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クジ引きで勇者に選ばれた村娘。後に女神となる。  作者: ふるか162号
一章 勇者編

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閑話 ヒヒイロカネの勇者 

 俺は、『レオン=アロン』。アロン王国の国王をやっている。

 この国は、俺の兄であり、悪王の異名を持っていた、前国王『ティタン』によって、悪政が敷かれ、滅びかけたことがあった。独裁政治によって国民を苦しめ、多額の税で、商人達を殺そうとしたのだ。そこで、立ち上がったのが、スラムのみんなだ。俺はスラムの連中をまとめ上げ国を堕とした。それが七年前だ。

 兄であるティタンから国を奪い取った後、俺がこの国の国王を務めている。


 話は変わるが、俺には惚れた女がいる。彼女はギルドにいる女性なのだが、元、ミスリルランクの冒険者で、一緒に旅をしていた父親が死んだのを期にこの国のギルドに来てもらった。元々は父親と知り合いだったということで、同情心からだったのだが、彼女の一生懸命さに惚れてしまった。

 暇があればギルドに赴き何度も求婚しているのだが、いつも軽く流されてしまっている。

 国王の権力を使って手に入れることは簡単なのだが、それをしてしまうと悪王と呼ばれていた兄と同じになってしまう。それに、権力というのは国の為に使うモノであって、個人の為に使うモノではない。

 権力に靡かないのも、彼女の魅力だ。


 そんなギルドから面白い報告が来た。


『新たな勇者が召喚されました。名はみつき』


 新たな勇者か。名前からして女性というのはわかるが、なぜこの時期に?

 実は、この国のクジ引きに関しては、俺もどちらかといえば廃止してしまいたいのだ。

 何処にいるのかも分からない魔王討伐、強力な魔物討伐という上位の冒険者でも危険を伴うクエストをクジ引きのようなランダム要素の強い方法で選んだ勇者に上手くこなせるとは思えない。先先代の父が国王をしていた頃から、俺が何度も言ったセリフだ。

 しかし、伝説の勇者『覇王』がこの方法で選ばれているのも事実だ。

 だからこそ、父も要職に就いている側近達も、聞く耳をもたなかった。

 更に俺には気になることがあった。


「シド、この報告はおかしくないか? 今年に入ってからは、教会の助言通りクジ引きを中止しているはずだ。しかし、勇者は、クジ引きで召喚されたと言っているらしい。どういうことだ?」


 俺の右腕である『シド』

 こいつは元スラム出身だが、昔からの仲で俺に臆することもなく、意見してくる親友だ。


「そうですね。勇者を語る詐欺? とも思いましたが、どうやら別の疑いがあります。報告書を読み進めると、()()選ばれたかよく分かる、面白いことが書いてありますよ?」

「何?」


 誰に選ばれたか、だと?

 報告書には続きがあり『勇者の間の扉を蹴り破った』『絶望の村出身』『ゴールドランク・流れ星の流星を撃破』『女神ランク:ヒヒイロカネ』と書かれてある。


 どれも信じられないことが書いてある。どこからツッコめばいいのか……。

 勇者の間のあの封印の扉を蹴り破った? そんな馬鹿な……。

 あの扉は、宮廷魔術師により何重にも封印を施してあるんだぞ? それを蹴破った? 今回来た勇者はゴリラみたいな女なのか? それとも、みつきという名の屈強な男なのか? いや、例え屈強な男であろうとあの扉を蹴破れるわけがない。


 次に、絶望の村……。これは俺の記憶が確かならば、あの大陸にある魔物に支配された村だよな?


「なぁ、シド。絶望の村ってどこにあったっけ?」

「あぁ、魔大陸ですね。ここにも疑問がありますね。あの魔大陸にクジ箱を持って言ったのは誰か? ということですね。お恥ずかしい話ですが、この国の兵士にあの魔大陸の結界を抜けることの出来る者はいないはずです。いえ、この国でもあの結界を抜けることの出来る者はただ一人と言われています。」

「誰だよ……」


 そんなヤバイ奴がこの国にいるのかよ。


「行商人のゲンという男です」


 ゲン、アイツか……たしか、オリハルコン級の盗賊だったと聞いたことがあるが、今は商人だ。例え、あの結界を抜けられるとしても報酬もなくクジ箱を持って行ってくれるとは思えない。流石にそんな報酬を払っていれば、俺達にでも気づくことが出来る。


 次に流れ星の流星に関しては、俺が知らない冒険者の話なのでどうでも良い……。そもそもそんな名前を付けている時点で馬鹿じゃねぇのか?と思ってしまう。それよりも、最後の一行……。


 ヒヒイロカネの勇者


 恐らく勇者みつきは自分のランクがオリハルコンだと思っているだろう。

 この最上位のランクは、ギルマスとサブマスターのみが特殊な眼鏡をかけることで見ることが出来るランクだ。

 そして、この世界の全てのギルドの頂点に立つ冒険者マスターが、たとえ本人であっても教えてはいけないと言っているのだ。これに関しては、俺も詳しくは知らない。

ランクが何故ヒヒイロカネなのかも分からないのだ。

 ヒヒイロカネというのは、伝説上にだけ存在する七色に光る金属の名だ。伝説の勇者、覇王が持っていた剣がヒヒイロカネだったという噂もある。

 実はこの国にはもう一人ヒヒイロカネのランクを持つ者がいる……。

 冒険者ギルドの問題児である『ゆづき』だ。

 彼女がどこから来たかは誰も知らないらしい。気が付いたら、冒険者ギルドに住み始めていたらしい。

 その前は、あのゲンの店に住んでいたらしい。


「一度、ゲンに話を聞く必要があるな……」

「分かりました、手配しておきましょう」


 シドはそう言って、この部屋を出ていく。


 王族だけに伝わる伝承には、勇者覇王もランク・ヒヒイロカネだったと書いてあった。

 この時代に二人もヒヒイロカネが発現したのには何か意味があるのか……。人間と魔族の下らない争いに終止符が打たれるのか……。



 勇者みつきの話を聞いたわずか3日後、俺が求婚しているリリアンがオーガ討伐へと出たという報告を聞かされた。

 危険じゃないのか? 俺は何度もシドに聞いたのだが、シドは大丈夫とだけ言った。何故なら、そのクエストに同行しているのが勇者みつきだからだというのだ。

 勇者みつき……彼女は強いのか? あれから調べたのだが、みつきという勇者は背の低い少女だった。さらに報告では、彼女が覇王が使用していた技を使っていたらしい。

 どういうことだ? 彼女は覇王の血筋なのか? それに、彼女の仲間にゆづきがいるそうだ。それとあと一人……報告書にはその一人も女神ランク・オリハルコンと書いてある。

 どういうことだ? オリハルコンが最高位ではないとはいえ、この国に数人しかいないランクのはずだ。

 この国の英雄バトスですらオリハルコンだというのに……。


 リリアンが、オーガ討伐に向かったと聞いた次の日、オーガ討伐のクエストが急展開した。

 リリアンからの緊急報告で、襲われていた村の村長と盗賊を指名手配しろと書いてあった。

 報告には、村長と盗賊が原因でオーガの襲撃が始まったと書かれてあった。しかし、あの村の村長か……。


「シド、確かあの村の村長は『フギオ』とかいう小悪党だったな。お前は覚えているか?」

「いえ、陛下のその記憶力がおかしいのです。しかし、陛下が覚えているのなら顔も分かるでしょう、似顔絵を用意させます」

「あぁ、頼む」


 記憶力がおかしいと言われたが、人よりは物覚えが良いだけだ。

 それと、あの付近にいた盗賊と言えばこいつ等だろう。

 俺は、引き出しから指名手配の盗賊団の似顔絵を取り出し、シドに渡しておく。


 それから数時間後、全員確保したとの報告を得た。

 いくら何でも早すぎないか? と思ったが、アロン王国に潜んでいて、不審者報告されていたそうだ。

 そいつらの処分は後でゆっくりするとして、オーガに襲われていた村が心配だな、と思ったのだが、リリアンから追加報告が上がってきた。


『村の住民と亜人・鬼族が共生することになった』……と。


 何故そうなったのかは、分からないが、この報告通りならば俺からしても望ましい。

 さて、冒険者ギルドに行くとしようか……。この件に関しては、じっくり話し合う必要がある。

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