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クジ引きで勇者に選ばれた村娘。後に女神となる。  作者: ふるか162号
一章 勇者編

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11話 緊急クエスト


 リリアンさんからよいやみのランクを聞いた後、リリアンさんが緊急クエストを受けて欲しいと頼んできた。

 僕もゆーちゃんもまだ新人だよ? という言葉はリリアンさんには届くことはなく、よいやみの奴は「大丈夫っすよ~。もしもの時はあしが守るっす~」とのんきに言っていた。

 正直よいやみの力が分からないので、緊急クエストを受けるかどうかを話し合うために、今日は部屋に戻ることにした。当然よいやみも一緒にだ。

 部屋に入ってすぐにゆーちゃんは寝た。よいやみも寝ようとしたので、話があるから起きているように頼む。


「で? あんたは何ができるの?」


 僕はよいやみに聞くと「その前に名前聞いてもいいっすか?」と返されて、名前を名乗っていないことに気付いた。


「僕はみつき、こっちの……この寝顔の可愛い天使はゆーちゃん……いや、ゆづきだよ」

「天使って何すか。まぁ、いいっす。みつきとゆっきーっすね。覚えたっす」


 こいつ、ゆーちゃんのことをゆっきーって……。

 ま、まぁ、それはいいや。

 それよりも、今はよいやみがどれくらい強いかだ。

 どうやらリリアンさんの話では、僕は異常とのことだが、よいやみはどうなのだろう?

 軽く殺気をぶつけてみる。ある程度強い人なら警戒をするはずだ。

 絶望の村にいる時に、じいちゃんから他人の強さを測るときには殺気をぶつけるのが一番だと教わった。

 弱い人ならば本能的に怯えたり震えたりするし、ある程度の強さならば警戒をするそうだ。

 ここで例外があり、馬鹿ならば殺気に気付きもしないとのことだ。流れ星の流星がそうだったね。

 本当に強い人も気にもしないそうだ。仮に戦闘になっても勝てるか、負けそうになっても逃げることが出来るとの自信の現れだそうだ。ただ、大体の人が殺気について指摘してくるとのことだ。


 さて、よいやみはどうかな?


「みつきー。人に殺気をぶつけるのは良くないっすよ。うちの熊の様になってしまうっすよー」


 僕の予想では警戒するレベルだと思ったが、よいやみの反応は強者の反応だった。

 そんなことよりうちの熊? なんじゃそれ。よいやみは熊でも飼ってんの?

 よいやみに詳しく聞くと、熊というのはよいやみの師匠らしく、熊は性格が好戦的で、まずは人を試すそうだ。

 その試し方がえげつないらしく、僕の場合は弱い人が無意識に怯えるくらいの殺気なのだが、その熊は気絶する寸前まで殺気をぶつけるそうだ。

 よいやみが僕の殺気に平気なのは、熊から異常なほどの殺気を毎日のように浴びせられたからだそうで、何も感じないとのことだった。

 これは……よいやみに期待していいんだろうか?


 次の日、緊急クエストの詳細を聞くためにリリアンさんを訪ねる。

 勇者専用受付にいたラビさんにリリアンさんに会いに来たことを言うと、冒険者ギルドの受付のさらに奥にある応接室に通された。

 応接室でリリアンさんが待っており、僕達が部屋に入ってソファーに座ると一枚の依頼書を渡してきた。


『オーガの襲撃により村に甚大な被害が出ている。至急応援に来て欲しい』

 そう書いてある依頼書を僕はじっくり読む。


「みつき。何を悠長にしているっすか? 今も村が危険な状態なんすよ。早く行くっす」


 よいやみが僕を急かしてくるが、この依頼書、どうもしっくりこない。なんでだろう?

 依頼書を見る限り、オーガが村の建物を壊したり、畑を荒らしたりしているらしい。確かに被害は大きいのだろう。

 オーガという魔物を実際見たことはないが、僕が愛用している魔物図鑑に書いてあったのは、縄張り意識が強く、なわばりに無断で入らない限りは比較的おとなしい気性のはずだ。

 それに気になる報告もある。

 死者が今のところゼロという項目だ。

 いくらおとなしいとはいえ、オーガの身体能力は人間のそれを遥かに凌駕する。オーガは縄張りに入ったものに容赦はない。それにもかかわらず死者がゼロだというのだ。


「リリアンさん。これは本当にオーガ?」

「どういうこと?」

「もしかして、これはオーガじゃなく鬼族じゃないの?」


 鬼族。

 オーガに似た容姿と身体能力を持つ亜人だ。

 魔物と亜人の違いは理性があるかどうかだ。魔物は動物に近く、本能で生きている。

 だからこそ、オーガのように縄張り意識の強いモノ、ゴブリンの様に愚直に襲いかかってくるモノがいる。

 それとは違い、亜人には言葉が通じる為に話し合いでの解決が可能だ。


 この依頼書の詳細を読む限り、人的被害が出ていないことから、これはオーガじゃなくて、鬼族がかかわっている気がする。

 そのことをリリアンさんに伝えると、意外そうな顔をしていた。


「みつきちゃんって、普通の村娘と言っていた割には魔物に詳しいのね」

「え? あぁ、趣味と殺されない為に魔物図鑑とか、近くのお城で魔物の研究とかをしていたから……」

「近くのお城?」

「あ、ち、近くに廃城があったんですよ。そこに古びた図書館があって……」


 危ない危ない。ついうっかりヴァイス城のことを言いそうになったよ。

 ヴァイス城というのは、僕の友達であるアリ姉が治めるお城だ。魔大陸にあるお城……つまりはそういうことであるのだが、これは話すわけにはいかない。


「とりあえず、この村に向かわないと何も分からないね。リリアンさん、移動手段はあるの?」

「そうね。冒険者ギルドから馬車が出るわ。それと、村での治療要因として私も行くわ」

「ゆーちゃんはどうする? もしかしたら危険かもしれないけど」

「いく」

「分かったよ。ゆーちゃんは僕がよいやみを盾にしてでも守るよ。よいやみは勝手に自分を守ってね」

「なんすか? みつきはゆっきーに底なしに甘いっすね。あしにも愛をくれっす」


 こいつは何を言っているんだろうか……。


 その日のお昼に馬車に乗り、オーガに襲われている村までむかう。

 その村までは馬車で一日かかるらしい。僕としても急に襲われても困るから生体感知を使用しておく。

 よいやみにも生体感知を使ってもらおうと思ったのだが、使えないらしい。リリアンさんが言うには、生体感知は超高難易度の魔法らしく、王都でも使える者は限られているそうだ。

 マジか……。村では結構使っている人がいたんだけどな……。


 馬車に揺られ半日くらい経った頃、何かを察知する。

 これは……囲まれているね。


「よいやみ、囲まれている」


 僕が、寝ているゆーちゃんを起さないようによいやみの耳元で囁くと、よいやみは変な顔をしていた。


「なに?」

「誘ってるんすか?」


 何言ってんだ? まぁ、冗談は置いといて……。


「囲んでこちらをけん制しているっぽい。その時点でこれは魔物じゃない。亜人だと思う」


 魔物ならば、問答無用で襲いかかってくる。

 囲んでいるということはそういう知恵があるということ。


「戦うっすか?」

「話し合いで解決したいけど、そうならない可能性はあるね」

「あしが出るっす。みつきは大人しくしてるっす」

「僕も出るよ。よいやみ一人じゃ戦闘回避できるものも回避できないかもしれないからね」

「何やら失礼なことを言われたっす」


 僕達は寝ている二人を起さないようにそっと外に出る。

 外に出ると馬車の御者さんが何事かと聞いてきたのだが、不安にさせない為に「ちょっと見回り」と言っておいた。


 僕とよいやみが囲んでいる連中に向かって歩いて行くと、一人の男が歩いてきた。この人……かなり強い。


「この先は進まない方がよい」


 男は一言そう言って、引き返そうとする。帰すわけにはいかないけどね……。

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