カニクリームコロッケ
蟹は
大きくそのハサミを振りかぶった
僕ではなく
君の方へ
僕はただ
そのハサミの行く末を
見続けることしかできなくて
徐々に
そのハサミに切り刻まれる
君の叫び声を
ただ
耳に手を当てて
聞こえないふりをして
顔を壁に押し付けて
見ないふりをして
いつも
手を出さず
手を伸ばさず
差し伸べず
かさかさと動く足音が
いつか遠くへ
立ち去ったらいいのに
と
滴る赤いものと
黒い糸が
どこまで続くのか
と
早く
流れていってしまえ
と
蟹の持ったハサミには
僕は無力で
せめて
いいコロモをつけて
あげるくらいのコトしか
できないね
ありがとうございました。