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クジ引きで勇者に選ばれた村娘。後に女神となる。  作者: ふるか162号
一章 勇者編

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18話 亜人と魔物


 リュウトに絡まれた後、僕達はいつきさんのお店で今回の緊急クエストについて話し合った。

 緊急クエストというのは基本守秘性が強いので、ギルド内で話をすることはない。何処で誰に聞かれているか分からないからだ。これは自室でも同じことだ。流石に盗聴まではしていないだろうが、たまに隣の部屋の声が聞こえることから、いつ洩れるか分からない。これをいつきさんに相談したら、お店の一室を貸してくれた。

 この部屋は防音の魔宝玉が設置されているので、内緒話にはもってこいだそうだ。いつきさんはこの部屋を、大きな商談をするときに使っているらしい。


 余談だが、鬼族であるボタンさんと取引があった商人というのが、ゲンさんではなくいつきさんだった。

 いつきさんは鬼族と素材取引の契約をしているそうで、その時にボタンさんや、ハグロと知り合ったらしい。

 ボタンさんがリュウトに絡まれたのも、いつきさんのお店で取引をした後らしい。


「みつきー。この湿地帯調査って、なんで緊急扱いなんすか?」

「うーん。僕達が絡むということは、亜人絡みだとは思うんだけど、どうなんだろうね」


 この二か月で何度か緊急クエストを受けているが、そのほとんどが亜人絡みだった。

 アロン王国では、亜人に対する偏見が少ないとはいえ、冒険者の中には亜人と魔物の違いが分からない者もいる。

 それに比べて、僕は魔大陸出身で、亜人との交流もあると知ったリリアンさんが僕を使ってくるのだ。

 別にそれ自体は構わないのだけど、リリアンさんにはいいように使われている気がしてならない。


「湿地帯にいるのはリザードやカエル系の魔物っすね。そう言えば、熊に聞いたことがあるんすけど、蛙の中には馬鹿強いカエルもいるそうっすね」


 よいやみが言っているのは、魔大陸の沼地にいる『ゲゴゴドン』のことだろう。

 あの魔物は比較的大人しいから食用として狩られることが多い。とはいえ、黙って狩られる魔物はいないので、狩ろうとすると抵抗してくるのだ。その攻撃が凄まじく、攻撃を喰らった物は死ぬと聞いたこともあるから、僕は近付いた事が無い。


「あぁ、いるね。魔大陸にある沼で見たことあるよ。僕は戦ったことはないけど」

「そうなんすか? いつかは腕試ししてみたいっすね。で? 湿地帯にいる亜人というのはどういう亜人なんすか?」

「湿地帯にいる可能性があるのはリザードマンだね。彼等は意外と厄介でね、同名の魔物も存在するんだ」


 リザードマンはトカゲのような顔をした亜人で、比較的大人しい亜人だ。

 だからこそ、冒険者が襲いかかった場合、ほぼ間違いなくリザードマンが殺されてしまうだろう。

 だからと言って、冒険者を攻めることは出来ない。同名の魔物リザードマンは、亜人リザードマンと見た目はほぼ変わらないし、武器も持ち結構強いらしい。

 らしいというのは、僕は亜人であるリザードマンは見たことがあるが、魔物リザードマンは図鑑で見たくらいだ。

 とはいえ、無害な亜人リザードマンが被害に遭うのも後味が悪くなる話になる。それを防ぐために、僕が選ばれたのだが、一体何をしたらいいのか見当もつかない。

 保護というのは意外に難しいし、どうしたものか……。

 

「よいやみはどうしたらいいと思う?」


 一応聞いておいた方が良いだろう。よいやみは魔物と亜人の見分けがつかないと言っていた。

 見分けを付けるというが、実はそう難しいことではないのだけど……。


 一般的に魔物と亜人の違いは知能があるかどうかなのだが、実はこれは間違っている。

 魔物の中に悪魔という種族がいるのだが、こいつらは知能を持ったうえで本能で襲ってくるという厄介な種族だ。

 流石に僕は戦ったことはないが、アリ姉が戦っているのを見たことがある。

 アリ姉は僕の知る限り誰よりも一番強い。そのアリ姉が結構苦戦していたので、僕が戦ったのなら確実に殺されていただろう。

 じゃあ、簡単に見分ける方法は何か? という話だが、言葉が通じるかどうかだ。

 魔物は基本、咆哮や鳴き声だけを発する。簡単に言ってしまえば、動物と変わらない。悪魔種もこれは同じだ。

 これに比べて亜人は言葉が通じる。

 ただ、これには問題があって、亜人の中には人間をまるで信用していない種族も存在する。

 彼等は人間に話しかけられても、無視するだろう。

 無視するということは、言葉が通じないと取られても仕方が無い。

 実はこのことでいろいろ問題にもなっているのだ。


 これは僕の故郷である魔大陸の話なのだが、ヴァイス魔国はアリ姉こと魔王アリスが治める魔族が中心の国だ。

 魔族中心と言っても人間が住んでいないわけではない。寧ろ、うちの村の若い者は都会であるヴァイス魔国へと働き口を求めて出ていく。

 僕の幼馴染のエリザもそうだ。

 エリザは、村から通っているとはいえ、ヴァイス城で働いている。聞くところによると、ヴァイス城のアイドル的存在だそうだ。

 まぁそれは良いとして、ヴァイス魔国でも亜人と人間が揉めることがある。

 アロン王国や人間主体の国ではよくある問題なのだが、人間が亜人を見下したりするのが大体の原因だが、ヴァイス魔国ではこれが逆なのだ。

 ヴァイス魔国に人間が住んでいると言っても、僕の村から出稼ぎに行った人が殆どなので、数としては人間は比較的少ない。

 確かに、ヴァイス魔国では魔族と人間のハーフも数多くいる。

 亜人は魔族とは違い、人間と夫婦になることは無いので、ハーフは生まれない。もしそんな子が生まれたとしても、迫害されるようだ。

 アリ姉もそれを放っておくわけはないので対策は取っているのだが、人間、亜人、魔族が共生しているヴァイス魔国ですら問題になるのだ。人間の国で問題にならないわけがない。


 そこで、リリアンさんに目を付けられたのが僕だ。

 実はリリアンさんには、ヴァイス魔国のことは、ある程度話してある。勿論、魔王であるアリ姉のこともだ。

 リリアンさんに会う度に魔大陸の事を聞かれて、口を滑らせたことでヴァイス城のことがバレてしまった。

 一応口外はしないでくれとは頼みはしておいたが、リリアンさんでも、王族から魔大陸のことを聞かれたら、断れなく話すだろう……。


「という訳で、亜人を脅すことも可能な僕がリリアンさんにこき使われているから、僕絡みの緊急クエストは亜人系統が多いんじゃないかな?」


 脅すというのは乱暴な言葉だが、無視されたとしても、僕ならば亜人か魔物かの見分けはつく。

 だからこそ、脅すことで言葉を引き出すことも可能なのだ。

 

「成る程っす、で? いつ出発するっすか?」

「そうだね。緊急クエストだから早目に出発しようか、明日の朝出発するよ。準備しといてね」

「了解っす」


亜人リザードマンと魔物リザードマンがややこしいのはわざとです。亜人リザードマンのことは後々呼び方が変わりますので、今はややこしい状態で進めます。旧クジ引きを読んでいただければネタバレになりますけどw


少しでも面白いと思っていただければ幸いです。

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