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クジ引きで勇者に選ばれた村娘。後に女神となる。  作者: ふるか162号
二章 人魔王編

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14話 よいやみ……姫


「俺も話に参加させてもらうぜ」


 この人がこの国の国王『レオン=アロン』

 着ている服は王様らしく豪奢だけど、第一印象は普通のお兄さんといった雰囲気だ。

 王様は、オルテガさんと親しいらしく、軽い口調で挨拶をしている。

 バトスさんも座ったままの所を見ると、バトスさんとも親しいのかな?


 僕達四人は、立ち上がって頭を下げる。

 しかし、王様は「そんな堅っ苦しい事はしなくていいぜ」と笑うと、後ろの黒髪の青年から小言を言われていた。


「謁見の間じゃないんだから、気にする必要ねぇよ。オルテガ、もう少し詰めろ、俺が座れねぇ」 


 そう言って、王様は僕達の真正面に座る。黒髪の人は、座らず立ったままのようだ。


「さて、自己紹介をしておこうか。俺がこの国の国王。レオン=アロンだ。こっちの細目はシド、宰相をしている」


 後ろの男の人が宰相なのか。随分と若い宰相さんだ。

 アリ姉の所の宰相さんは、見た目もお爺ちゃんで威厳のある『ゼクス』さんだ。

 あ、ゼクスさんは最高指揮官という肩書だったかな?


 王様が、僕をジッと見ている。何を言われるんだろうか?


「お前が魔大陸から来たという勇者黒姫……みつきだな。思ったよりも小さい子だったんだな」

「あ、はい。初めまして」


 魔大陸から来た……というよりも、無理やり連れてこられたんだけど……。

 まぁ、今はその事は置いといて、思ったよりも小さいと言われたけど、どんなのを想像していたんだろうか……。

 

 しかし、緊張するな。

 僕は村娘だから、一国の王様とお話しする機会がないから仕方ないのだけど。

 

「ははは。他の王族にはきちんとした対応でいいと思うが、俺相手には別にかしこまらなくていいし、いっその事タメ口でも構わないぞ」


 いや、流石にそれは不味いだろう。

 僕はただの村娘で、しかも、アロン王国領(一応)の絶望の村出身だ。そんな小娘が自分の国の王族にタメ口は駄目だろう。

 僕が頑なに、首を縦に振らないのを見て、王様が少しだけ寂しそうな顔をする。


「今現在、大国の姫君とは仲良く話が出来ているのに、やはり異性の王族とは仲良くできないか……俺としては何百年ぶりのヒヒイロカネの勇者には、もっと気楽にして欲しいのだがな」


 何百年ぶりのヒヒイロカネの勇者と言われても、僕自身が望んだ事でもないし、そもそも、大国の姫君? そんな人と知り合いじゃないよ?

 もしかして、アリ姉の事?


「アリ姉は幼い頃から一緒にいるからであって、王族というより姉に近いから……」

「ん? アリ姉? あぁ、ゲンから聞いた魔大陸の王、魔王『アリス=ヴァイス』の事か。その事も含めて話があるのだが、俺が言っているのは違う人物だ」

「え? 違うの?」

「そう、それでいいんだよ。普通に話してくれると俺としても話しやすいんだ」

「あ、うん。じゃあ、出来るだけそうする。で、大国の姫君って誰の事?」


 僕が聞こうとすると、よいやみが「べ、別にそれはどうでも良いじゃないっすか」と止めてくる。

 確かに、大事なのは大国の姫君じゃなくて、人魔王の事だ。


「そうだね。あまり詮索するのは良くないね」


 僕が、頷くとよいやみはホッとした顔になる。なんでよいやみがホッとするんだ?

 僕がよいやみを見ていると、王様がよいやみを見て呆れた口調でこう話す。


「お前の隣にいる、よいやみ()の事だ」


 は?

 よ、よいやみ姫?


 僕はよいやみを見る。よいやみは顔を真っ青にしている。


「な、何を言っているっすか? あしは旅の武闘家、よいやみっす。名前は一緒っすけど、ガストの姫では決してないっす!!」


 ガストの姫!?

 王様はどこの姫君とまで言ってなかったよ!?

 そう言えば、よいやみはガストに詳しかった。


 ……。


 まさか、本当にガストのお姫様!?


「みつき!! あしの事を見てお姫様だと思うっすか!? こんな食い意地がはって、こんな口調のお姫様がいるわけないっすよね!!」


 よいやみが必死に僕に言い訳をしてくる。

 確かに、口調も性格も姫様っぽくはないけど、あ、顔は可愛いから、そこだけはお姫様っぽいとは思うけど……。

 でも、ここまで必死に否定されると、逆に怪しいんだけど……。


「ははは。レオン陛下もそんな勘違いをしないで欲しいっす。同じ名前だからってよく間違えられるんすよ!!」


 よいやみは必死だ。

 しかし、王様は溜息を吐き「いや、お前とは何度もあっているだろう? 俺が、一度見た顔を忘れないのは、各国の間でも有名のはずだが?」と、とどめを刺す。

 流石にこれ以上は言い逃れが出来なくなったのか、よいやみは何もしゃべる事が出来なくなる。

 ここで黙るという事は、よいやみは……。

 ここでゆーちゃんが追い打ちをかける。


「よいちゃんはおひめさま?」

「あ、あ、あ、あ……」


 よいやみの顔が真っ青になっている。

 完全に、よいやみが嘘をついているのは明白だな。


「えっと、よいやみ様?」

「止めるっす!! 気持ちが悪い!! みつきに様つけで呼ばれると鳥肌が立つっす!!」


 ひ、酷い!? 

 よいやみがお姫様だったら、身分の関係上『様』をつけないとダメと思っただけなのに。


「はぁ……バレてしまったっす。そうっすよ。あしは魔導大国ガストの第六王女のよいやみっす。でも、あしは王族から除籍されているので、もう王族じゃないっす。みつきもゆっきーも今まで通りの対応でいいっす。むしろそうして欲しいっす」


 いつきさんにそう言わないという事は、いつきさんは知っていた!?


「いつきさん……」

「知っていましたよ。口止めされてましたけど」

「いや、口止めを理由に脅されてたっす」


 流石いつきさん。王族だろうと容赦がない。


 しかし、王族から除籍か……。

 もしかして食費だけでお城の財源が圧迫して、追い出された?

 そうとしか思えない。

 

 そう考えたら、恐ろしいな……。よいやみの食べる量は……。


「みつき、何を考えているかは知らんっすけど、多分違うっすよ」


 ん? 否定された。


「俺もよいやみと呼び捨てさせてもらうぞ。よいやみ、お前は除籍と言うが、ガスト王はお前の心配ばかりしていたぞ? なんでも、一月に一度は顔を見せるという約束が守られていないとか、この間の世界会議でガスト王が愚痴ってたぞ?」

「親父は、いつまでも子離れが出来ないんすよ。確かに末っ子っすけど、あしはもう十九歳なんすから、放っておいて欲しいっす」


 いや、王族ならばそれは無理だろう。


「そ、そんな事よりも、今はティタンの事っすよ!!」


 あ、話を強制的に終わらせた。


「確かに、このままでは話が終わらんな」


 王様は、独自で調べた事を僕達に資料として渡してくれる。

 僕達の話し合いの報告書も、リリアンさんがいつの間にかまとめていたらしく、王様に渡していた。



 一通り、報告書を呼んだ王様が、バトスさんの肩に手を置き「お前達が無事でよかった。逃げ帰った事を恥と考えるなよ。いつも言っているが、生きて帰ってきてこその英雄だ」と励ましていた。

 そういう考えの人は好きだ。逆に、国の為に死んで来いという王様は嫌いだけど……。そう言えば、アリ姉も兵士が危険になるくらいならと、前線に出るような王だけど。

 まぁ、アリ姉はヴァイス魔国で一番強いんだけど……。


「しかし、バトスでも苦戦するとなると、これは一大事だよな……、本来はバトスでティタンを討伐してもらい、みつき達に残党狩りをしてもらう予定だったのだが……。これは、一筋縄ではいかなくなったかもな」


 そこまで考えていたんだね。

 そこでよいやみが「なんなら、あし達が乗り込むっすか? 最悪、ゆっきーの即死魔法もあるっすし、いつきのブラックホールですべてを吸い込むっていう反則技もあるっす。聖剣を持ったみつきも強力だし、あしもまだ本気を出してないっすからね」と自信満々に言い出すが、王様は余り良い顔をしない。


「これは俺の意見だから、最終的にはお前達が結論を出してくれればいいんだが、俺は魔大陸はアロン王国領でありながら、アロン王国領ではないと考えている」


 ん? どういう事だろう?

 僕が首を傾げていると、よいやみが一言「何百年も前に押し付けられた領土だからっすか?」と王様に尋ねる。

 そういえば、魔大陸がアロン領土になった理由は押し付けられたからだったね。

 でも、そんな事を今更考えるのは、なんでだろう?


「俺が考えているのは、押し付けられたからどうこう言う話じゃないんだ。魔大陸には『ヴァイス魔国』があるんだろ? みつき、ヴァイス魔国の事を詳しく教えてくれないか?」


 僕は、アリ姉の事とヴァイス魔国の事を説明する。

 勘違いされたくないのは、僕達の村は『絶望の村』と呼ばれているけど、村の誰も絶望していない。それどころか、アリ姉達、魔族とも仲良くしている。


「その話を聞いて、ますます黒姫一行(お前達)をティタン討伐に行かせるのに抵抗があるんだよ」

「なんで?」

「お前達の村、絶望の村を守ってきたのは、ヴァイス魔国であり、アロン王国ではない。それなのに都合のいい時だけ、頼るというのにどうも罪悪感を感じてな……」


 そういう事か……。

 でも、アリ姉はそんな事を気にもしないと思うんだけどな……。

 村長であるじいちゃんに至っては、僕が勇者になる事を喜んでいたみたいだし……。


「じゃあ、アリ姉に聞いてみようか? でも、そのためには、魔大陸に行く必要があるけど……」

「行ってくれるのか? お前に話したかった事はまさにその事なんだよ。俺としては、ヴァイス魔国と友好関係を結びたいと思ってるんだ。ここにいる、皆は知っていると思うが、俺は魔族を悪とは思っていない。だからこそ、話が出来るのならば話がしたいと思っていたんだ」


 そういう事なら、僕も協力できる。

 僕としては、アリ姉とこの国が仲良くなってくれた方が良いし。

 話が一段落したところで、ノックする音が聞こえてきた。


「入れ」


 オルテガさんがそう答えると、ラビさんが部屋に入ってきた。


「あ、あの……みつきさん、お客様です」

「え? 僕?」


 僕に客?

 この町での知り合いなんて、ここにいる人以外では、流れ星の流星とクレイザーくらいなんだけど……誰だろう?


「分かったよ。今行くよ」


 僕が立ち上がろうとすると、ラビさんが止めてくる。そのお客さんは、冒険者ギルドまで来ているらしく、ラビさんが部屋に案内して来た。


 少し待つと、ラビさんが女の人を連れてきた。僕はその人を見て、驚く事になった。


 どうして貴女(・・)がアロン王国にいるの!?


 その人は、ピンク色の長い髪の毛をツインテールにしている女性で、服装はメイド服……。

 ヴァイス魔国、準最強(・・・)の……。


「は、ハインさん!!?」

「久しぶりね。みつきちゃん」


 僕を尋ねて来たのは、僕の剣の師匠であり、アリ姉の親友兼右腕である吸血姫のハインさんだった。

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