第七話「母親の勘」
「尊ちゃ~ん?」
声がしたほうに振り向く。
そこにはキッチンの壁に隠れ、顔だけ半分出している母親の姿があった。
「みとせちゃんの作ったご飯を食べたかった……って、お母さんの作った料理は食べたくなかったの~?」
「私と仕事どっちが大事なのよ的な質問やめて。どっちが作ってくれた料理も食べたいから。美味しいから」
「あはは……」
お母さんのぽや~んとした性格を知っているみとせは苦笑いしていた。
「火元は大丈夫なの? 揚げ物してたりとか」
「ええ、だから今度はみとせちゃんに見ててほしいなぁ~って」
「あっ、すみません。代わりに見ますね」
再び軽い足取りでキッチンへと戻っていく。
そして入れ替わるようにお母さんが俺のところにやって来る。
「次はお母さんの番ね~」
「この家は帰ってきた息子とお話ししなきゃいけないルールでもあるの?」
「そうなの?」
「こっちが聞いてるんだけど!」
お母さんはマイペースで天然だから掴みどころがない。
はっきりと話題誘導してあげないと話が脱線しまくるんだ。
「とりあえずただいま」
「おかえりなさ~い。無事に帰ってきてくれて嬉しいわ~」
「おつかい行ってきたよ」
「ありがとう~」
俺からビニール袋を受け取り、中身を一瞥する。
「全部買えた?」
「リンゴが高めだったから一個だけにしておいたよ」
「そうなの~? 残念ねぇ……」
食後のデザートだったはずだから一個減っても特に問題ないはずだ。
「途中で食べちゃった?」
「いやっ、食べてないよ……!」
「ふぅ~ん」
お母さんは俺の顔をじっと見つめて何か言いたそうにしている。
こりゃ嘘に気づいてるな、百パーセント、絶対、確実に。
「ま、後でパパと一緒に聞きましょうね~」
受け取ったビニール袋を持ってキッチンへと戻っていく。
「はぁ……仕方ないか」
あまり気を使わせたくなかったけど、危険が迫っていることは家族全員に伝えておいたほうがいいか。