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black ogre  作者: zephy1024
第一章 美小鬼王編
51/68

051.顎粉砕

 こいつは一体何を言っている?

 死んでいなかった?

 それじゃ、何の為にこんな事をしていたんだ?


「私のオリジナルは、エジソリンガに言葉巧みに騙されたのであろうな。もっともエジソリンガも、私の本当の目的までは気付かなかったようだが」


「どうゆうことだ?」


 俺達が話している間、リナは人の切れた人形のようだ。

 腕をだらんとさせている。

 何処を見ているかも定かではない。


(アレ)は封印なのだよ。封印された力がリナを媒介にしているのだ。私のオリジナルは、死すべき運命だった彼女を救う為に、ここを含めたいくつかの実験場を用意したようだがな。愚かなるオリジナルは、(アレ)に秘められた強大な力を、もっと別の事に使うべきだった。私のようにな」


「大層な事言ってるけど、お前は何に使うつもりなんだ?」


「我々はこの世界では、矮小過ぎる。それは何故か? 力がないからだよ。ならば力さえあれば、強大な力さえあれば、全てを支配出来るとは思わないかね?」


「世界制服でもするつもりか?」


「まさにその通りだよ。私はこの世の全てを力で屈服させてみせる。彼女の力を使ってね」


「ミュー、あいつに何か聞きたい事はあるか?」


 俺の質問に、ミューは即座には反応出来ない。

 きっと、頭の中が混乱真っ最中なのだろう。


「え? えっと、リナ、お母様が死すべき運命だったって一体何の事?」


「詳細までは知らぬが、彼女は何らかの邪法により、死の宣告を受けていた。残念ながら詳細までは知らぬ。そして解除する方法を知っているとして取り入ったのが、エジソリンガなのだ。もっとも死の宣告を施したのも奴だったようだな。自作自演という奴だよ。今のリナは、その死の宣告を取り除かれた状態だ。だから、持久戦に持ち込めば、彼女が死ぬなのどという甘い考えはしない方が良いぞ」


 大雑把には把握出来た。

 正直、憤怒を通り越してしまった。

 逆に冷静になっちまったけど。


「ミュー、あいつ、ぶっ飛ばしていいか?」


「え? あ、うん、はい。私の分もお願いします」


「何を言っているのだ? さっきまで、逃げるだけで精一杯だったのに」


鬼化全解放(デモニックフルオープン)


「な!? 何だ!? この力は一体!?」


黒鬼型式肆鬼神喰(ブラックオーガタイプフォーデモンイーター)


「何・・あれ? アキトがアキトじゃなくなっていく? これこそが黒き鬼の本当の力とでも言うの? あれじゃ、まるでまるで・・悪魔の化身じゃない!?」


 あぁまぁ、そうだよな。

 こんな姿見たら誰だって怖いよね。


「リ・・リナ!? あいつをこへぶぉ」


 阿呆がさせるかよ。

 俺の拳がブラの顎を打ち抜いた。

 手加減はしたので、死んではいないはずだ。

 殺す前に情報を引き出さないといけないからな。


 リナ・シャルドナ=レラ。

 可能であればだったけども、彼女は無傷で確保したかった。

 ならば、殴れるのは一人しかいないからね。


「ミュー、そこで大人しくしてろ」


 俺は闇鬼(ヤミオニ)(ツチ)の目の前に移動した。

 柄の部分に両手をかける。


「ぶぁかぐぁ、それうぉぬけぶぁうちぐぁわのぼうふぇきがやぶぇるぶぉぁ」


 加減したつもりだった。

 だけど、顎の骨でも粉砕してしまったか?

 何言ってるのか、何となくわかったからよしとしよう。


 両手に力を込めて(ツチ)を引き抜く。

 柄を粉砕してしまわないかちょっと不安だった。

 しかし、名前負けはしてないようだ。

 抵抗があるも、俺は力任せに引き抜いた。


 抜けた直後、黒い光が一直線に天井に放たれる。

 いや、天井を突き抜けて空へ放たれているようだ。

 気にはなるが、シェリイナを助けるのが先だ。


「お母様!?」


 ミューの声が気になった。

 でも、後ろを振り向いてる余裕はたぶんない。

 闇鬼(ヤミオニ)(ツチ)を握り締めたままの俺。

 一直線に球体のカプセルに向かう。

 閉じ込められているシェリイナを救出する為。


 予想はしていたが、かなり強固な素材のようだ。

 そのうえ、中に存在する闇気が固形化し始めている。

 この闇気、意識でもあるのだろうか?


 考えている時間はないな。

 俺は手に持っている闇鬼(ヤミオニ)(ツチ)を叩きつける。

 球体のカプセルに衝突する寸前、神気を流し込んだ。


 ちょっと流し込んだだけだった。

 しかし一瞬で、球体の外側が広範囲に溶ける。

 想像以上にオリジナルはやばいなこれ。

 自分が纏っている半鎧状の黒鬼の力を信じて、俺は突っ込んだ。


 黒いドロドロした中を抜ける。

 内側の壁は既に存在していない。

 侵蝕されつつある内側の液体。

 伸ばした手に触れる温かさ。

 一気に手元に引き寄せる。


黒球(ブラックボール)


 同時に唱えて俺達を包む。

 引き寄せた温かさを一瞬確認する。

 シェリアナさんとほぼ瓜二つの顔。

 白い髪の女性。

 彼女で間違いなさそうだ。


 数瞬で溶解した黒球(ブラックボール)

 俺は彼女も半鎧状の黒き鬼の力で包む。

 いそいでその場を離脱した。


「ふぅ、もう少し長いしたらやばかったかもしれないな」


 そのままミューの元へ向かう。

 予想だにしてない状況に陥っていた。


「くろうぃきおぎぃ」


 もう何言っているかわからないブラ・アルパ。

 彼は、手に短剣を持ってミューを人質に取っている。


「一難去ってまた一難か?」


 その割には、ミューは平静だな。

 ウィンクした彼女。

 俺は状況の推移を見守る事にした。

 シェリイナさんを抱きかかえているってのもあるけど。

 それにしても、最近妙に女性の裸に縁があるな。

 ってこんな時に何考えてるんだ?


「お父様、いえ、ブラ・アルパ。あなた、私の得意分野忘れてないかしら?」


 嘲笑するようなミュー。

 俺にはその意図がさっぱりわからない。


「くずぉむずぅめぬぁなぃをいぇてりゃぁ?」


 本当、何言ってるかわからん。


「何故私が、相手に接近しなければ効果の薄い魔術を覚えてると思うの?」


 俺には見えていた。

 でも、おそらくブラには、反応出来ない。

 何が起きたかすらわからなかっただろうな。


 ブラの顎に頭突きを叩きこんだミュー。

 三十センチ以上身長差があるから出来る事だな。

 余りの痛みに、彼は短剣を取り落とす。


 次の瞬間、ブラは宙を舞っていた。

 ミューの一本背負い。

 綺麗に決まったな。

 ブラは完全に白目を向いている。


「リナさんは?」


「意識を失っているだけ」


 ミューが指差した先、リナさんが寝かされていた。


「シェリイナさんに服を着せないとな。目覚めた時に勘違いされるのは後免被りたいから」


「誰に勘違いされるのかしらね?」


 何故、そこでジト目で俺を見る?


「とりあえず、お母様の隣に寝かせて」


 ミューの指示で、隣に寝かせた。


「それじゃ、アキト、下の層の娘もお願い」


「了解」


 何か不貞腐れたというか、拗ねたような声なのは何でだ?


「そういえば、さっきの謎の黒い光は?」


 背後から聞こえる衣擦れみたいな音。

 たぶん、意識のない相手に服着せるのって大変なんじゃ?


「わからないけど、すぐ消えたわ」


「そうか。何だったんだろう?」


黒縛六重(ブラックバインドセクスタプル)


 念の為、俺はブラを身動きが出来ないように縛り付けた。


「それじゃ、まかせた」


「わかってる。アキト、お願いね」


 早く助けて来いってことね。


「了解。それでどっから下りるんだ?」


「シェリイナのいたカプセルの更に奥」


 ミューの声質から呆れている雰囲気を感じた。


「わかった」


 俺はそのまま、振り向く事なく、再び奥へ向かった。


-----------------------------------------


 階段を下りると、直線の通路。

 その先には、扉が見える。

 扉の両隣には、無造作にフルプレートらしき甲冑が転がっていた。


「あの扉の奥か?」


 進みながら良く見てみる。

 扉の上部や、全身甲冑のところどころが溶け始めていた。

 天井もいたるところに穴が開いている。


「やばいんじゃないのか?」


 徐々に早足になり、気付けば俺は走っていた。

 鉄格子の窓らしきところ。

 かすかに水色の何かが見える。

 扉の前に立った俺。

 上部が徐々に溶け始めているのも構わず、押し開けた。

 そして、俺の目にはいってきた光景。


 一人の少女が、椅子に座り俺を見ていた。

 青紫のドレスに、水色の髪、白い肌。

 耳が少し尖っている。

 水色の髪の色合いが、リラとは少し違う。

 その事を覗けば瓜二つの少女だった。


「見たらわかるね。確かにそうだなってそんな事言っている場合じゃない」


 感情のない眼差しだった。

 だが、気付けば熱を帯びたように揺らめいている。


「ここから出るぞ」


 彼女に近づいた俺は、有無を言わさず抱かかえた。

 抵抗する事なく、俺の首に両手を回す少女。


「私、黒き鬼様に触れているのね」


 妙に艶かしい彼女の声が耳を打つ。

 その場で反転した俺は我が目を一瞬疑った。


 溶けて穴だらけの天井。

 扉に近い程、溶解の度合いが酷い。

 鉄格子の窓も、壁も上の部分が既に存在をなくしている。


「リラ、さん、舌噛まないように口は閉じててくれ」


「はい」


 俺は、刀を抜くと横薙ぎに振り抜く。

 即座に、前に加速した。

 放たれた黒い刀撃が、壁を吹き飛ばす。

 吹き飛ばされ、一瞬開かれた空間。

 迷う事なく飛び込んだ。

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