第十七話「幸運の男」
身長・体重・視力など全ての検査を終えた後、次の体力測定の場所へと向かうべく廊下を移動していた。
すると奥から見知った顔が手をあげながら近づいてきた。
「やあ瀧真クン、また会ったね!」
「御堂君」
先日、商店街から俺の後を付いてきていた御堂健一だった。
「ようやく来たね、この日が!」
「俺は別に待ち望んだりしてなかったけど……」
相変わらず爽やかな笑顔を見せながら白い歯を見せつけてくる。
「お? おっ? 誰だっ」
事情を知らない真直が興味津々に尋ねてくる。
「クラスは違うけど前に色々あって知り合った御堂健一君。今回の血力鑑査で一位を狙っているらしい」
「実は俺も一位を狙ってるんだ!」
胸を張って自信満々そうに宣言する真直。
「君は瀧真クンのお友達?」
「おう! クラスメイトの外道真直だッ」
「あはは、元気な人だ。だけど今回の血力鑑査では本当に譲れないよ。一位になって披露イベントで発表されれば、今後の進路に大きなプラスになるからねっ」
「ふーんそうなんかー」
真直は興味なさそうに相槌だけ打った。
「あれ……そういうの狙って一位取るつもりじゃなかった、とか?」
「一位ってのは一番強い証だからな! それだけわかれば十分だッ」
「あははっ、単純だなぁ」
真直と御堂君は特に衝突するわけでもなく、まるで好敵手のように爽やかなやり取りを交わしていた。
「ちなみに御堂はどんな血力なんだっ?」
相手が強いとワクワクするのか、真直は目を輝かせながら御堂君に詰め寄る。
「それは秘密。瀧真クンも内緒にしといてね」
「わかった、約束する」
「そっかあ、残念だ。後のお楽しみってことか」
「そうしておいてもらえると助かるよ」
御堂君はあははと苦笑いしたあと、軽くため息をついた。
「でもあの血力だとインパクトに欠けるからなぁ……」
彼の血力は葉刃……周囲一〇メートル以内の葉っぱを刃のように鋭くできる能力。
それ以外に何もできないと言っていたから確かにインパクトは薄い。
このままだと俺の血力のほうが高い評価を受けるだろう。
「タイミングよく昇華血力者になれれば一位は確実なんだけどね」
「それは確かにそうかもだけど……」
血力者はランクが四段階に分けられている。
下から『通常血力者』『昇華血力者』『覚醒血力者』『神化血力者』だ。
ランクが上がるごとに新しい能力が身に着くわけだが、皆が皆なれるわけではない。
通常から昇華へは二〇人に一人、昇華から覚醒へは更に一〇〇人に一人、覚醒から神化へは更に更に五〇〇人に一人……とかなり振るいにかけられる。
そういえばお父さんとお母さんはどちらも『覚醒血力者』だから……聞いたことないけど、実はすごい血統だったりするのかな?
「だから今回の血力鑑査でもうまくいくはずさ」
「そう上手く事が運ぶかなあ」
「可能性はあるよ、だってオレ昔から運いいから。高額の宝くじ当てたことあるし、危ない交通事故を二度も回避したし、一人旅の宿泊先のホテルで来客一〇万人目に当たったこともあるし。全部ここぞというタイミングが神がかってるんだ」
「それは確かに運がよさそうだけど……」
「いずれも少しタイミングがずれただけで全ておじゃんになる。今回もなんだかうまくいきそうな気がするんだ」
少し自慢げにフフンと鼻を鳴らす御堂君。
確かにすごい強運の持ち主みたいだけど……運に頼りすぎてる節があって逆に不安になってくる。
「御堂くーん! ちゃんとついてきてよ~!」
「あっやべ! じゃあまたな!」
「おうよッ!」
軽く手を振って去る御堂君に対し、ビシッと手を決めて見送る真直。
「早く体力測定おわらせて血力鑑査にいこーぜッ」
最後に行われる血力鑑査が一番の楽しみなのか、真直は目を輝かせながら上機嫌に笑っていた。




