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black ogre  作者: zephy1024
第一章 美小鬼王編
43/68

043.ガブリーンの地下通路へ②

「レラって事はリラのご先祖様達って事ですか?」


「まあ、そうゆう事になるじゃろうな」


 神妙な表情のリラ。

 話しに耳を傾けているようだ。


「でもシャルドナとファルナス? 微妙に違う?」


「その当たりの違いの理由は不明じゃな。勝手な推測ならばは出来るが」


「そうですね。でもそんな推測に意味はないでしょうしね」


「そうじゃな」


 書かれている内容も、少し気にはなる。

 だけど俺も英語が得意なわけじゃない。

 ここの内容を理解しようとすれば時間がかかる。


 そもそも、辞書とかがないわけで。

 意味を知らない単語が出てきたらそこで詰みだ。

 翻訳してみるかどうかも含めて、今回の事件が解決してから考えよう。

 見ているのは一部だけだ。

 全てが英語だと確定出来るわけでもないしな。


「アキトさん、エイゴが何かわからないけど、読めるの?」


「ん? 単語単語でわかるのはあるけど。ちゃんとした意味を調べるなら、時間が必要かなぁ? そもそも全てが、英語で書かれているかわからないしね」


「そのエイゴって何?」


 いや、何って聞かれてもね。

 英語は英語としか言えないけど。

 いざ、聞かれると、どう説明していいか困るな。


「うーん、アルファベットって文字があって、そのアルファベットで書かれた言語かな?」


「ふうん? よくわかんないけど、わかった」


「今回の問題が解決したら、わかる範囲でちゃんと説明するよ」


「うん」


「それじゃ、先に進むとするかのぅ」


 バルルケンさんの言葉に頷いた俺達。

 再び歩き始めた。

 その先も壁画は存在している。

 俺達は絵だけを見ていく。


 最初は何か大きな戦いの始まり。

 そして、その戦いの推移のようにも見える。

 剣を持った少女と杖を持った少女。

 二人が必ず描かれている。


 軍勢を率いている姿。

 時には二人だけ。

 魔物らしきものを蹴散らしていた。


 地下という空間。

 ひんやりとしている空気。

 その中にある壁画。

 ところどころ、経年劣化だろう。

 色がくすんでいたり、破損している。


 本当に残したのが、リラの先祖だった。

 だとしても、彼女達は何故、こんなところに残したんだろうな?

 バルルケンさんの話しでは、知る人は限られているのに。


 それとも、知る人が少ない方が良かったのだろうか?

 いま、そんな事考えてもどうしようもないな。

 そう思いなおした俺は、意識を本来の目的に集中させた。


-----------------------------------------


 途中で妨害があるとも考えていた。

 だが、何事もなく辿り着いたようだ。


「ここを上がると城内の南塔じゃ」


 バルルケンさんの言葉に頷く俺とリラ。


「それで作戦としてはどうするつもりなのじゃ? 儂とお主達二人で、二手に分かれて行動するのが良いと思うのじゃが?」


「え? この先も協力して頂けるんですか?」


「もちろんじゃ」


「ありがとうございます」


 どうするべきか?

 リラ一人なら俺だけでもたぶん守りきれる。

 ならば、俺達二人が陽動に出るべきか?

 でも、リラを危険に巻き込む事になるよな。


「それじゃ、アキトさんと私が陽動で暴れて、バルルケンさんがその間に侵入ってのはどうでしょうか?」


「儂はそれで構わないが、リラひ・・いや、お穣ちゃん。覚悟はあるのだな?」


「はい」


 バルルケンさんとリラが、視線を交錯させる。

 しばらく見つめ合っている二人。

 ほんの少しだけ、バルルケンさんの口元がほころんだ。

 結局、俺が口を差し挟む間もなかった。

 作戦は決定してしまったようだ。


「アキト、お主の気持ちもわからんではない。しかし、頭数が限られている以上、腹を括るんじゃな」


 バルルケンさんの言葉。

 反論したい事はいくつも頭に浮かんだ。

 だけど、結局俺は何も言う事が出来ない。

 諦めて、ただ頷くしかなかった。


-----------------------------------------


 南塔で別れた俺達。

 陽動として動く俺とリラ。

 堂々と鬼小鬼(オーガゴブリン)達の前に現れる。


 体の一部が肥大している者。

 変色していたりする個体もいる。

 見た限り、正常そうなのは一体もいない。


 俺を見ると、一直線に向かってくる。

 作戦も戦術もまるでないようだ。

 唸って走ってくるだけ。


 話しかけても言葉さえ通じなさそうだ。

 思考能力そのものがないのはありがたい。

 だけど、妙に薄気味悪い気もした。

 それでも、向かってくるのは薙ぎ倒す。

 そうしないと、俺とリラが進めない。


 城跡内の大まかな構造。

 一応、バルルケンさんに聞かされていた。

 何処も崩れてたり、亀裂が入ってたりで廃墟同然だ。


 庭と思しき場所。

 草木が自由を謳歌している。

 一種壮観な状態だな。

 かつて庭道らしい道。

 俺達はそこを歩いているようだ。


「リラ、あいつらは元々、あんななのか?」


「うーん? 私も村からほとんど出た事ないけど、何度かあった人達はあんなんじゃなかったよ」


「そうか」


 移動速度をリラに合わせてる。

 このままだと囲まれかねないな。

 そう思った俺。


「リラ、止まれ」


「え? あ、うん」


 リラが素直に止まる。

 俺は背中を向けるように屈む。


「え? アキトさん? 何してるの?」


「俺の首に手を回せ」


 リラがどんな表情をしているのかは、わからない。

 だけど、数瞬の間が置かれる。

 彼女の手が、俺の肩に触れるのがわかった。

 首に交差されるリラの手。


黒縛三重(ブラックバインドトレブル)


 俺の言葉と同時に、黒い帯が俺とリラを固定する。

 腰で一巻き、胸で一巻き。

 最後の人巻きは、リラのお尻を支えるように、幅を広くした。

 椅子のような感じだな。


「リラ、少し口を閉じていろ」


 固定を完了した俺は、突然立ち上がった。

 周囲に集まりだしている鬼小鬼(オーガゴブリン)達。

 彼等を排除する為だ。


 彼らが攻撃を開始する前に、体術で吹き飛ばしてく。

 突然の事に、リラが俺にしがみつている。

 たぶん驚いているんだろうな。


 いきなりで、後免ね。

 でも、彼等が近付きすぎていたんだよ。

 説明している時間はない、そう思ったんだ。


 悲鳴の一つでもあげるかと思った。

 本当は、あげたいのかもしれない。

 けど、俺の言葉に忠実に守っているみたいだ。


 頭の中で教えられた構造。

 俺は思い出しながら進む。

 そして辿り着いた大扉。


 重々しい扉だ。

 表面は錆付いてはいる。

 だが、しっかりと閉じられていた。


 シャルドナ城は、東西南北に塔が存在する。

 それらの中央に城の本体があるのだ。

 東西南北の塔から、中央の城本体に行く。

 その為には、中庭を通らなければいけない。


 もしくは、城の周囲をぐるりと囲んでる壁。

 おそらく十メートル以上ある高い壁だ。

 その高い壁を飛び越えるしかないそうだ。


 ここの構造が、普通なのかどうかは俺にはわからない。

 日本にしろ、外国にしろ、城の知識なんて持ち合わせてはいないからね。


 普通は、攻めにくくするものじゃないのかと思う。

 けど、この城の構造はどうなんだろうな?

 攻められやすいけど、逃げやすくもあるのか?

 よくわかんないや。


 そんな思考に浸っている俺。

 突如リラが、更に強く俺の首をしめた。

 えっと、リラさん?

 何故俺は首を絞められているのですか?


「馬鹿・・びっくりしたんだから」


 か細い声のリラ。

 若干涙声?

 いや、まさかね?

 緊急だった。

 でも、さすがにやり過ぎた?


「説明している時間が惜しかったとはいえ、ごめんな」


「あ・あとで絶対、ちゃんと謝ってもらうんだから」


「うん、わかったよ。さて、開けるぞ」


「え? う・うん。でもここって中央塔の正面?」


 かすかだけど涙声のままか。

   いや、なんか楽しくて、後半調子にのってたな。

 言ったら収集つかなくなりそう、だから言わないけど。


「たぶんな」


「だとしてもなんで?」


「ん? トップってのは、偉い人が座るようなところで、ふんぞり返ってるかと思ってね」


「えっと・・うんと」


「とりあえず、開けるぞ」


「え、あ? うん」


 冷たい金属の感触。

 両手で感じている。

 俺は、扉をゆっくりと開けた。


 そして、俺とリラの視界にはいってきたもの。

 突き刺さっている剣だ。

 二メートルはあろうかという、巨大な剣だった。

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