池畔の黎明
見渡す限り、覆っているのは深い闇。
春も夏も秋も冬も関係無しに、闇夜は何故か肌寒い。
ぶるり、と震えながら。それでも私は見つめ続ける。
私の心の中に巣食う、暗く恐ろしい気持ちを見つめ続ける。
私を見つめているのは誰だ。
赤い門をくぐった向こうに佇む気配が、ひとつ。
気配の主はどこにもいない。なのに気配はそこにある。
人ならざる者が、そこにいた。
ふわり。
明るく美しい陽光が一筋、世界を照らし始めた。
先程まで見えなかった大きな池の水面をすべり。
青い空の下を、緑の草の上を駆けて。
世界を明るく照らし始めた。
闇の音はしなくなり、夜の寒さも消えていく。
たった一筋の陽光が、私の闇まで溶かしていった。
池畔の黎明。