家族とともに
私には家族がいる
生涯の伴侶と、子どもが一人
一戸建てを買い、ファミリーカーを買い、家族のために働いている
私の財布は伴侶に預け、私自身はなけなしのお小遣いを渡されている
それでも私は幸せだった
お昼は愛妻弁当で、家に帰れば伴侶と子どもが元気に迎えてくれる
そんな幸せの日々が、突然崩壊した
妻と子どもを失った。あまりにも突然だった
今まで家族のために働いてきた私は、自分のために働き始めた
家に帰ってからは、自分の時間が多くなった
私は趣味に時間を使うことにした
この歳になって初めて始める趣味だった
不慣れだったから苦労も多かった
1から始めた分、初期投資に使う費用も多かった
私は趣味に対して本気で取り組むことにした
家は売った。独り暮らし向けの賃貸に移った
車は売った。軽自動車に乗り換えた
出費を抑えて趣味に費やすことを優先的に考えた
調子がいいと仕事の疲れが吹き飛んだ
調子が悪いと仕事以上に疲れを感じた
本気で取り組んだ結果だった
自分のために働き、家計を自分で管理していくうちに、趣味に注ぎ込める金額が増えていった
私は自分の第二の人生が始まっていたことに気がついた
私の第二の人生は朝起きても、家に帰っても、一人きりだった
寂しさを覚えた私はペットを飼い始めた
挨拶を覚えてもらおうと、毎日挨拶していた
そのうちに、返事が返ってくるようになった
家に帰るとペットが迎えてくれた
私は歳を重ね、ペットは3代目になっていた
長年取り組んできた私の趣味は、成果を収めていた
その界隈で、私を知らない人はいない、と言われていた
そんな私の成果は、注目を集めた
私にこんな質問が飛んできた
――亡き家族への思い、亡き家族に向けて一言ありますか?
私は言葉に詰まりながら、自分の思いを語った
――私が今まで取り組んできたことは、私の生涯の伴侶が、いつかやってみたいと瞳を輝かせて語ってくれた、その夢です。私の成果は、私と伴侶が成し遂げた、私達の子どもです。私は常に、家族とともにありました。
私の第二の人生は、私と家族のためのものだった
家に帰り、家族に迎えられ、テレビのニュースを見ていた
私の成果が取り上げられていた
私はそれを、家族の皆と一緒に見ていた
私は、妻と子どもを幸せにしてあげられただろうか
幸せにできたと、切に願い、私は家族と一緒に眠りについた
その眠りは、とても深く、とても長かった
作品と呼ぶのもおこがましい、稚拙な文を読んでいただき、ありがとうございます。