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クジ引きで勇者に選ばれた村娘。後に女神となる。  作者: ふるか162号
一章 勇者編

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21話 勇者リュウトの独白

勇者リュウトの設定を以前のクジ引きから大幅に変えました。


 俺はリュウト。地方の町の領主の息子だ。

 勇者になる前は、厳格ながらも尊敬できる父、優しく思いやりのある母、そして可愛い婚約者もいて、何不自由のない暮らしをしていた。

 そんな俺の運命が変わったのは、あの国が用意したクジ引きだ。

 正直、俺は勇者など興味もなく、クジを引くのにも抵抗があった。

 それはそうだろう。俺は今の暮らしに不満などない。

 勇者になれば、今の生活を捨ててアロン王都に行かなければならない。誰がこんなもの引きたがるんだ?

 ただ、俺は領主の息子だ。流石に俺が引かないわけにもいかない。俺が一番最初に引くことで領民に安心させたかった。

 まぁ、結果は()()()だったんだけどな。

 ここまでは良い。もし不幸にも当たってしまった者には、全力でサポートするつもりだった。

 幸か不幸か、勇者に選ばれてしまったのが俺の婚約者である『マリナ』だった。

 マリナは勇者になるのを嫌がった、そして俺に相談を持ち掛けてきた。

 俺は何とかマリナを助けたかった。だが、婚約者を守る為に領民を犠牲にしてもいいのかと悩んだ。

 そして俺が出した答えは……。


 兵士に確認を取ったところ、アタリを引いた者が望めばそれは可能だと言った。

 俺は、マリナのアタリを受け取り勇者となった。


 そのことに後悔はない。俺が勇者になり、マリナにはこの町で待っていて貰う……、それだけだと思っていた。



 アロン王国に飛ばされてからの三年間、俺は勇者として必死だった。

 何の因果かランクは最初からミスリル。これだけで冒険者ギルドの職員達は沸いていた。


 絶対、マリナの所へ帰るんだ。それが俺の原動力だった。


 そして三年後、俺は故郷へと帰った。

 しかし、領民の俺を見る目が厳しい。話しかけても、人形のようにありきたりの言葉を吐かれるだけ。

 何が起こっている?

 俺は住民の一人をつかまえて話を聞いた。

 住民が言うには、俺は勇者としての活動もろくにせずに、毎日を怠惰に生きていると……。

 ど、どうなっているんだ? 俺は、この三年間、毎日傷だらけで戦って来た……、誰がそんな噂を?

 

 俺は自分の家に向かった。両親に真意を伝える為に……。

 しかし、そこで俺は信じられないモノを見る。

 マリナが子供を抱いていた。だ、誰の子だ? 彼女の傍には笑顔の父と母が……。

 い、一体誰の子だ? 俺か? いや、そんな筈はない。


 俺は詳しく話を聞こうと彼女に近付いたが、父親から殴られた。

 父の口から「この恥さらしがぁ!! なぜ生きて帰った!! キサマなど死ねばよかったんだ!!」と罵られた。

 な、何故だ? マリナ……。

 俺の目から涙が溢れ出る。

 マリナは泣く俺を見て、冷たい目で嘲笑っていた。


「惨めね。私は、幸せを掴んだの。貴方には心底がっかりしたわ。もう私達に近付かないで」


 マリナから最後に言われた言葉だ……。

 父からは「二度と()()()()に近付くな」と怒鳴られ勘当された。


 ど、どうしてこうなったんだ? 俺は家族じゃないのか?


 それから俺は冒険者を使って、故郷を調べた。

 その報告書を見て俺は固まった……。信じられなかった……。


 すべてマリナの策略だった……。

 マリナは婚約する前から、今の夫と愛し合っていたらしく、俺と婚約したのは領主としての地位を手に入れる為だということが分かった。

 つまり、俺は騙されていたわけだ。

 それならば、両親は何故俺を? と思ったのだが、今の夫が優秀な男で、両親からしても俺よりもそちらを息子にしたかったのだろう。

 

 そして、俺を追い出す為に、事前にアロン王国の兵を体で買収して、自分がアタリを引くように仕向けたのだと……。

 俺の性格なら、自分と入れ替わるだろうと……、それに両親も加担していたと……。

 出来の良い息子ではなかったことは認める。だが、俺なりに必死だったが、両親にはそれでは足りなかったようだ。

 俺は自分の稼ぎを領民の為にと故郷に送っていたが、両親はそれを領民の為に使わず自分達の贅沢の為に使っていた。

 俺は裏切られたのではなく……最初っから誰にも愛されていなかった……。


 この日に俺の中で何かが壊れた。


 それからはアロン王国での評判通りだ。女冒険者を強姦し、冒険者を何人も死ぬように仕向けたりもした。

 俺の評判が地に堕ちれば堕ちるほど、俺の故郷の評判も堕ちていく。ざまぁみろだ。

 きっと、以前の俺ならば罪悪感などでこんなことは出来なかっただろう。しかし、今は何とも思わない。


 俺が好き勝手を初めて数年、アロン王国から呼び出しを受けたが無視した。俺は勇者だからな。無視する権利もある。すると、王国に両親が呼び出されたようだ。

 ある日、俺は故郷の両親に呼び出された。俺が勘当されてから5年が経っていた。

 5年経った故郷は変わり果てていた。


 町の住民の生活水準が下がり、町では犯罪者が増えていたそうだ。いい気味だな。

 俺は町の住民を痛めつけて事情を聞いた。

 俺がアロン王国で好き勝手した結果、国からの税が上がったとのことだった。そのせいで住民の生活が苦しくなったと。

 俺はそれを聞いて、あいつ等の嘘だと気づいたが、教えてやる義理もねぇな。俺は住民をその場で殺した。

 生きているのが辛いなら、死んだ方が救いだろ?


 両親に会いに行く前によるところもあるな……。


 実家に帰ると、両親が怒りの表情で待っていた。

 父親からはあの頃の尊敬していた厳格なイメージは消え去り、権力におぼれた豚に見えた。母も同様だ。

 両親に最近の俺の行動について叱責された。

 だが、俺は汚いモノを見る目で親父を睨む。


「俺はてめぇらに裏切られたんだぜ? 勘当しておいて、今更、父親面か? 随分と都合のいい話だなぁ」

「な、キサマ、この父に向かって」


 俺は父を殴った。あの時の仕返しだ。

 親父は無様に吹っ飛び、もがいている。

 腐っても俺は勇者だぜ? てめぇ等みたいな屑と一緒にすんじゃねぇよ。


 怒り狂う父親、泣きながら非難してくる母親。バカバカしい。

 俺は、両親に土産を渡すことにした。ここに来る前に、この世で一番憎く、()()()()に会いに行っていたんだ。


 俺は土産の品を両親の足元に投げつけてやった。


 マリナの夫とその子供の首だ。


 散々、甚振った後に殺してやった。

 子供を一番最初に殺した。

 流石の俺でも慈悲の心があるからな。子供だけは一撃で殺してやったぜ?

 だが、マリナと夫は別だ。

 夫の方は、顔の原型が無くなるまで殴り続けて殺した。

 マリナが一番滑稽だったぜ?

 二人が死んだ後に「り、リュウトだけを愛します」だとよ。


 いらねぇよぉおおおおお!!

 権力の為に裏切る雌豚なんざ、生きている価値もねぇ!!

 ただ、普通に殺したんじゃ面白くねぇ。

 俺はマリナをここに連れてきた。

 

 俺を裏切っておいて幸せに暮らすなんてあってはいけないことだろう? そう口角を釣り上げ両親に問う。

 両親は怒り狂っていた。奴等からしたら息子の様であり、孫の様なモノだろう。だから何だ?

 俺はマリナに命令する。


「こいつ等を、嬲り殺せと……」 


 マリナは笑いながら、両親二人を嬲り殺した……。

 これで自分は助かると思っていたんだろうなぁ。両親を殺した後、振りむき俺の顔を見た瞬間、マリナは笑顔から絶望の顔へと変わった。

 俺はマリナを冷たい目で見て嘲笑ってやった。


「惨めだな。俺は勇者としての幸せを掴んだ。お前には心底がっかりしたよ。二度と俺の前に面を見せるんじゃねぇ……死ね」


 あの日にお前が俺に向けた目と言葉だ。

 これは報いだ……。


 俺はマリナを斬り刻んで殺した。


 俺はマリナを殺した後、アロン王国へと報告へ向かう。

 マリナを犯人に仕立てて、勇者としてマリナを討伐・・したことを説明するためだ。

 前王ティタンは俺の言葉を信じた。無能な王を欺くことは簡単なことだった……。


 タノシカッタナァ……。


 今でも国が憎い。女が憎い。男が憎い。勇者が憎い。魔王が憎い。魔物が憎い。


 憎い憎い憎い憎い憎い……。


 目の前の、トカゲも憎いなぁ……。死ねよぉ……。


 誰か、俺を……。


 オレヲ……。


 俺は()()()()必要がある。俺は可哀想だからな。

 だからこそ、俺を拒否したあの金髪は許せない。だが、俺ではアイツに勝てない。

 あの黒髪のチビも許せない。同じ勇者というのが許せない。

 俺はこの国の犠牲者だ。俺はもっと、愛されなければいけないはずだ。


 俺は、勇者リュウト様だ!! 


可哀想な目に遭ったから、裏切られたから、その後の行為が許されるのか? という意味で書いてみました。

前クジ引きでのリュウトはただのクズだったんですけど、こう書くと、どう見えるんですかねぇ。


感想があれば、よろしくお願いします。

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