む。


「次はあんた!!」

「ぎゃあ!!」


 魔術師は鎧を着ていないから、軽く殴ってあげた。詠唱を止めるくらいだから威力は抑えたんだけど、ちょっと痛いくらいの攻撃なのに魔術師は泡を吹いて倒れる。

 ちょっ……。そんな弱い攻撃で気絶するの!? どれだけ、貧弱な体をしているの!?

 そもそも詠唱中に、ジッとしているなんて馬鹿のやることだよ?


「ま、マーゴ!!」


 いくらなんでも弱すぎない?

 あ!!

 はは~ん。僕にはすべての謎が解けたぞ?


「ねぇ。あんた達がゴールドランクなんて嘘でしょう? どんな不正をしてそのランクを手に入れたの?」

「う、嘘じゃない!! 馬鹿にするな!!」


 僕の言葉に剣士が顔を真っ赤にする。そして何かに気付いたような顔になり、顔が青褪める。


「てめぇ魔族だな!! 正体を現せ!!」


 え? 魔族? 何を言っているの?

 もしかして、自分が勝てない理由を魔族だからという理由にしたいってこと? 僕は人間だよ?

 僕は剣士の持つ剣をロングソードで斬る。


「な!? お、俺の剣!! ぎゃあああああ!!」


 剣を斬られて驚いている剣士の顔を、思いっきり蹴り上げる。

 あ! 今スカートだった。

 まぁ、蹴った瞬間に気絶したっぽいし……見られて無さそうだし……いいか。

 しかし剣を斬られたくらいで、いちいち驚いちゃダメだよ? そんなことじゃ魔大陸では生きていけないよ?


 僕は気絶している、流れ星の流星(笑)を放置して、ゲンさんのお店へと向かった。


ブックマークの登録、評価、ありがとうございます。

 少しでも面白いや続きが気になるという方がいれば幸いです。

よろしければ、ブックマークの登録、評価をよろしくお願いします。

他にも連載していますのでよろしくお願いします。

 旧・クジ引き  https://ncode.syosetu.com/n2043en/ 連載凍結中 

 親友が…… https://ncode.syosetu.com/n1660ez/



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] >「ここが俺の店だ。今は娘が店を仕切っている。色々なものを扱っているから、みつきの嬢ちゃんが望む【者】もあると思う。サービスするから来てくれよ」 人身売買!?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ