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クジ引きで勇者に選ばれた村娘。後に女神となる。  作者: ふるか162号
二章 人魔王編

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4話 塔の調査開始


 転移魔法とは、遠くの場所に一瞬で移動する魔法だ。

 一般的に知られているのは、魔法陣を使った転移魔法だ。これは魔法陣を使う事で、超高等技術と言われる転移魔法を、安全かつ安定的に使えるようにしたモノだ。

 これだけでも凄い事なのだが、唯一欠点があるとすれば、魔法陣一つに対して、一か所しか転移出来ないという事だ。

 転移魔法は、空間魔法に分類されているのだが、その空間魔法も、魔法の種類の中では、習得が特に難しい部類と言われているのだが、まさかと思うけど、ゆーちゃんは空間魔法まで使えるという事かな?


「いつき、転移魔法陣をその村に設置しているんっすか? 確か、転移魔法陣を設置するのは割と簡単だったと記憶しているっす」

「え? よいやみって脳筋だから、魔法の知識は無いと思っていたのに……」

「みつきは失礼っすね。あしは、魔導大国ガストにいた事があるっすから、魔法の知識くらいはあるっすよ。まぁ、使えと言われても身体能力強化くらいしか使えないっすけど」


 それでも、魔力の無い僕よりは、マシだと思うのだが……。

 でも、いつきさんは以前にカームの村に行った事があると言っていたし、転移魔法陣を設置していてもおかしくは無いか。

 いつきさんなら無駄な行動をするよりも、効率のいい行動をする為なら、お金を使いそうだし。


「よいやみさん、転移魔法陣は設置する(・・・・)のは簡単ですけど、その設備を維持するのは大変なお金と労力が必要なんですよ? 正直、国が関わっているのなら、それも維持できるでしょうが、個人では不可能なレベルなのですよ」

「そうなんすか? じゃあ、どうやって転移魔法を使うっすか?」

「私が使います」

「え!?」

「私はこう見えても聖女ですよ。一応、空間魔法だけ(・・)は得意なんです」


 あれ? 空間魔法だけが得意という事は……。


「もしかして道具袋を作ったのって、いつきさんなの?」

「まぁ、もうパーティを組んでいるのですから白状しますか。道具袋を作ったのは私です。だからこそ、高価にしているんですよ」

「どうして?」

「だって、私にしか作れない(・・・・・・・・)のであれば、高く売っても文句はないでしょうに……せっかくの儲け話ですし……」


 いつきさんの称号が『強欲(・・)の聖女』になるのも納得だ。


 ともかく、馬車で移動しなくていいという事は、僕達にとっても、お財布に取っても良い事尽くめだ。

 馬車と御者さんを最低一週間、いや往復で二週間か……二週間も雇い続けるのは、ものすごくお金がかかる。

 いつきさんは、その辺りも含めて報酬の交渉をしてくれるからいいけど、僕達が交渉した場合、馬車代などを除いて交渉してしまう。というか、思いつかないのだ。

 それを今回は、完全に無視できるのだ。

 まぁ、いつきさんなら、どんな方法で行こうと、問答無用で報酬の上乗せ交渉するだろうけど。


 

 僕達はいつきさんの転移魔法でカームの村に到着した。

 カームの村は、オルテガさんの言っていた森の麓にある村だ。

 しかし、この森の木は初めて見る木だな。幹の色は茶色じゃなくて、緑で表面はツルツルしている、等間隔に出っ張りもある。葉は細長く、不思議な木だ。


「その木は竹というのだそうですよ。この村の人達は、この竹を使って民芸品を作っているのですよ。私はそれを買い付けにここに来ていた、という訳です」


 そうなんだ。やっぱり儲け話だったんだね。

 これは後から知った事なのだが、いつきさんは各地の民芸品などを採算度外視で買い付け、売っていたりしていたそうだ。「昔からある技術にお金を使うのは、無駄じゃなく、それを廃れさす方が無駄なんですよ」と笑顔で言っていた。それを聞いた僕は、いつきさんを尊敬したのだった。


「で? まずは村で何をするっすか? ゆっきーがいきなり眠そうにしているっすけど、とりあえず宿を借りるっすか?」

「え? 今日中に塔に向かいますから、宿は取りませんよ」

「え!? じゃあ、塔の中で寝泊りするの?」

「そのつもりですし、その辺りは私に任せておいてください」


 いつきさんはそれだけ言って、村の中に入っていく。なんでも、村長さんに話を聞きに行くそうだ。


 村の中でも一回り大きな家、宿屋兼村長の家へと入って行く。


「これはこれはいつき様。お久しぶりでございます。今日は民芸品の買い付けで?」

「お久しぶりです、村長さん。今日は民芸品の話では無くて、竹林の中に突如建ったと言われている、塔の事について話を聞きたいと思いまして」

「あぁ、あの塔ですか。見ての通り、竹林の背は高く、肝心の塔がこの村から見えないのですが、竹を伐採しに行った者は見てしまったらしく、今も一組の冒険者が調査の為にこの宿に泊まっているのです」

「え? 緊急クエストだから、僕達だけじゃないの?」

「いえ、緊急クエストとして発注されたのは昨日ですから、行き違いになっている可能性もあります。村長さん、その方達が、今も宿にいるのなら、呼んできてくれませんか?」

「え? あ、はい」


 そう言って、村長が立ち上がり部屋を出ていく。


「どうするんすか? 冒険者に帰れと言うんすか?」

「情報を分けて貰って、今回はそう言うしかないですね。一緒に行って、邪魔をされても困りますからね」


 暫くすると、冒険者が部屋に入ってくる。

 あ!! こいつは!?


「流れ星の流星(笑)!?」

「げ!? く、黒姫!!」


 確か、リーダーのメーチだっけか? こいつとは、それなりに因縁がある。そのせいで、僕の顔を見てあからさまに嫌そうな顔をする。


「あんた、まだ冒険者やってたんだね」

「うるせぇよ。で? 俺に何の用だ?」

「そうですね。塔には入ったのですか?」

「あ? お前は商人じゃねぇか。なんでこんな所に?」

「貴方達には関係ありません。それよりも、塔に入ったのですか?」

「あぁ……」


 流れ星の流星は、何度か塔にアタックしていたらしい、が、一階層のスケルトンが通常のスケルトンよりも手強かったらしく、逃げかえって来たらしい。ちなみに、今回のアタックで、仲間四人が怪我をしたそうで、今は傷を癒す為に休止中だそうだ。

 いつきさんは、いくつか質問をした後、流れ星の流星に帰還するように話す。それにメーチも納得したらしく、素直に了承していた。


 そして、塔の正確な位置を聞き、僕達は塔へと向かった。



 塔の入り口は村からそんなに離れていなかった。

 ん? どういう事だ?

 目の前にある塔は見上げるほど高い。それこそ高い竹よりも遥かに高いのだ。

 なんで、これが村から見えないの?


「これは人工物でしょうね」

「え? 何言ってんすか? そんなの当たり前じゃないっすか」


 確かによいやみの言う通りだ。塔であっても古代の遺跡であっても、自然にできたわけじゃない。という事は人工物というのも当たり前だ。


「そういう意味ではありませんよ。この塔は、何らかの魔力を持つ者により、作り出されたという事です」


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