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竜劍の騒動歌  作者: しから
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第9話 眷族との再会

「姉様。姉様!

起きて下さい! 姉様!」


 優しく揺さぶられる感覚と私、いいや、俺を呼ぶ声。

 駄目だな。どうにもフィーに姉様と呼ばれるとアナスタシアの感覚が出てきてしまう。

 俺が天城春陽である事を常に自覚する為にも少女(アナスタシア)姿でも出来るだけ男言葉を心掛けないと。

 …思考が明後日の方に行ってしまったな。……思考するだけの余裕が出来ている?

 ああ、先程までの痛みが嘘のように消えているのだな。

 気絶する寸前の事を思い出せば、懐かしい眷族達の声も聞いていたし、さすが俺にはもったいないくらいに出来た眷族達。

 今日だけでも2回も気絶した情けない主だけど、せめてしっかり労おう……。


「おはよう。皆。

 情けないところを見せた。こんな主の元に再び集まってくれてありがとう」

「シア姉!!

 良かった! 無事に起きてくれて!」


 抱きついてきたのは小柄な少女。ただし、私より身長も胸もある……。この無邪気さが嬉しい半分、やや複雑。前世じゃ私より小さかったのに!


「心配してくれてありがとう。ルー」


 手を回して抱き締める。ルシアは眷族で1番甘えん坊だったな。


「姫、先程気を失われたのは私の失態、如何様にも罰をお与え下さい!」


 近くに片膝をついて礼をとる男が悲壮感をかもしながら口を開く。前世に比べてやや痩せた印象があるが、相変わらず真面目過ぎるな…、クレスは。


「折角の再会に水を指すな。クレス」


 遠回しに罰などいらないと言っておく。


「そうですか? ありがとうございます。姫。

 …それではもう片方の件について、話し合いましょう」

「? もう片方?」


 よくわからない俺に顔を向けたクレスは明らかに目を鋭くしている? あれ? なんか怒っている?


「ええ。あのくそジジイの静止を無視して、【方舟】に触れた件について」

「いや、あれは早く身の潔白を証明したかっただけで…」

「ほう? では面倒くさかった訳ではないと? 本当に言い切ることができますか? アナスタシア様?」


 あ、ヤバい。クレスが俺を姫じゃなく名前の方で読んでる。かなりキレてるっぽい。


「ごめんなさい。ただ面倒だったので、静止を聞こえないふりしただけです! 本当に、本当に申し訳ありませんでした」


 土下座です。

 ひたすら謝ります。

 主とか眷族とか関係なくここは謝らないと危険だと判断できます。

 勿論、助け船を出してくれるように壁際に立つ大男をチラチラ見ることも忘れません。


「ふう。そのくらいでよいじゃろ?

 お嬢も反省しとるようじゃし、むしろ、ああいう場面であの決断力こそお嬢の真骨頂じゃないか?」


 こちらの思いが通じた事に、心の中でガッツポーズをとる。ナイスだ、ボル!


「鯨は甘過ぎる。姫がそれで何度痛い目をみたと思うのです?

 ただでさえ、姫は事件を明後日の方向に向けたうえに大混乱をもたらす、天性のトラブルメーカーなのですよ?」


 はい、ラルド教団に、辺境都市トラ-ビュー、迷いの森と等々心あたりがありすぎる。


「別に咎めなしと言う意味で言っとる訳じゃない。

 今は久々の再会に互いの近況報告を優先すべきと言うとるんじゃ」

「…そうですね。ではまず私から名乗るのが礼儀でしょうか?

 現世では、深山勇人(みやまゆうと)と言う名です。前世の名はクレスファルト・ローギス」

「クレスよ、前世の名を名乗る必要なぞないじゃろ?」

「そうはいきません。姫が相手であるならば、再び名を捧げるのが道理ですから」


 あくまで、前世の恩に報いる事を優先するのか?


「いい加減、眷族をやめて自由に生きれば良いだろうに?」


 …他の種族と違って、竜の眷族をやめる事は難しくない。主に願い出てそれを認められれば良いだけだ。


「遠慮します。そもそも姫は初めてあった時に選択肢として自由も認めて下さいましたよ。

 眷族になったのも、それをやめる気がないのも全て私の選択です」

「まあ、それについては儂らも同意じゃ。お嬢の為じゃない。儂らはお嬢を護る事で自分達の充足を得とる。お嬢はいつも通りで良い!」


 クレスに続くボル。抱きついたままのルーもコクコクと頷いている。


「分かった。好きにしろ」

「無論。さて、儂はボルボネスの転生者。名は榑林晃雪(くればやしこうせつ)と言う。

 勇人と同じ3年じゃからお嬢から見たら先輩じゃな」

「ルシアは今、月宮彩音(つきみやあやね)だよ。

 フィー姉と同じクラス!」

「…この流れだと俺も自己紹介するべきか? 元アナスタシア・ルートセイム。現世では天城春陽」

「いや、知っとるから。お嬢も気づいておるじゃろ? あの大聖堂の様子は学園中に流されておったと」

「礼儀を返しただけだ。そう言えば、あれからどうなった?

 その辺を聞こうと思っていたんだが?」


 そう言う俺に対して、皆どういうふうに言うかを考えているように顔をしかめる。なかなか、自体は困惑しているようだな…。

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