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オロチの子種  作者: 雛鳥めっせ
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第十九話「血力鑑査」

 全ての体力測定が終わり、恐らくみんなが一番楽しみにしていたであろう血力鑑査がこれからいよいよ始まる。

 鑑査会場は血力の種類ごとに場所が分けられている。

 血力には『物理破壊型』『身体向上型』『肉体作用型』『精神作用型』『物質変異型』『特殊型』とカテゴリーが分かれている。

 俺とみとせは物理破壊型、真直と凛子は身体向上型とタイプが違うため鑑査場所も別のところになる。

 物理破壊型は他者や他の建築物に危険が及ぶ可能性があるため、鑑査場所は屋外……グラウンドへの移動となる。

「幸運を祈るッ!!」

 真直が俺とみとせにビシッと仰々しく敬礼する。

 いつもハイテンションな親友だが、今日この時は一段と嬉しそうだ。

「そっちも」

 お返しにこちらも敬礼してみせる。

 みとせも少し遅れて俺の物真似をするかのように敬礼を返した。

「またね」

 凛子も軽く敬礼をするとスタスタと軽快な足取りで自分の鑑査場所へと向かった。

「俺たちも行こうか」

「うんっ、ドキドキするね」

 みとせは意外とリラックスしており、いつもよりハキハキとした口調で返事をした。

 何というか、緊張感を味方にして状況を楽しんでいるようにも見える。

「一年ぶりだなぁ」

「尊、また強くなってるかもね」

「だといいな。みとせを守るためにも」

「……うんっ」

 小さくうなずくと、恥ずかしそうに俺の服の裾をちょいとつまんでくる。

 つままれた部分にみとせの温かさを感じながら鑑査場所へと向かった。


 グラウンドの一角に、壁と天井を鉄格子で囲んだ檻のような、見るからに頑丈な施設がある。

 普通の学校には不釣り合いな白銀一色の無骨な建築物……それが物理破壊型の血力者の鑑査場所だった。

「何だか実験動物になった気分だよ」

 クラスメイトの一人がぼやく。

 確かに他の血力タイプの人たちは屋内だったり、整った施設や機械に触れての鑑査が行われるらしい。

 まぁ物理破壊型だし、威力さえ見れれば特別な施設や機械は不要。

 そして余計な費用はかけたくないという合理的かつ原始的な方法かもしれない。

「失礼します」

 檻――もとい、鑑査場所の扉を開き門をくぐる。

 すると施設の奥にぽつんと小柄な人影が一つあった。

 物理破壊型の血力者であれば鑑査のたびにお世話になる“それ”は、少女の姿をしていた。

 一歩近づくたびに容姿が鮮明になっていく。

 目を引くのは濡れた烏羽のような艶のある長い黒髪で、先端は地面にまで届いてなお余っている。

 服装は白装束で、上から下まで完全な和装だった。

 そして初めて“それ”を見た者は驚きに一瞬心臓が止まる思いをするだろう。

 人の白目に当たる部分は全て黒色。

 虹彩の輪郭にはうっすらと赤い筋が走っており、中身も全て黒一色に染まっている。

 見ていると暗闇をのぞき込んでいるような気分にさせられる、不気味という言葉を体現した存在。

 それが目の前にいるモノ、妖怪『痛々女(つつめ)』である。

「皆様ようこそお越し下さいました。本日皆様の物理破壊型血力の鑑査員及び被検体を務めさせて頂きます妖怪『痛々女(つつめ)』に御座います。何卒宜しくお願い申し上げます」

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