第十四話「見てほしいから」
「あー……朝から疲れるなぁ……」
いったん部屋に戻った俺はため息をつきながら学園へ行く準備を進めることにした。
お母さんがドアを押さえつけてくれていたおかげで余計な体力を使ってしまった。
「ったく、一体なに考えてるんだ……」
コンッ、コンッ……
軽く、控えめなノックが二回鳴った。
たぶんみとせだろう。
「どうぞ」
答えたあと少しの間をおいて、ゆっくりとドアが開いていく。
しかし全部開けられることはなく、顔を半分だけのぞかせられるスペースしか開かなかった。
そこへひょこっと少しだけ顔を見せるみとせ。
しかし俺と目を合わせるのが恥ずかしいのか、視線は下を向いていた
「もしかして、さっきのこと?」
「うん……」
しばらく時間は経っているが、頬の赤みはまだ消えていない。
「その、用事があったから来たとは思うんだけど……そのぅ……ちゃんとノック、してほしいな……」
「したよ?」
「聞こえなかったんだけど……」
「驚かせたら悪いと思って、こんな感じで」
俺は近くにあった机を指でたたき、先ほどの弱めのノックを再現した。
「小さすぎるわよ」
「え、そう? 普通に聞こえると思うんだけど」
「うー……考え事してたから聞こえなかったのかも」
「考え事?」
聞き返すと、みとせはハッと顔を上げて俺と視線を合わせる。
すると元の色に戻りかけていたみとせの頬が再び赤くなり、ドア越しに身体をもじもじとさせた。
「あの……尊に、いつもの制服姿を見てもらうか、それとも体育の時間にしか見せられない体操服を朝から着ていこうか……それ、迷っちゃって……」
俺のために悩んで考え込んでたんだな。
そこにいきなり本人が入ってきて、しかも下着姿見られたら混乱するのは当然だ。
「そっか……そうとも知らずにごめん、いきなり入っちゃって」
「ううん、尊だったらいいよ。ただ、いきなりだったからビックリしちゃって……それに……」
きれいって言ってもらえたから嬉しいし――と、かすかに聞こえる声量でつぶやく。
聞き直すとまたあたふたしちゃうから、あえてツッコまないことにした。




