第二十七話「昇華血力者の誕生」
グラウンドから体育館に入る。
中にいる人たちがみんな、ある一点を見つめていた。
その視線の先には御堂君がいた。
「何かあったの?」
俺は近くにいた他の生徒に話を聞くことにした。
「何かあの人が昇華血力者になったらしいよ」
「昇華血力者に?」
一人の例外もなく誰でも血力を扱えるが、始めは通常血力者と呼ばれるランクに位置づけされる。
そこから能力が開花・成長するごとに昇華→覚醒→神化と呼ばれるようになる。
全員が全員これらになれるわけではないが、少なくとも昇華に関しては成人したくらいで発動するのが一般的だ。
でも彼はおよそ一六歳で通常血力者から昇華血力者に成長している。
これは血力者として才能がある揺るぎない証拠だった。
「それっ! それぇぇッ!」
御堂君が腕を振り回すと、彼の周りにある木の葉が縦横無尽に舞っていた。
その様子を見ながら隣の生徒が話を続ける。
「まだ一年なのにもう昇華血力者になってる。こりゃあ一年の男子一位の座は確実に彼のモノだね」
「へぇー、すごいなあ……」
俺だってまだ通常血力者のままなのに、彼のほうが才能があるということか。
ちょっと悔しいな。
「おっ、瀧真クン!」
呼ばれたので歩いて近づいていく。
「なっ? 言った通りだろ! 俺は運がいいんだ!」
「おめでとう」
とにかく凄いことなので拍手で彼の成果を称える。
「これで君には負けないよ!」
御堂君が腕を振り下ろすと、彼の周りを舞っていた数枚の木の葉が俺めがけて襲い掛かってくる。
鋭い風切り音から察するに、以前言っていた通り、刃のように鋭くさせた木の葉を操れているようだ。
「っ!」
相手の木の葉はもはや小さな刃。
避ければ背後にいるみとせに当たってしまう。
しかし素手で払い落とすと怪我をする。
瞬時にそう判断した俺は、間に合わないとわかっていても手の平に霊力を集め、刀を生成しようと試みる。
「尊ッ!」
みとせの叫び声と同時に、木の葉の刃が俺の額、首、胸、腹、両脚の寸前で止まる。
対して俺の血力は、刃先数センチほどしか生成できていない。
これが真剣勝負だった場合、俺は今の一撃で戦闘不能になっていた。
避けてもみとせに当たる、血力で対抗しようにも間に合わず俺が倒される……完全に詰んでいた、惨敗だった。
「どうやら今回は俺の勝ちみたいだね」
「そうみたい。すごい血力だね」
素直な感想を述べ、感心から頬を緩ませて笑った。
しかし御堂君の顔から笑みがだんだん失われていき、機嫌の悪そうな顔になる。
「瀧真クンさあ、怒んないの?」
「怒る? …………ちょっとよく分からないんだけど」
俺の態度が予想外の反応だったらしく、御堂君はつまらなそうに舌打ちした。
「チッ。もういいよ……」
彼はそのまま計測場所から離れ、打ち付けるような足音を立てて一人でどこかへ行ってしまった。
「尊っ、だいじょうぶ?」
みとせが今にも泣きだしそうな面持ちで駆け寄ってくる。
「うん。どこも痛くないし血も……流れてないね。うん、大丈夫だよ」
みとせに安心してもらえるよう、歯を浮かばせて笑ってみせる。
「……っ、よかった……」
みとせの不安から解放された表情を見て、俺も心から安心した。
御堂君、いきなり危なかったなあ……でもさっきの攻撃にとっさに反応できないようじゃ色んな脅威からみとせを守れない。
これからも強くなるぞ、みとせのために!
こうして全校生徒の身体検査が終了した。
残った計測項目は後日の体育の授業で行われ、それらの結果と合わせて学年ごとの男女一位が決定される。
俺の見立てでは、男子は御堂君、女子はみとせ……だろうな。
一日最後のホームルームが終わり、俺とみとせは寄り道せずそのまま帰路へつくことにした。




