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クジ引きで勇者に選ばれた村娘。後に女神となる。  作者: ふるか162号
一章 勇者編

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19話 湿地帯


 調査する湿地帯はアロン王国の南の森をさらに南に行ったところにある。早馬車で3日ほど走ったところにあるそうだ。

 早馬車とは、普通の馬車と違い御者が二人いて、昼夜問わず走り続ける馬車だ。それで三日なのだから、遠いということが良く分かる。


 御者さんは気の良いおじさん達で、僕達のことを他の冒険者から聞いていたみたいで、サインを求められた。どうやら娘さんが僕のファンらしい。

 それを聞いたときにとても恥ずかしかったが、僕のことを好きと言ってくれるのは素直に嬉しい。


 おじさん達の話では、勇者黒姫という名前は結構広まっているらしく、今ではアロン王国で勇者黒姫を知らない者はいないらしい。

 アロン王国では二大勇者の一人に選ばれているらしい。もう一人は噂に聞く『英雄バトス』さんだ。

 まだ顔も見たことも無いが、漢気溢れた英雄の名にふさわしい勇者らしい。一度会ってみたいものだ。


 僕とおじさんが他愛もない話をしていると、寝ていたはずのよいやみが目を薄っすら開けて僕にこう話してきた。


「みつき、追走してくる馬鹿がいるっすよ」

「ん?」


 よいやみに生体感知を教えてみたところ、アッサリと使いこなし、リリアンさんを驚かせていた。

 よいやみの生体感知は僕よりも察知能力が高いみたいで、先に何かの反応に気付くことが多い。ただ、よいやみは「精度と範囲の大きさはみつきに遠く及ばないっす」と言っていた。

 生体感知には確かに十数人の反応がある。魔物かな? 

 生体感知の欠点としては魔物と人の違いが分からないことだ。ただ、この二か月で色々なクエストをこなしたのだが、アロン王国周辺ではそれほど強い魔物は出会ったことが無い。少なくても馬車に追いついてくる魔物は見たことが無い。

 早馬車のスピードに付いて来ているということは、追っかけてきている連中も、馬か何かに乗っているということだろうか?


「どうするっすか? やっつけるっすか?」

「うーん。そうだねぇ。おじさん、馬車を止めた後、魔宝玉で冒険者ギルドに()()を討伐したので、引き取りを頼んでくれない?」


 僕がそう言うと、御者のおじさんは驚いた顔をした後、馬車を止めてくれる。

 僕達が馬車を降りると、御者さん達には馬車の中に隠れてもらう。

 ゆーちゃんは寝ていたので降りてこないと思っていたら、不機嫌な顔で降りてきた。


「ゆーちゃんも馬車にいて欲しいな」


 僕がそう頼むとゆーちゃんは首を横に振る。


「みーちゃんのおひざでいいゆめみてたのにゆるさない」


 ゆーちゃんが怒っていらっしゃる。これは盗賊共は無慈悲に魔法実験に使われるんだろうな。

 とはいえ、乱戦になったら馬車に被害が出るかもしれない。


「よいやみ、行くよ」

「おぅっす!!」


 僕とよいやみは追ってくる何かに向かって走り出す。走り出すと言っても僕は闘気、よいやみは魔力を使って走っているので馬車よりも速い。

 見えてきた。やっぱり馬に乗っている。

 姿形は、盗賊だろう。

 走ってくる僕達を見て驚いているが、驚くほどの暇なんて与えない。


 正直な話、この国の盗賊は大体が冒険者崩れの連中だ。

 まともに冒険者も出来ないやつらが、現役冒険者である僕達に勝てると思わないで欲しい。

 盗賊制圧は数分で終わった。

 とりあえず動けないようにロープでグルグル巻きにして、盗賊を尋問する。


 盗賊は、とある勇者の依頼で僕達を襲おうとしたらしい。

 その勇者の特徴がリュウトだった。


 何故リュウトが僕達の依頼場所を知っているのか疑問だったが、そこは後でギルドで聞けばいい。

 盗賊はゆーちゃんの『ひーる』で様々な状態異常にかかり苦しんでいる。ゆーちゃんが盗賊いじめをしていると、全身鎧を着た人達が綺麗な馬に乗ってやってくる。

 彼等はアロン王国の騎士団らしい。騎士に話を聞くと、盗賊退治などは騎士の管轄になるそうだ。

 盗賊を引き渡し、騎士達はお礼を言い去っていった。今回の討伐報酬は、ギルドに貰ってくれとのことだった。


 盗賊退治を終えた僕達は、再び早馬車に乗り湿地帯に向かう。

 


~湿地帯~


 三日後、湿地帯に到着した僕達は早速亜人リザードマンの捜索を開始する。

 僕が生体感知で、生き物を探すのだ。範囲は僕の方が広いのでこういう場合は僕の方が良いらしい。


 生体感知に反応があった。ぽつぽついるのは魔物でいいだろう。リザードマンは群れを成している……。

 ここからさらに南の湿地帯だ。リリアンさんに事前に貰った地図だと、この湿地帯は三つに分かれていて、南東に位置する湿地帯に亜人リザードマンとみられる反応が多数ある。

 でも何かおかしい。次々反応が消えている。どうして? もしかして何かに襲われている!?


「よいやみ! 急ぐよ!!」

「どうしたっすか?」

「亜人と思われる反応が何かに襲われている!! 魔物討伐中ならそれで構わないけど、何かがおかしい!!」

「わかったっす!! ゆっきーと御者さんはゆっくり来て欲しいっす!!」


 僕達が現場に向かっていると、一組の冒険者パーティが僕達と同じように湿地帯を調査をしている様だった。


「あれ? 黒姫じゃないか」

「ホントだ」


 僕達は冒険者に声を掛けられる。急いでいるのに……。


「焦ってどうしたの? そういえば勇者リュウトも来ていたけど何かあったの?」


 冒険者の一人がそう言った。

 リュウトが? まさか!?


「貴方達の中に回復魔法を使える人はいる!?」

「え? いるけど……」

「なら、一緒に付いて来て!!」


 僕が焦りながら冒険者パーティにそうお願いすると、困惑しながら了承してくれた。



 生体感知で反応があった場所に行ってみると、凄惨な光景が広がっていた。

 数多くの亜人リザードマンが血を流し倒れている。倒れている亜人の傍には泣きながら倒れている亜人をゆすっている子供の亜人もいた。僕は急いで薬草を取り出す。


「よいやみ!! 息のある人に薬草を使って行って!! 貴方達もお願い!!」

「わかったっす!!」「あ、あぁ!」



 急いで応急手当と治療を行った結果、最初に反応があった4分の一くらいの命を助けることが出来た。

 でも、殆どは即死に近い状態だった。


「誰がこんなに酷いことを……。そもそも、彼等は一体……」


 冒険者達は、目の前にいる亜人リザードマンのことを知らないようだ。

 冒険者のリーダーである『シーグル』さんはシルバーランクの冒険者で、アロン王国に来て日が浅いということだった。

 シーグルさんに亜人のことをどこまで知っているか聞いたところ、殆ど何も知らないとのことだった。


 僕は亜人『リザードマン』のことを説明して、冒険者達と共に殺されたリザードマンの埋葬を始めようとすると、僕達が載ってきた早馬車が到着して、ゆーちゃんが降りてきた。

 あまりこの光景を見せたくなかったが、ゆーちゃんが死体を一か所に集めるようと言って来た……。


「ゆーちゃん、どうして?」

「ゆーちゃんがとかげさんたちをいきかえらせる」

 

 ゆーちゃんは小さな体を踏ん反り返させ、そう言い切った。 

次回はゆーちゃん大活躍の『無慈悲な救世主』です。


新作『死者の国』始めました。

https://ncode.syosetu.com/n7489fg/

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