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クジ引きで勇者に選ばれた村娘。後に女神となる。  作者: ふるか162号
二章 人魔王編

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13話 報告


 あれ? ここはどこだろう?

 

 僕達は、いつきさんのお店に転移してきたはずだ。

 でも、いつきさんのお店の中で、こんな部屋は見た事が無い。いつきさんが転送失敗するとは思えないし。

 まぁ、いつきさん達は、すぐに部屋を出ようとする。


「いつきさん、空気が重いし、嫌な感じのするんだけど、ここはどこ?」

「ここは、うちの店の地下に当たる部分ですよ」


 地下? お店の地下にこんな部屋があったんだ。

 しかし、この部屋は不気味だ。

 この部屋には色々な物が置いてあるけど、どれも直視しちゃダメと、本能が告げている気がする。


「皆さん、この部屋のモノは触らない方が良いですよ。下手をしなくても呪われ(・・・)ますよ。実際に、ここにある商品(・・)は全て呪われていますから」


 呪いの商品!?

 お店にそんな危険な物があったの!?

 でも、いつきさんは今商品と言っていた。こんな物を売るの? いや、そもそも売れるのか? いや、売れたとしても、いいのか!?


「こんな危険な物が売れるんすか?」

「売れますよ。呪術に使ったりと需要が結構あるんですよ。怪しい人が良く買いに来ますよ」


 いや、怪しいのなら、売っちゃダメでしょう。

 でもいつきさんは「売れた後のモノで誰がどうなろうと責任は持てないですし、死につながる呪いをかける人には呪詛返しが来るように、調整(・・)して売っていますから」と笑顔で答える。殆ど詐欺まがいだと思うのは、僕だけだろうか?



「さて、遺体があるので、こんな所に転移して来たわけですが、とはいえ、持ち歩くのは嫌ですから、とりあえず死体をここに置いておいて、少し休んでから、冒険者ギルドに報告に行きましょう」


 このまま放置!?

 こいつが復活したら、また、悪さをすると思うんだけど……。


「もし、休憩中に生き返れば、よいやみさんに殴ってもらい、言う事を聞かせればいいだけですし、生き返らなければ放置していればいいだけですし」

「こいつの監視は良いの?」

「大丈夫ですよ。もし、生き返ったとしても、ここの道具に呪われるだけでしょうから。まぁ、ここで監視に残りたいというのなら止めませんが?」


 そう言って、いつきさんは部屋を出ていく。ゆーちゃんもいつきさんについて行ったようだ。

 僕は周りを見る。

 

 禍々しい剣に、何かの封印が施されているツボ、真っ黒なインクで塗りつぶされた鏡など、明らかに触れたら痛い目を見るようなモノばかりだ。ここには、一秒でも長くいたくない。


「よし、気分が悪いから、さっさと出ようか」

「そうっすね」


 僕とよいやみの二人は頷き合って、仲良く部屋から出ていく。部屋の外には、いつきさんとゆーちゃんが一足先に待っていた。

 部屋を出た後、いつきさんが結界魔法の札を貼り、中からは開かないようにした。ちなみに、いつきさんならば、中からでも開けられるそうだ。



 少し自室で休憩をした後、僕達は冒険者ギルドへと報告するためにオルテガさんを訪ねた。

 僕達が冒険者ギルドに入ると、ラビさん達が慌てている様だった。


「ラビさん、忙しいの?」

「みつきさん!! お帰りなさい、実は……」


 どうやらバトスさん達もすでに帰還しているらしいのだが、バトスさんが負傷して帰って来たそうだ。今は、ルルさんが治療に当たっているらしい。

 この慌ただしさは、この国である英雄のバトスさんが負傷した事で、冒険者の間で「強力な魔物が出たのか!?」と不安になって、パニックを起している者が出ているだけだそうだ。


 バトスさん達は、人魔王の城への調査だったはずだ。

 もしかしたら、ティタンに遭遇して戦闘になってしまったのだろうか。

 よいやみの見解では、アインくらいの強さの相手なら、バトスさんは勝つ事が可能と言っていた。しかし、アインは聖剣を持っている。バトスさんが普通の剣だった場合はアインが勝つかもしれないとの事だ。

 そう考えれば、ティタンは強いのか?



 僕達が応接室で待っていると、オルテガさんと包帯姿が痛々しいバトスさんが入ってきた。


「すまんな。待たせて」

「まさか、こんなにみっともない姿を見せるとはな。俺もまだまだだな」


 バトスさんは、少し悔しそうに呟いた。

 話している感じ、怪我はそこまで酷くはなさそうだが、バトスさんが言うには、ルルさんが過剰に包帯などを巻いたらしい。ルルさんも僧侶なのに回復魔法は使えないのかな?

 僕が疑問に思っていると、いつきさんが回復魔法について教えてくれる。


「みつきさん、回復魔法はそこまで万能ではないんですよ。そもそも、回復魔法というのは、人間の再生能力を増大させる魔法ですから、完治にはそれなりの時間がかかるんです。それに、傷が深いと皮膚の表面だけがくっついているので、無茶をすれば、すぐに傷が開きますからね。黒姫一行(うち)には、ゆづきちゃんという反則まがいの治療法を持つ子がいますし、何より、お二人は滅多に怪我をしませんから、回復魔法の事を知らなくても仕方ないと言えば仕方ないのですが」


 いつきさんはバトスさんに「早く治して、前線に復帰してくださいね。今回はサービスです」と薬草を十枚ほど渡す。

 あんなサービス、僕達にはしてくれないのに……。


「私達は、仕入れ値で販売しているでしょう?」


 あ、はい。ごめんなさい。


「ははは。ありがたく受け取っておくよ」


 どうやら、回復魔法よりも、薬草の方が治りが早いそうだ。ちなみに回復魔法にも種類があって、中には傷を一瞬で治す魔法も存在するそうだ。

 しかし、その魔法は禁術に指定されているそうだ。理由としては、使える人がいれば、その人は神に等しい存在と言われ、各国が奪い合う事になるからだそうだ。



 リリアンさんが用意してくれたお茶を飲みながら、オルテガさんが僕達に報告を求めてきた。


「そうですね。今も塔は存在しますが、とりあえず、あの塔の中の魔物は可能な限り殲滅しました。首謀者も捕らえてあります。まぁ、今は死んでいますけど」

「殺しちまったのか? ゆづきに生き返らせるのか?」


 バトスさんは、ゆーちゃんに甦生魔法を使わせるのをあまりよく思っていないらしい。何故かと聞くと、「こんな幼い子に甦生魔法を使わせて、死への倫理観を無くさせてしまったらどうする?」と言っていた。

 バトスさんは、ゆーちゃんの事を心配している様なのだが、残念。すでにゆーちゃんには死への倫理観は無い。傷を治すのに、殺して生き返らせるという手段を取る子なんだよ。しかも笑顔でね。

 今回のフォズだって、逃がさないようにするために、躊躇いなく殺しちゃったし……。


「今回はゆづきちゃんの甦生魔法は使いません。どうやらフォズは、いえ、ティタンがと言った方が良いでしょうか、命を分け与える禁術を使っている様なのです。その魔法のせいで、フォズはいくつもの命を持っている様なのです」

「なんだと!? それで、今はフォズはどこに!?」

「今は私の店に置いてあります」

「復活したら大変だぞ!!」


 確かに、その心配はするよね。

 でもいつきさんは笑顔で「呪い部屋」と一言だけ話すと、オルテガさんは安心した顔になる。


「そうか、あの部屋で拘束か。ならば、安心だな」


 そうなの!?

 そもそも、オルテガさんもあの部屋を知っているの!?


 次に、いつきさんがオルテガさんに、あの研究室で手に入れた研究資料を渡す。

 オルテガさんとバトスさんは、その研究資料を見て、眉間にしわがいく。


「成る程、この研究資料は、王城()に報告しておいた方が良いな。城の研究職の連中に見せた方がよさそうだ。しかし、胸糞の悪い研究をしているものだな」

「そうですね。魔物変化症の薬の研究も書いてあります。あの薬がたまに市場に出るのがおかしいとは思っていましたが、ティタンが研究していたというのは驚きでした」


 オルテガさんはこの事を知っていたらしく、前王のティタンは、無敵の兵士を作るために、魔物変化症を研究していたそうだ。フォズがそれを引き継ぎ、合成獣(キメラ)を作っていたのだろう。

 研究資料にはリュウトの事も書いてあった。リュウトに薬を渡していたのは、フォズだったらしい。

 リュウトとフォズがつながっていたのならば、僕達の強さを知っていてもおかしくないだろう。あの、悪魔系のキメラの強さも納得がいく。


「オルテガさんはフォズを知っているのですか?」

「あぁ、ティタンの腹心の一人だった。バトスもあの四人(・・)の事は知っているだろう? お前達と戦った奴もそのうちの一人か?」


 ん? 今の話だと、バトスさんが戦ったのはティタンじゃないのかな?


「いや、違うな。セズとは戦ったんだが、アイツは何の問題も無かった。俺がアッサリ勝って、とどめを刺そうとしたときに現れた奴が桁外れに強かったんだ。俺達四人で戦っても逃げるので精一杯だった。そいつの事は、いままでに見た事が無い」


 今、話に出て来た『セズ』というのも、ティタンの腹心だったらしい。


 僕達が話をしていると、ノックの音が聞こえ、こちらが返事をする前にドアが開く。

 オルテガさんが注意をしようと立ち上がったのだが、入ってきた人物に驚き目が見開かれている。

 バトスさんも入ってきた人を見て驚いている。


「バトス、怪我をしたと聞いて話を聞きに来たぜ。リリアン、俺達にもお茶を用意してくれるか?」

「あ!! は、はい!!」


 リリアンさんは慌ててお茶を用意しに行く。

 二人の慌てようを見る限り、この人は偉い人なのだろうか?


 そんな事を考えていると、いつきさんの目が少しだけ鋭くなる。どうやら、後から入ってきた、黒髪で短髪の青年を睨んでいるようだ。知り合いかな?


「そんな目で見ないでくれますか? 強欲な聖女様」

「いえいえ、私は貴方が嫌いなだけですよ」


 いつきさんを聖女と知っている?

 もしかして教会関係の人? 

 それにしても、いつきさんがはっきり嫌っているのも珍しい、のかな?


「そんなところへ立っていないで、こちらへどうぞ、陛下」

「あぁ、別に陛下なんて他人行儀な呼び方をするなよ。俺達の仲だろ?」


 え? へ、陛下?

 この人が、アロン王国の王様!?


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