第二十八話「心の支え」
「……ってことがあったんだよ」
一家そろった夕食の時間、俺は今日の身体検査で起きた出来事の一部始終を両親に話し聞かせていた。
「ふむ……」
「へぇ~そんなことがあったんだ~」
お父さんはちゃんと話を聞きましたという短い相槌を、お母さんは息子たちの活躍に感心し嬉しそうに頷いていた。
「二人ともよくがんばったわね~。お母さん鼻が高いわ」
マンガであれば音符が周りに舞っていそうなほどの喜びようだった。
特に何事もなく例年通りだった気がするけど……。
「はぁ……」
対してみとせは浮かない表情をしていた。
自分の血力が毎年凄まじい勢いで成長していることを気にかけているようだ。
「みとせちゃん、不安に思っていることがあったら遠慮なく言っていいのよ~。私達は家族も同然なんだから」
「うん」
お母さんの発言に対し、お父さんも小さく頷いて同意する。
みとせはお母さんの言葉に背中を押され、ぽつぽつと心の中に溜まったもやもやを少しずつ吐き出していった。
「私、自分が怖いです。他の人以上に血力の精度が上がっていって、しかもあんなに強力なのにまだ通常血力者だなんて……しかも、成績が毎年下がっていってるんです。まるで私の体、化け物に変わっていってるみたいです……力だけあふれていって、人としての知性が衰えていって……まるで、化け物みたいです。私……すごく、怖いです」
食事の箸を止め、自分の食器に盛られたおかずをじっと見つめるみとせ。
「先のことがわからないのは確かに不安だ」
お父さんが珍しく誰よりも先に言葉を発した。
「未解決の行方不明の事件だってある。美智恵や尊、みとせちゃんがいつ狙われるかと思うとお父さんでも怖い。しかし、怖がるだけでは未来は切り開けない。勇気を持つ努力をしなさい。その場に踏みとどまっていてはだめだ」
「パパの言うことはいつも難しすぎるのよ~」
お母さんが困ったような笑みでお父さんを見やる。
「つまり~、弱腰になっていないで何事も前向きに考えてみなさいってことよ~。その力は確かに強すぎるけど、使いどころによっては必要な力なはずよ。この世に生まれてきた以上、何かしらの理由があるんだわ」
「理由、ですか」
「みとせちゃんは今、自分の血力を恐れて背を向けている状況なの。背中を向けたままじゃ真実は見えてこないわ。きちんと真実と向かい合わないと正しい道は見えてこないわ」
「…………」
お父さんとお母さんに諭されてもまだ不安が残っているようで、顔から暗い雰囲気が抜けていない。
「あのさ、怖いかもしれないけど俺もついてるから。だから困ったことがあれば頼っていいよ。一人で答えを出すのが難しいなら俺と二人で、それでも難しい時はお父さんやお母さんだっている。心配することなんて何もない。みんなで不安の種を解消していこうよ」
みとせは独りじゃない、と一番伝えたいことを伝える。
俺の意図が伝わったのか、みとせは安心したように笑みを見せた。
「うん……わかった」
次の瞬間、みとせの顔から不安の色はすっかり抜けていた。
心の拠り所が一つでも残っていれば、人は何度でも立ち上がって頑張れるんだ。
俺は俺に出来ることで、精いっぱいみとせのことを応援してやろう。




