第二十六話「成長」
全員の血力鑑査が終わり、俺たちはみな建物から出ていく。
みとせの血力を見ていた他のクラスの生徒たちは、自ら後退し道を譲る。
クラスメイトたちもひどい目に遭っているため、俺とみとせからより離れて歩いてきていた。
「ごめんなさい、私のせいで尊まで巻き込んじゃった」
力ない声で申し訳なさそうに謝るみとせ。
時間が経ち血力使用の興奮から醒めてきたのか、いつものみとせに戻っていた。
「俺は全然気にしてないよ。むしろ二人きりになれる機会が増えた」
「…………」
俺の言葉を受けてもみとせは何も喋らない。
しばらくすると、重たそうに口を開いた。
「私、尊におんぶにだっこで……このままでいいのかな。一人でも何とかやっていけるように、がんばらなきゃいけないんじゃないかな……」
人に頼るのは楽だが、同時に心に負担がかかってしまう。
確かに……言われてみれば、烏滸がましいけど、今まで過保護だったかもしれない。
不本意ながら、心の成長の芽を何度か踏み潰していたかもしれない。
「……ごめん、そこまで気づかなかった。みとせのことを助けるのが当たり前って思ってて、何でも俺がしてやればいいんだって決めつけてた……でも、もう子供じゃないもんな」
「うん……私、強くなりたい。いつまでも守られてばかりだと成長できないもん。子供のまま……いたくない……」
過去の辛い出来事を思い出しているのか、自然に拳を作っていた。
「じゃあどうにもならない時だけ俺を頼ってもらうってことで、ね」
みとせが安心できるように、優しい眼差しを向ける。
視線が重なった彼女の目が嬉しそうに震え、次第に頬をほころばせる。
「わかった。でもそれじゃ不公平だから……尊が辛い時も、私を頼っていいよ」
思わぬ反撃に心臓が一度大きく跳ねる。
ずっと控えめで自分に自信を持てなかった彼女が、自分を頼っていい……と、前向きな姿勢を見せてくれた。
凄く嬉しかった。
思わず頬が緩みに緩みきってニンマリしてしまう。
「な、なにっ? 私、ヘンなこと言っちゃったかな……っ」
前向きな姿勢を見せてくれたはいいけど慣れないことだったので、すぐいつもの控えめなみとせに戻ってしまう。
「みとせのいつもと違う一面を見れたから嬉しかっただけ」
「うぅぅ~……やだもう」
みとせはうつむいて頬を赤らめた。
普段見せない姿を見せるのは誰だって恥ずかしい。
そんな愛らしい姿を見せる彼女に、より深い愛情を覚えるのだった。
その時だった――体育館から歓声が上がった。
「何かあったのかしら……」
「行ってみよう」
血力鑑査が最後の項目なので後は何をしようが自由だ。
俺たちは歓声が聞こえた場所へと向かった。




