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クジ引きで勇者に選ばれた村娘。後に女神となる。  作者: ふるか162号
二章 人魔王編

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12話 魔将フォズ


 アインを見送った後、僕達は塔の三階に転移して来た。

 三階と言っても、実際はどこに飛ばされているか分からないのだが。

 この階は、今までの内部構造とは違い、昔読んだ絵本に出て来る研究所のような雰囲気を持つ場所だった。

 そう思っていたのは、僕だけではなくよいやみもこの階の光景を見て同じことを考えていたようだ。

 

「この光景、何やら懐かしい気がするっすね。来た事があるとか、そういうのではないんすけど」

「そうだね。確かに『チャーリー博士の愉快な日常』という絵本の博士の研究施設に似ているよね」

「そう、それっす」


 『チャーリー博士の愉快な日常』とは、幼児のむけの大人気シリーズの絵本だ。

 内容としては、チャーリー博士が自分の研究所で面白おかしく実験をして、そして最後には大爆発で終わるといった内容だ。

 僕も幼い頃、よく読んでいた。三階のこの光景は、まさしく、絵本に描かれていたチャーリー博士の研究所そのものだった。

 博士の研究室は、いろいろな実験サンプルが入ったカプセルが置いてあり、その中には博士のパートナーが入れられているのだ。今から考えたら、非常に考えさせられる内容の絵本だったのかと思うけどね。


「懐かしいっすね。あしも昔はよく読んだっすよ。立場(・・)的にあまり自由が効かなかったっすから、唯一の楽しみだったっすね」

「ん? よいやみの実家ってそんなに厳しかったの?」

「んぇ!? あ、あぁ。厳しかったんすよ」


 よいやみの挙動がおかしい。嫌な過去でもあったのかな?

 もしそうだとしたら、配慮に欠けた言動だったな。


「よいやみ、ごめんね」

「なんで謝るんすか?」


 僕達がそんなやり取りをしていると、いつきさんが何かに気付く。


「皆さん、カプセルの中を見てみてください」


 カプセルの中には、さっき戦ったようなキメラが何体も入っている。

 チャーリー博士のカプセルに入っている可愛らしいパートナーとはえらい違いだ。


「知ってますか? あの絵本にまつわる噂を」

「噂って?」

「あの話は実話を面白おかしく書いたと、一部の歴史研究者が言っています」

「え?」

「あの話のチャーリー博士というのは異世界から来た人物で、様々な研究をしていたという噂です。チャーリー博士が研究していた本当のモノはキメラだったとか……と、真偽はともかく、あまり子供に読み聞かせたくない内容ですね」


 いつきさんがそんな話をしだしたらかどうかは知らないが、カプセルの中のキメラ達が動き出す。


「よいやみ、動き出したよ」

「分かったっす」


 僕はアインから譲り受けたアルテミスを握る。

 これを持っていると、力があふれ出てくるようだ。


 いつきさんとゆーちゃんに下がってもらい、キメラが復活する前にカプセルごと斬りつける。

 すると、いとも簡単にカプセルが真っ二つになって、中のキメラが塵に変わる。


 流石、聖剣だ。

 斬れ味が段違いだ。


 これを見たよいやみも、拳に魔力を込めて、カプセルごと、キメラを仕留めだす。

 よいやみの打撃は強力で、闘気をインパクトの瞬間に放出する事で、キメラごと粉々にしていた。


 これは、僕も負けていられないな。


 僕達は、はり合うようにキメラを仕留め続ける。


 道中のキメラが入ったカプセルを塵に変えていく。

 どうやら、こいつ等は僕達の姿を確認してからじゃないと動き出さないようだ。

 仮に、こんなモノが研究所内を徘徊していたら、鬱陶しい事この上ない。


「みーちゃん、とびらがある」


 ゆーちゃんが指さした先には、塔に相応しくない扉がある。

 たしか、この扉も絵本に描いてあった扉だ。


 僕達は扉を蹴破る。

 扉の向こうでは、あの男が腕を組み、僕達を待ち構えていた。


「ようこそ、我が研究所へ」


 何がようこそだ。

 研究所内部は、絵本で見たまんまの博士の研究所だった。 


「我が名は、人魔王ティタン様の腹心、魔将フォズ様だ!!」


 人魔王ティタン?

 ティタン?


 その名前、どこかで聞いた事がある。


「ティタンとは、現国王レオン陛下の兄ですよね。レオン様に討たれたという」

「くははははは!! ティタン様が討たれた!? レオンが国王!? 馬鹿を言うな!!」


 フォズはいつきさんの話に激昂している。

 ここは情報を引き出す為に挑発をしてみようか。


「でも、愚王だったんでしょ? そのティタンってやつは」

「キサマ!! ティタン様になんて口を!! もう許さぬぞ!!」


 フォズは何かの装置のボタンを押す。

 すると中から、魔物変化症にかかったリュウトのような魔物が現れる。

 まさかとは思うが、人間を実験体にしていたのか?


「この魔物は、悪魔種の魔物を改造したキメラだ!! 今までの魔物とは強さの桁が違うぞ!!」


 悪魔種だって!?


 魔物には魔物ランクがあるのだが、悪魔種の魔物には知能がある為に、ランク以上の危険度があると言われている。


 しかも、それを改造? もしかして王種クラス(・・・・・)の強さがあるかもしれない。

 王種というのは、魔物ランクの中でも最強の魔物で、それ以上というのは僕は知らない。


「よいやみ!! こいつは今までのキメラと別格だ!!」

「そのようっすね」


「しね!!」


 僕達が構えると、ゆーちゃんが後ろからキメラに即死魔法を使う。しかし、キメラには効いていないのか、平然としていた。


 おかしい、知能がある以上、生きているという事だ。それにもかかわらず、即死魔法が効かない? やはり、改造の結果という事か?


「ざんねん。ゆーちゃんもみーちゃんたちのおてつだいしたいのに」


 んーーー!! ゆーちゃんが可愛すぎる。

 僕はゆーちゃんの頭を撫でる。


「焦らなくてもいいよ。少しずつ強くなっていけばいいんだよ。その時は僕達をお手伝いしてね」


 僕は、気休め程度にそう話した。

 実際、焦らなくてもゆーちゃんは既に役立っている。

 甦生魔法が簡単に使えるというだけで、前戦にいる僕達は安心感がある。とはいえ、甦生魔法は禁術なので、あまり使わせないように、僕達も無茶な事はしない。


「さて、二対一で卑怯だと思わないでね」

「行くっすよ」


 僕とよいやみは悪魔に攻撃を仕掛けるが、悪魔はたやすく攻撃をいなしてくる。

 僕達の攻撃パターンをまるで知っているかのように、攻撃を防ぐ。


 もしかして……。


「ははは!! こいつには、お前達の戦闘パターンを学習させているのだよ。スカルドラゴン、キメラ、そして勇者!! そいつらと戦った時のデータは揃っているのだ!!」


 成る程、これは思ったよりも厄介だ。

 でも、ここに来るまで、よいやみは本気(・・)を出していない。

 僕だって、今は聖剣がある。


 ここは、僕が良いところを見せよう。

 今まで以上に闘気を剣に乗せて……。


 聖剣が銀色に輝く。そして、これをあの悪魔にぶつける。


「よいやみ!!」


 よいやみは僕が何かをしようとしてる事に気付いて、一気に悪魔から離れる。

 

「いっけぇええええええ!!」


 僕は聖剣を振る。

 すると銀色の刃が悪魔へ迫る。

 悪魔は、これを避けようとするが、それ以上の速さで悪魔を襲う。悪魔は避けられないと思ったのか、これを弾こうとする。

 しかし、それが間違いだったのだろう。

 悪魔は上下に真っ二つになり、そのまま塵になった。


 悪魔の消失にフォズの目が飛び出るか? というくらいに見開かれている。顎も落ちそうだ。


「な、何という事だ……。ティタン様に用意してもらった悪魔種の魔物がこうも簡単にやられるとは……、貴様、一体何者だ!!」

「え? 勇者?」

「ふざけるな!! アロン王国には、バトス以上の勇者などいるはずもない!! この魔物ならバトスをも殺せたはずだ!!」


 いや、そうは言われても……。


「く、くそ!! こんな所で、殺されてたまるか!!」


 フォズは、転移魔法陣を起動させて、逃げようとする。

 転移魔法の発動が早くて、逃げられる!? と思った時「しね!!」とゆーちゃんが即死魔法を使う。

 すると、転移魔法陣の光が消えて、フォズがその場に崩れ落ちた。


 僕が確認の為にフォズに近付くと、フォズは既に死んでいた。


「みつきさん、フォズはいくつもの命を持っている可能性が高いです。拘束魔法で拘束しますので、離れていてください」


 いつきさんが使った魔法でフォズが拘束される。

 これで生き返っても、逃げられる事は無いだろう。もし、生き返らなかったら、ゆーちゃんが生き返らせるだけだ。


 僕達は研究室で研究結果の書かれた紙を何枚か持ち出し、いつきさんの転移魔法で、冒険者ギルドへと戻る事にした。


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