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オロチの子種  作者: 雛鳥めっせ
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第八話「家族の団欒」

 午後七時、家族全員がそろったところで晩ご飯となった。

 俺の左隣にみとせ、俺の前にお父さんでその隣がお母さん……これが定位置だ。

「「いただきます」」

 全員で手を合わせて並べられた食事に手を付けていく。

 食卓に並べられたのは白米、みそ汁、ハンバーグ、ししゃもの塩焼き、キャベツの千切り、ミニトマト、キュウリの酢漬け、他にも軽くつまめる漬物や煮豆など数点と、そしてお茶。

「まずはみそ汁からもらおうかな」

 汁椀を両手で持ち上げてから、左手はそのまま、右手は手のひらを下に向けたまま箸の上にかぶせるようにして取る。

 右手に持った箸を左手の人差し指と中指に挟み、そのまま指先で箸を右へと撫でていく。

 持ち手の端に届いたら手のひらを上に向け、そのまま左に滑らせて箸を握った。

「ずず……ずず……っ」

 火傷しないように少しずつ口の中に流し込む。

 濃いみそ味の香りが口の中いっぱいに広がり、その温かさが鼻を抜けて思わずため息を誘った。

「濃い目で美味しいなあ」

「そう? よかったわ~。みとせちゃんがね、尊ちゃんは濃い目が好きだからってアドバイスしてくれたのよ~」

「お、おばさん……っ!」

「私は薄めのほうがいいと思うんだけどね~、ほら、パパもいるじゃない?」

「俺はどっちでも構わんぞ」

 みそ汁をすすっていたお父さんが意見を口にする。

 それを見たみとせは申し訳なさそうに小さく頭を下げた。

「あ……なんかすみません、余計なことして……」

 みとせは極端に人見知りというわけではないのだが、中年の男性が苦手だ。

 きっと亡くなった自分の父と重ねてしまっているんだと思う。

 色々と大変な目に遭ってるし……。

「気にしなくていい」

「もぉ~パパったらそんなぶきっちょに言わなくても、もっと優しく言えばいいのに~……ねぇ?」

 俺と目を合わせて同意を求めてくる。

 うんともいいやとも答えづらいのでちょっと困った。

「別にお父さん高血圧でもないし、たまにはいいんじゃない?」

「そうだな」

 もう一度、ずずずっと音を立ててみそ汁を口に含む。

 見てのとおり真面目であまり話さない性格なので出てくる言葉も短いものばかりだ。

「みとせちゃん、この味付けもなかなかいいぞ」

「あ、ありがとうございます」

「作ったの、私なんだけど~……」

「美智恵、うまいぞ」

「あは~っ」

 花が咲いたというより太陽が咲いたといったほうがいいレベルの満面の笑みだった。

「今夜は精が付くように、追加で山芋もおろしちゃいましょうか~」

「「「ぶふッ!?」」」

 俺とみとせ、そしてお父さんまでもが盛大にみそ汁を吹いてしまった。

「もぉーっ! 気まずくなるからそういうこと言わないでよっ」

 手にしていた箸を、汁椀を持っている左手の人差し指と中指に挟み、空いた手で台拭きを手にしてこぼした汁をふき取っていく。

「尊、お父さんにも」

 同じようにこぼしてしまったお父さんにもそのまま台拭きを渡した。

「あ、私にもください、後でいいので……」

「はい」

 お父さんはすぐに拭き終わったようで、俺と同じ汁椀と箸の持ち方をしたみとせも台拭きを受け取り、汚した部分を拭き取っていた。

「あらあら~みんな汚いわね~」

「「「誰のせい(だと思ってるの!?・ですかっ・だ)」」」

 俺のみならずみとせ、そしてお父さんにまでツッコまれていた。

「だってパパが、私の作ったみそ汁おいしい愛してる結婚したい、って言ってくれたから……嬉しくてつい」

「えっ……結婚、ちゃんとしてるんだよね?」

「尊、お母さんの言うことを真面目にとるな」

 さすがは長年の付き合い、お父さんはお母さんの対応法を熟知しているみたいだ。

 気を取り直してししゃもの塩焼きを口にする。

「もぐもぐ……んっ、ちょうど中にまで火が通ってて塩加減もばっちりだ」

「ずずっ……」

 隣でみとせが頬を染めながらみそ汁をちびちび飲んでいた。

「みとせが焼いたの?」

「ふぇっ? えっ、うん、そうだけど……」

「美味しいよ」

「ぁ……うんっ、ありがと」

「山芋追加ね~」

 お母さんの余計な一言のせいで盛大に拭いたり、喉を詰まらせたりなど、またもやみんなの箸が止まってしまったことは言うまでもない。

 ハプニングを間に挟みつつも楽しい食事の時間は過ぎていく。


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