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涙雨

作者: 橘内七松

 雨は嫌いだ

 産まれたのは雨の日だ

 1人で歩けるようになったのは晴れの日だ

 親に捨てられたのは雨の日だ

 仲間が出来たのは晴れの日だ

 仲間に裏切られたのは雨の日だ

 食べる物を見つけたのは晴れの日だ

 食べる物を奪われたのは雨の日だ

 今日は雨、きっと嫌な事に遭うのだろう


 ほら来た、大きい奴が来た

 いつも追いかけられるのだ

 時には殴られ、蹴られることもある

 逃げたいけれど、逃げる体力が無い

 大きい奴が近づいてくる

 捕まった

 逃げ出そうともがくけど、大きい奴の力は強い

 ボクの抵抗なんて気にする素振りも見せない

 ボクを捕まえたまま歩きだす

 雨の中すみかに連れ帰り、ボクを食べる気なんだ

 唯一自由な両腕を必死に動かす

 大きい奴は動じない

 大きい奴の腕に爪を立てたけど、力が入らず刺さらない

 大きい奴は動じない

 まだ雨は降り続ける


 すみかに着いた

 大きい奴はボクを熱い水に浸して汚れを落とす

 大きい奴はボクにご飯を食べさせる

 肥えさせておいしく食べる気なんだ

 大きい奴が隙を見せたら、ボクはここから逃げ出してやる

 それまで元気になるために、大きい奴に従うふりをする

 まだ雨は降り続ける


 季節が一巡りした

 ボクは一回り大きくなった

 食べ頃だ

 いつでも逃げ出せるように心構えする

 数日雨が降り続いている

 だけど、大きい奴は一向に食べる素振りを見せない

 ボクの油断を誘っているのだろうか

 わからない

 わからないけれど

 少しだけ、雨が好きになったかもしれない

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