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クジ引きで勇者に選ばれた村娘。後に女神となる。  作者: ふるか162号
二章 人魔王編

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9話 合成獣

ブックマーク100件になりました。ありがとうございます。


 二階を探索し始めてから数時間が経った。

 この階の魔物はオークが大半を占めているのだが、たまにゴブリンやグールが出てくるようになった。

 オークやゴブリンは何の問題も無いのだが、問題はグールだった。

 僕はグールの腐敗臭が無いので、倒せるのだが、よいやみは最初、ポンコツだった。

 最初はいつきさんの後ろに隠れたりしていたのだが、いつきさんに怒られた後、足下に落ちている石を投げつけてグールを倒し始めた。


 必死に石を投げるよいやみを見て、落ちている石っころで魔物を倒せるのか? と思ったりもしたが、的確にも急所を狙って一撃で倒している。もしかして、これは凄い事じゃないのか? 


 そうこうして魔物を倒しながら進んでいると、一階にもあった様な広間に出た。


「ようやく広い所に出たっす」

「そうだね。魔法陣はあるかな?」


 僕は広間を見渡す。すると、部屋の真ん中に魔法陣が設置してあるみたいだ。しかし、光っていない。

 光っていないところを見ると、発動はしていないようだ。それより気になるのが、石で出来た魔物像が魔法陣を守るように立っている事だった。

 よいやみもこの像を興味津々に見ていた。


「この魔物は何すか? 見た事が無いっす」

「そうだね、上半身はオーク、かな? 他にもいろいろな魔物の部位をつなぎ合わせて作られたように見えるね」


 頭はトカゲの魔物で、上半身と腕はオーク、下半身は魔獣系の魔物で、羽は蝙蝠、尻尾には蛇がいる。そして、身体のいたるところに角が生えている。

 これが動き出したら……いや、動き出すんだろうな。


 僕は、いつきさんとゆーちゃんを入り口付近で待っていて貰う。

 あの像が、どんな魔物かまでは分からないけど、どうしようもなくなったらゆーちゃん達の力を借りる事にしよう。


「よいやみ、今回は二人で戦った方が良いと思うんだけど、どう思う?」

「そうっすねぇ……」


 よいやみは、魔物の像をジッと見ている。どうやって戦うかを考えているんだろう。


「みつき、二人を衝撃波から守るっす。一度、殴ってみるっすよ」

「分かった」


 僕が二人の前に立つと、よいやみが魔物の像に殴りかかった。

 魔力で身体強化をした状態のよいやみならば、石で出来た像くらいは簡単に砕けるだろう。

 激しい轟音が部屋に鳴り響いたが、像は無傷だった。

 よいやみが殴った衝撃波がこちらにも来た事から、魔力を込めて殴ったのだろう。


「全く効いていないっす。魔力で強化されているか、もしくは魔力を無効化しているかのどちらかじゃないっすかね」


 無機質な物は魔力での強化が出来る、と聞いた事はあるけど、魔力の無効化は聞いた事が無い。それって可能なのかな?

 よいやみにその辺りを詳しく聞いてみる。


「魔導大国ガストの研究者達の間では、紋章を使っての属性魔法の無効化の実験が頻繁に行われているっす。みつきは聞いた事が無いっすか? 紋章絵師という人を」

「聞いた事があるよ。実際に会った事は無いけど。確か、ナイトハルトにも一軒だけあったよね」


 紋章絵師というのは、武具に特殊なインクを使い、特殊な紋章を描く事でその武具に属性の負荷をつける職人の事を言う。

 この紋章は、書く人によって、効果にバラツキがあったりするそうだ。


「この像のお腹の部分に、紋章絵師が書いたと思われる紋章があるっす。この紋章の効果で魔力をかき消しているかもしれないっす」


 確かに像のお腹に、白色のインクで何やら模様が描いてある。

 しかし、よいやみは魔法に関する知識が凄いようだけど、魔導大国ガストと何か関係があるのかな? もしかして、そこ出身とか?


 どちらにしても、紋章のせいで魔力を使う攻撃が通らないとなると厄介だ。

 いや、もしかしたら、闘気を使えば戦えるか?


「よいやみ、今回は二人で戦おうか」

「分かったっす」


 二人で、像をどう破壊するか考えていると、一階で現れた男が再び現れる。

 ここにも映像用の魔宝玉があるのか。いつきさんが、すぐにそれを外す。


 男は映像が消えた事に動揺する事は無かった。というよりも今回も取られると思っていたんだろうな……。

 男はめげずに、話を続けた。


『良くここまで来れたものだ!! しかし、この階層の番人は貴様らが思っているよりも強力な魔物だ!! さぁ、足掻いてみせよ!!』


 男が、そう叫ぶと同時に魔物の像に色が付いていく。

 これは、石の像から本物の魔物に変わった?

 お腹の紋章は相変わらずそのままだが、魔物そのものには攻撃が通りそうな気がする。


「これこそが、合成獣(キメラ)と言ったところっすかね」

「そうだね。さて、戦おうか」


 僕とよいやみは二手に分かれる。僕が後ろ、よいやみが前だ。

 よいやみは、僕を一瞬見て、目で斬りかかるように指示する。


 僕は頷いて、剣を構えた。よいやみが足下に落ちていた小石を合成獣に投げつけた。

 これで怯むとは思えないが、注意をよいやみに向ける事は可能だ。


 小石はキメラの目に当たり、キメラの意識がよいやみに集中する。


 今だ!!


 僕は、背後からキメラに斬りかかった。

 もしもの時の為に、闘気を纏わせておく。

 もし、魔力を無効化する紋章が書かれてあったとしても、僕の攻撃は闘気だ。攻撃は通るはず。


 しかし、ここでキメラが背中の目を開かせて、僕の攻撃を受け止めようとする。


 こいつ、背中にも目があったのか!?


 魔物が何を考えているかは分からない。ましてや、人工的に作られた魔物だ。本能すらあるのか分からない。

 けれど、魔力無効化の紋章をつけている事で、製作者(・・・)も安心しているかもしれない。腕だけで僕の剣を止めようとしている事がその証拠だ。


 でも、残念。僕の攻撃は闘気だ。


 僕の剣を止めようとした腕を、斬り落とす。


 斬れた!! 体が石じゃなくなっている!!


 よいやみは、腕が斬れたのを確認した瞬間、尻尾の蛇を掴みに行く。

 蛇はよいやみに襲いかかろうとしたが、よいやみに殴られて、掴まれた。

 そして、そのまま蛇を引き千切った。


 やはり、石では無くなっているので、簡単に千切れる。

 キメラはしっぽを引き千切られた事に怒り、よいやみに向かって、口を大きく開いた。

 もしかしてブレス攻撃か!? 


「よいやみ!!」


 僕は焦ってよいやみを呼ぶが、よいやみは不敵な笑みを浮かべていた。


「大丈夫っす」


 そう言って、よいやみは一歩だけ後ろへと下がった。


 バカ!! 後ろじゃブレス攻撃は避けられないよ!!


 よいやみはその場で、腰を低く落とす。

 もしかして、ブレス攻撃を殴るつもりか!? そ、そんな無茶な!!


「みつきー。ブレス攻撃の弱点を知っているっすかー?」


 え!?


 キメラの口から、赤い光が吐き出される。

 よいやみは、その光に向かって拳を突き出した。魔力を纏っているようだ。


「ちょいやーーー!!」


 ここで不思議な現象が起こった。

 合成獣が吐き出した赤い光のブレスが、よいやみの拳により割れた!?

 え!? な、なんで!!?

 

 そして、ブレスを吐き終わったキメラに一瞬で近付き、顎を蹴り上げた。


「みつき!!」


 よいやみが顎を蹴った事により、キメラの首が無防備になる。

 これなら斬り落とせる!!

 よいやみが作ってくれた隙を見逃す僕じゃない!!


 僕はキメラの首を斬り落とした。

 首から上を無くしたキメラはその場で倒れる。

 キメラの頭はその場で塵へと変わった。

 

「倒したっすか?」

「首を落とされて生きていたら、ビックリするけど、警戒はしておいた方が良いだろうね。それより、どうしてブレス攻撃は割れたの?」

「あぁ、ブレス攻撃っていうのは、中心(・・)を殴る事で、力を分散させる事が可能なんすよ。うちの熊が良く使っていた手法なんすよね。あしにも出来るかな? と思ったんすけど、出来たっす」


 嘘でしょ? こいつ、成功した事ないのに実践したの? 馬鹿じゃないの?


 その事は今はいいとして、問題はキメラだ。

 頭が塵になったのは確認したけど、首から下はまだ塵になっていない。

 背中にも目があった事から、本体は胴体と考えた方が良いのか? それとも、まだ何かあるのか?


 そんな事を考えていると、キメラが起き上がる。

 やっぱり、まだ倒せてなかったか。


 キメラは、頭が無くなった状態でも僕を殴ろうとしてくる。

 どうやら、首を斬ったのが僕と理解したうえで攻撃してくるのだろう。

 しかし、そんな事はよいやみが許さなかった。


 僕を攻撃してきたキメラの腕を、よいやみが蹴り千切った。


 流石よいやみ。

 全身が凶器のようだ。


 キメラは、両腕を無くした状態でも、首を無くした状態でも、まだ立っている。

 流石に両腕と頭を失った状態でどう戦うのだ? と思っていたのだが、そんな疑問はすぐに解消される。

 キメラの腹が縦に裂けて、中から人間(・・)? が出て来た。

 もしかしたら、人間に姿が近い魔物なのか!?

 いや、流石にそんな魔物は聞いた事が無い。じゃあ、目の前にいるのは?


 出てきた人間は、首を横に動かし、関節をポキポキと鳴らしている。

 見た感じ、強そうだ。

 見た目は痩せ型の男。髪の毛は白色で短髪。服は着ている。

 何よりも、腰から下げた剣からは、神聖な魔力を感じる。


「よぉ……」


 喋った!? こいつは、本物の人間なのか!?


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