——水母——
昔っからここ来てるけど、いつも変わらず暗いな。
「お母さん見て〜!くらげ!」
俺はとある水族館に来ていた。
親子やカップル、独りで来ている人も多数居る。
まぁ俺も、その『独り』の一部なんだけどな。
そして俺は、水母のブースに居た。
幻想的でいつまでもゆらゆらと揺らぐ水母。特に好きとかでもないけど、見惚れてしまう。
「お前たちはいつも気軽でいいよなぁ…」
と、仕切られたガラス越しからくらげに…ではなく、独り言を呟いた。
——その後家(仮)に帰った。
テーブルには、
『秋月へ、
ちょっと出かけてくる。
明日の朝にはいるから安心しとけ。
あ、それと、誕生日おめっとさん。
陸助より 』
それは同居している親友からの置き手紙だった。
秋月ってのは俺のことだな。秋月直登。21歳。
親友の方は、夏河陸助。21歳。
今日は12月9日。俺の誕生日で、22歳になる。
まぁこりゃ陸助は彼女がいるのになぁ…なんで男と同居してんだか。
さみぃ…
カチッカチッと音の鳴る時計の方向に顔を向けると、時間はもう23時を回っていた。
シャワーを浴び、暖かいお湯に浸かり、10数分も経たないうちに上がった。寒いからな。
それからは髪も乾かさず眠りについた。
「♪.?@!;-&¥/(¥*)>$^℃<|//(])@♪☆!!」
!?!?!?
目の前には…水母…?のような物体、生物がいて、意味不明で頓珍漢な言葉を言われていた。なんか周りは赤く錆びた閉鎖されてる空間だし、下見たら……うわああ!?
なんか下深いんですけど!?汚い薄茶色の少し透けてる水みたいなものが下にあるんだが!?
な、なんだよ、つき落とそうってのかよ!?
水母のようなやつはだんだんと近づいて来て、この高いところから突き落とすようにしてくる。怖い。
「や、やめろまて!待てって!やめっ!!」
カタっと、足を踏み外した感覚を感じた。
「あっ…」
この体全体に伸し掛かる重力。
ものすごい速さで落ちてゆく自分は、どんな顔をしていたのか、それはわからないが、きっとゲロを吐くほど絶望的な気持ち悪い顔をしていたのだろう。
やがて__。
「うわああああああぁぁぁ!!!!」
断末魔の叫び。少しずつ捻じ曲げられていき、やがて死に至るような絶望。
水の中にずぼんと入ると思いきや、すっと入っていった感じがした。何かが水中で舞い、濁った水。それでも深く深くへと堕ちて逝く。
やがて速度も加速していきもう何がどうなっているのかが分からない。
この状況は決して正常ではない。異常だ。
気狂いの所業。
これは到底夢だとは思えない。
嫌だ、俺は平和に暮らしたいんだ、やめてくれ、こんな変な死に方は嫌なんだ、もっといい死に方が良かったよ…
捻じ曲げられていく精神。
深く深くへと逝く自分の存在はなんなのだろうか。
自分はなんなのかすらわからないまま——。
「秋月、秋月起きろって、まだ寝てんのか?そろそろ起きろって」
「水母__」
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