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クジ引きで勇者に選ばれた村娘。後に女神となる。  作者: ふるか162号
一章 勇者編

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20話 無慈悲な救世主


「ゆーちゃんがとかげさんをいきかえらせる」


 そう言って、ゆーちゃんはシーグルさん達にリザードマンの遺体を一か所に集めさせる。

 遺体の損壊状況は悲惨なものだ。五体満足な者など殆どいない。なんで、亜人というだけでこんな目に遭わなきゃいけないのか。

 生き残っている人達も、薬草や回復魔法で一時的に死ななくなっているだけだ。出来るだけ早く高位の僧侶に治療して貰わないと、死んでしまうだろう……。

 僕は御者さんに冒険者ギルドに僧侶の緊急要請を頼もうとしたのだが、ゆーちゃんに止められる。


「まずはこのひとたちをいきかえらせる」


 そう言って、十人くらいのリザードマンの遺体の前に立ち、両手を広げた。

 ゆーちゃんが蘇生魔法を使えることはリリアンさんに聞いている。だけど、正直期待はしていない。

 蘇生魔法というのは、殺された直後の人にしか効果が無いと聞いたことがある。それに蘇生魔法では部位破損までは治すことは出来ない。

 ここにある遺体の殆どが部位欠損している。こんな状態で生き返ったとしても、すぐに死んでしまうだろう。

 僕が甦生魔法に詳しいのは、昔、魔法が使えないのが悔しくて、何とか使えるようになるためにたくさん勉強したことがある。

 その時に、蘇生魔法のことが魔法の本に書いてあった。

 ゆーちゃんは、キョロキョロと周りを見回す。

 そして……。


「いきかえれー」


 え? い、今のが魔法? 詠唱は? 魔法名は?

 僕の疑問を無視するように、ゆーちゃんの体が光り輝きリザードマンの遺体も光り輝く。

 目の前の光景は一体なんだ? 部位破損しているリザードマンの遺体が修復していく。そ、そんな馬鹿な!?


「う、嘘でしょ……」


 シーグルさんの仲間である、僧侶『リーゼ』さんも驚いていた。

 蘇生魔法自体が高位の魔法だから、リーゼさんが使えないのは仕方が無いのだが、驚いているのは別の意味でだった。


「き、禁術……『甦生魔法』……」


 禁術? 今リーゼさん、禁術って言った!?


 禁術というのは、使い方を間違えれば、世界が滅びかねない魔法のことを言う。

 リーゼさんが呟いた『甦生魔法』は『蘇生魔法』と似ているが、全く質が違う。

 蘇生魔法が厳しい条件下でしか蘇生できないのに対し、甦生魔法は部位破損していようが、白骨遺体だろうが甦生してしまう。


 この魔法が禁術に指定された理由までは分からないとのことだが、この魔法があれば、戦争などの常識が簡単に変わることくらいは容易に想像できる。


「いきかえった」


 ゆーちゃんの言葉で、僕達は現実に引き戻される。

 実際、先ほどまで死んでいたリザードマン達は無傷の状態で生き返っている。

 ただし、残念なことに数体は生き返っていない様だった。


「たましいがもうしんでるからいきかえらなかった」


 魂が死んでいる? どういうことだろう。

 その後、ゆーちゃんは殺されたリザードマンの殆どを生き返らせた。殺されたリザードマン達は泣きながら喜び合っていた。

 しかし、問題も残っている、傷ついた人達を早く治療院に連れて行かないと……と思っていたのだが、ゆーちゃんの一言でこの場の空気が凍り付く。


「いっかいしねばいきかえる」


 い、今のは聞き間違いだろうか……?

 そう思っていたのだが、重症のリザードマンの傍に行き「きをしっかりもて」と言い出す。

 あのリザードマンはすでに死にかけで、もう助からないと思ってたのだが、ゆーちゃんが一言「しね!!」と言い放つ。

 さ、流石にそれは酷い……と思ってリザードマンを見ると既に死んでいた。

 ま、まさか……即死魔法?

 もしかして、リリアンさんが「いうぞ?」という言葉に怯えていたのって、ゆーちゃんの「しね」って言葉!!?


「ちょ、ちょっとーーー!! ゆ、ゆづきちゃん何をやっているの!!」


 リーゼさんが焦り出す。そりゃそうだろう。死にかけていたとはいえ、それをわざわざとどめを刺さなくても……も、もしかして……。


「いきかえれ」


 や、やっぱり……。

 ゆーちゃんは甦生魔法で傷を治すことが出来るから、死にかけだろうと関係ないのだ。

 その後、ゆーちゃんは笑顔でリザードマンを殺しては生き返らせるという無慈悲なことを繰り返した。

 リザードマンは口々に「無慈悲な救世主様だ……」と呟いていた。きっとゆーちゃんの称号が『無慈悲な救世主』に変わっていることだろう……。


 

 一部を除くリザードマンが生き返った後、僕達はリザードマンから話を聞くことにした。

 リザードマンを襲ったのは勇者リュウトで間違いないそうだ。

 奴は、「魔物の分際で喋ってじゃねぇ!!」とリザードマンに襲いかかっていたそうだ。

 亜人であるリザードマンは弱い種族だ。一端の冒険者ならば虐殺することも可能だろう。

 リュウトがどこに行ったかを聞くと、今いる位置から東に行ったところにある湿地帯にいるそうで、今は族長と戦っているとのことだった。


 族長は、亜人リザードマンでは珍しく、戦闘ができるそうだ。

 ただ、それでも勇者に勝てるかどうかはわからず、助けて欲しいと言われた。

 死んでから生き返らせた方が良いかと思ったが、ゆーちゃんが言うには『戦闘で負けた』という心を持ってしまうと生き返らない可能性が高くなってしまうそうだ。それならまだいいのだが、戦闘に負けた者はたまに憎悪を持ってしまうことが多く不死系の魔物、つまりゾンビやグールになってしまうそうだ。

 そう考えれば、甦生魔法が禁術なのも納得してしまう。

 ゾンビ兵を作ることも可能だということだ。


「助けに行った方が良いっすね」

「そうだね」


 僕とよいやみはリザードマンから聞いたリュウトと族長が戦っているという場所まで急ぐことにした。

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