1話 勇者専用受付
新章です。
かなり雑でしたので、ちょっと書き直したり書き足したりしました。
リリアンさんに、逃げしてもらえないと思った僕は、大人しく従う事にした。
そうだ。良い事を思いついた。
冒険者になって、地味な仕事だけやればいいんだ。
僕がひそかに決意していると、リリアンさんが僕の肩を叩く。
「どうしたの? ボーっとして」
「何でもないよ」
危ない、危ない。
リリアンさんは、僕を過大評価しているようだし、無理難題を言ってくるかもしれない。
「みつきちゃんにはこれから勇者専用の受付に行ってもらって、勇者としての登録をしてもらう事になるわ」
「勇者専用? そんなものがあるなんて……。僕は一般の冒険者でいいよ」
僕は、引きつった笑顔でそう答える。
何が悲しくて、勇者になんかにならなきゃいけないのか……。
しかし、リリアンさんは笑顔を返してくる。
「だ~め。みつきちゃんには勇者として頑張ってもらわないと」
「で、でも……」
クジ引きで勇者を選ぶ以上、僕以外にも勇者がいるはずだ。
別に僕が頑張らなくても、他の勇者が頑張ればいい。
「実はね。勇者というのは冒険者にあまり好かれていないのよ」
何ですと?
それって、僕も嫌われるんじゃないの? そんなの嫌なんだけど……。
「クジ引きで勇者を選ぶ以上、良い勇者と悪い勇者がいるわ」
悪い勇者……。その時点でそいつは勇者ではないような気がするけど、面倒な事になりそうなので言わないでおこう。
「その勇者が、冒険者とよく問題を起こすので、受付そのものを分けたのよ」
成る程。
しかし、クジで選ばれた勇者は、自分が特別とでも思うのだろうか?
僕からすれば、あんな運任せなモノで選ばれて特別とかアホじゃないの? て感じだけどね。
「……みつきちゃんには、担当の受付が付くわ」
し、しまった。話を聞いてなかった。
僕の目の前に、眼鏡をかけた、青い髪の毛でショートヘアの女性が立っていた。
ふむ。体形は、程よい胸のスレンダーな人だね。耳の横当たりのはねた髪の毛が特徴だね。
っていうか、この人は誰? もしかして、自己紹介終わってる?
僕が不安そうにしていると、リリアンさんがその女の人に自己紹介するように言っている。
良かった。自己紹介はまだだったんだね。
「ラビです。よろしくお願いします!!」
「あ、お願いします。僕はみつきです。ラビさんは何歳?」
「え? 私は18歳です」
僕と2歳しか変わらないのか。
僕は自分の姿を思い浮かべる。
……。何故、僕はこんなに小さいのだろうか……。
「じゃあ、ラビちゃん。みつきちゃんを勇者専用受付まで、案内してあげて」
「分かりました!!」
ラビさんは、元気だなぁ~。
元気と言えば、幼馴染のエリザは元気かなぁ……。
僕達は、冒険者ギルドの玄関口であるロビーにでる。
僕とラビさんが、受付から出てくると、冒険者達が僕を一斉に見てくる。
いや、ラビさんを見ているのかな?
「見られているね」
「そうですね。受付から出てくるという事は、問題を起こした冒険者か、新たに選ばれた勇者だけですからね」
と、いう事は、ここにいる冒険者達は、勇者である僕を見ているという事になる。
嫌な目だなぁ……。
僕はついつい目を逸らす。
「みつきさん。選ばれた勇者なんですから、少しは堂々として良いんですよ?」
ラビさんが恐ろしい事を言ってくる。
そんな事したら、冒険者達から袋叩きにされるじゃないか。そんなの嫌だ。
あ! そうだ。聞きたかった事があるんだ。
「勇者というのは、どれほどの頻度で選ばれるの?」
というよりも、この国に勇者は何人いるんだろうか。
そもそも、この場に勇者はいるんだろうか?
「そうですねぇ。私が冒険者ギルドに入所して、二年ですけど、主に一年に二人なら多いほうですかね」
「そう。今年はもう一人選ばれたの?」
同期の勇者という事になるので、その人に勇者としてのお仕事を押し付けて、僕は簡単なお仕事だけをしておこう。
しかし、ラビさんの口からは非情な言葉が聞こえてきた。
「いえ、今年はみつきさんだけですよ」
ぼ、僕の計画が一瞬で崩れてしまった。
「みつきさん。こっちですよ」
僕が項垂れているのを無視して、ラビさんは受付の端の方に歩いて行く。
ここが勇者専用受付か。
隅っこに置かれているけど、「勇者様の受付なのだから真ん中にしろ!!」と言う、頭のおかしい勇者はいないのだろうか。
いないのらそれでもいいんだけど。
あ! 僕は目立ちたくないから、ここでいいよ?
僕が、いろいろ考えていると、ラビさんが、受付カウンターの中に移動していて、書類を僕に渡してくる。
「ここに、名前とランクと職業を書いて下さい」
「ねぇ。僕は、まだ勇者になると決めていないんだけど……」
ささやかな抵抗をしておこう。
きっと、あの魔宝玉の称号が変わっている事だろう……。今度は『無駄な抵抗をする勇者』とかね。
「みつきさんが嫌がるのは仕方ありませんが、リリアンさんに一度目を付けられたら逃げられませんよ?」
「何それ、酷い!!」
逃げる事は不可能っと……。まぁ、良いけどね。
弱い魔物くらいなら、狩る事も出来るし、薬草採取くらいなら簡単だと思うし。
「そう言えば、僕は何の用意もなしに、ここに連れてこられたから、服もこれだけだし、寝る所もないんだけど?」
「みつきさん。リリアンさんの説明聞いてなかったんですか?」
し、しまった!!
僕が話を聞いてない時に説明してたのか!?
ラビさんが呆れているじゃないか!?
「あはは。もう一度説明しますね。それらを用意する支度金は、冒険者ギルドの方で用意させてもらいます。それと、寝床の事ですが、冒険者ギルドの二階より上は、冒険者や職員達の寄宿舎になっていますから、寝る部屋もちゃんと用意できてますよ」
「ちょっと待って。こんな荒くれ者ばかりの冒険者達と一緒に寝るのは不安なんだけど?」
こんなかわいい僕が襲われたらどうする……。はい。調子に乗ってごめんなさい。
「大丈夫ですよ。ちゃんと個室ですし、本人しか入れないように魔法具で制御されていますから」
それは凄い。それなら安心だ。
僕が手続きをしていると、後ろから笑い声が聞こえてきた。
「ぎゃはははははははは!!!」
うるさいなぁ。
僕が振り返ると、どうやら僕を見て笑っているようだ。
「なに?」
アホそうな顔の奴だ。昔、村を襲って来た馬鹿な魔族みたいな顔をしている。
「お前みたいなちんちくりんを誰が襲うんだよ!!」
「お嬢ちゃん。自意識過剰じゃないのか!?」
コイツラハイマナンテイッタ?
「ちょっと、お二人共」
「ラビさん。このアホ面共は何?」
「あぁん? 俺達を知らねぇのか? 俺達は『流れ星の流星』!! 俺はリーダーのメーチ様だ!!」
な、流れ星の流星? マジか……。
僕が絶望した顔をしていると、流れ星の流星(笑)は下品な顔で笑う。
い、いや。別に怖くなったわけじゃないからね? いや、ある意味怖いけどさ……。
「あ、はい。あんた達の頭が可哀想な事は良く分かった……」
こんな奴等にムキになるのも、大人げないな。……小さいけど。
「何!!? 貴様!! 俺達を馬鹿にしているのか!?」
え? こいつらまさか……。僕の言った意味を分かってないの!?
しょうがないなぁ……。ちゃんと教えてあげるか。
「だって、流れ星も流星も同じ意味でしょ? 同じ言葉をなぜ二回も言うの? それに気づいていないんだから、頭が可哀想でしょ?」
「ぐっ……。う、うるさい!!」
あ、自覚はしてたんだ。
「うるさいのは、あんた達でしょ? 僕は、手続きで忙しいから、あっち行ってね」
僕は、流れ星の流星(笑)を無視して、受付手続きを再開する。
「き、貴様!! しょ、勝負だ!!」
はぁ? 何言ってんの?
こいつ冒険者でしょ?
「勝負って、僕は丸腰だよ? 冒険者が丸腰に喧嘩売って楽しいの? それで何を得られるの?」
「ぐぬぬ……」
流れ星の流星(笑)は悔しそうに外に出ていく。
こんな小娘に言い負かされるなよ……。情けない。
「みつきさん。村娘と言ってた割には、度胸がありますね」
僕とアイツの会話を驚いた顔で見ていたラビさんが、小さい声で聞いてきた。
「え? だって、あいつ等よりも、うちの村のお爺さんの方が強そうだもん」
「お爺さんの方が?」
そう考えたら、うちの村のご老体達は、ここの冒険者よりも何倍も強そうだった。
冒険者の基準が良く分からないな……。
「それよりも、これからどうすればいいのか、説明をお願いしたいんだけど」
僕がそう言うと、ラビさんは慌てて手続きの続きをしてくれる。
「今日は王都に来たばかりなので、疲れているでしょうから、説明は明日にしましょう。今日はゆっくり休んでください」
確かに、今日はいろいろな事があった……。
疲れてはいないけど、休みたいのは確かだね。
「これ、部屋の鍵です」
「ありがとう」
僕は、カギに書いてあった部屋に行き、ちょっと寝るには早い時間だけど、寝る事にした。
みつきの性格が、少しだけ変わっている気がしますが、基本は自信をあまり持てない子です。
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