表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
black ogre  作者: zephy1024
第一章 美小鬼王編
34/68

034.ドウラ国突入⑦

 黒き瞳に黒き髪のアキト。

 何とか逃げる事には成功した。

 けど、彼は一体何者なのだろうか?

 それにあの時、何故私は恥ずかしいと思った。


 裸身を見せる。

 今まで無かったわけじゃない。

 でもその時に、羞恥に悶えるなんて事なかった。


 さっきは戦闘の真っ只中。

 私はどうしてしまった?


 それに気になる事もある。

 サウザンとワンドルに貸し与えた武器。

 闇鬼(ヤミオニ)(ツチ)の複製品。

 複製品ではある。

 けど闇気の力がなければ、使えない代物。


 アキト、彼が使えた。

 という事は、彼も闇気の力を持っている。

 そう考えなければ、おかしい。


 彼らにも、私と同じような技術がある。

 そうゆう事なのだろうか?

 まさか正真正銘、生まれ持っての闇気持ち?

 いやさすがに、それは考えにくいと思うの。


 そんな事を考えている私。

 仄かな光が照らす洞窟を、一人走っていた。


 サウザンの暴走した闇気の結晶。

 そう長くない時間で、エネルギー切れを起してしまうだろう。

 私も、エネルギーを半分以上消費してしまった。

 きっと勝ち目はない。


 負けてしまったのは不本意。

 だけど、あんなやっかいな奴がいる。

 それが事がわかっただけでも、良かった。

 かもしれないわね。


 恐らく彼らも、直ぐには私の居場所を見つける事は出来ないはず。

 いやまて、ハンドル・ドウナがあそこにいた。


 彼が何処まで私達の事を嗅ぎ付けたのかまではわからない。

 けど、私が何処に向うかは、勘付かれてるかもしれないわね。

 実験体として生かしておいた。

 それは間違いだったみたい。


 洞窟を抜けた先。

 私は待機させていた青翼竜(ブルーワイバーン)に飛び乗る。

 この子は、お父様が私に与えてくれた。

 移動用のペット。


 どうやって従順にさせたのかはわからない。

 けど、何故か私の言う事を理解して従ってくれる。


 騎乗用の鞍に括り付けて置いたローブ。

 私は羽織ると、彼女に跨って大空に飛び上がった。

 空は恨めしくなるぐらい快晴。

 太陽がキラキラと輝いている。


 私も出会い方さえ違えば、あっちのリラみたいに普通に生きれたのかな・・。

 何を弱気になっているのかしら。

 今更もう、後戻りは出来ない。

 わかっているのに。


 でも何だろうこの気持ち?

 敵なのに、あのアキトという男。

 もっと話しをしてみたい。

 そう思っている自分がいる。


 貴重なサンプルになるからなのだろうか?

 自分で自分の気持ちがよくわからない。


-----------------------------------------


 リラ・ミューに逃げられてしまった。

 だが、アラルの話しでは、行き先はわかっているらしい。


 詳しい話しはとりあえず置いておく。

 今俺はリラとアムの側にいる。

 彼女の負傷が気になってはいた。


 シェリアナさんの回復魔法で、治癒はされた。

 戦闘等の激しい運動さえしなければ、問題ないらしい。

 その程度には、回復させたとの事だ。

 見ていても、普通に動く分には問題ないように見える。


 シェリアナさんの妹のシェリイナさん。

 彼女の魔法であれば、完全に回復させる事も可能らしい。

 この世界の回復魔法は便利のようだな。


 俺のいた世界では、こんなに即効で回復なんて出来なかった。

 例外ももちろんあったけど。


 ふと、アラルの方に視線を向ける。

 無言でサウザンの亡骸の側。

 佇む鬼小鬼(オーガゴブリン)の側にいる。


 シェリアナさんの話しでは、彼はサウザンの息子。

 ハンドル・ドウナと言うらしい。

 アラルとシェリアナさんが、牢屋に辿り着いた所、牢屋に入れられていたそうだ。


 牢屋にはもう一人いた。

 ライサという名の、白い虎耳少女。

 彼女が捕らえられていた。


 彼女は、アラルやリラとも面識のあった。

 タイダル国から派遣されていた、使者の一人らしい。


 俺が怖いのか?

 リラの影に隠れて、俺の視界に入らないようにしているみたい。

 それでも視界に入っているのだけども。


 ちょっとだけショックではある。

 黒き鬼って奴の所以。

 なんだろうなと半ば諦めてもいる。


 黒眼で黒髪なだけで黒き鬼として恐れられてしまう。

 この世界では、最早宿命なんだろうな。


 ハンドルとライサの二人。

 牢屋に囚われていた理由は気になる。

 だけど、一番問題なのはリリラなのではないかと思っている。


 さっきから表情は硬い。

 何かを隠している気もする。

 でも、その内容はさっぱりわからない。


 それによくよくみれば、リリラとリラも似てるんだよな。

 目付きとか胸の大きさとかの違い。

 そこはともかくとして、顔の輪郭とか雰囲気が似ている。

 何となくそんな気がしていた。


 今までそんな事気にもしてなかった。

 けど、リラ・ミューとの遭遇。

 それが、そう感じるようになった理由なのかもしれない。


 リラ・ミューが何をしようとしているのか。

 それはわからない。

 だけど、シェリアナさんの妹の事もある。

 余りここに、長居をするわけにもいかないだろうな。


-----------------------------------------


 俺とアラルの二人。

 リラ・ミューの逃げていって開けっ放しだった扉。

 その先に進み、追ってみた。

 やはり、予想通りだ。

 見つける事は出来なかった。


 それなりの時間も経過してる。

 当たり前と言えば当たり前だな。


 一直線に続いた洞窟の先。

 かなり大きな、バルコニー状の岩のでっぱりになっている。

 飛び降りれなくもない高さだ。


 その下は鬱蒼とした森になっている。

 もしその中に逃げ込まれた。

 そうあれば探すのは困難を極めるだろう。


 それに、魔術について詳しいみたいだ。

 空でも飛んで逃げた。

 そんな可能性もあるかもしれない。

 俺達に、追いかけるような人員もいないし。


 リラ達の所へ戻った俺達。

 念の為、洞窟内を隅々まで確認してみた。

 踏み込んでいない場所も含めての探検。


 ハンドルが道案内。

 俺とアラルと彼の三人で探索だ。

 リラとアムとシェリアナさん、ライサの四人が居残り班。


 シェリアナさんは、リラの護衛も兼ねてもらっている。

 そんな形で探索をした俺達。

 特にこれといって、何かを発見する事も出来ない。

 常駐している数名。

 非戦闘員も含めた、鬼小鬼(オーガゴブリン)と遭遇しただけだ。


 俺とアラル、ハンドルの三人。

 探索を追え皆の下へ戻った。


 背後には道中で遭遇した者達。

 ハンドルが説明、時には説得した鬼小鬼(オーガゴブリン)がいる。

 内訳としては戦士が三人。

 メイドが四人と少数だ。


 居残り班に合流。

 ハンドルと、戦士三人にメイド四人。

 俺がここに来る時にぶちのめした衛兵。

 彼等を回収、介抱に向った。


「さて、リリラ。何で一人で先走ったか聞かせてくれや」


 リリラの瞳を真直ぐに見つめたまま、そう言ったアラル。

 彼女は目を背ける事もない。

 アラルの視線を受けている。

 だがその瞳は、何処か物悲しい感じもしていた。

 彼女の目が決意したかのように、アラルを射抜いたようにも見える。


「話したくありません」


 それだけ言うと、口を閉ざしてしまったリリラ。

 正直俺はどう対処していいかすらわからない。

 無言の空間。

 それも余りいい雰囲気ではない空間。

 正直余り居心地は良くない。


「このままこうして、無言になっていてもどうしようもありません。私には事情は詳しくはわかりませんが、まずは必要な事から行なうべきではないでしょうか?」


 シェリアナさんが空気をかえるかのように紡ぎだした発言。

 アラルは対するように発言しようとする。


「これも必要な――」


 そこに珍しく、リラがアラルの言葉に被せた。


「確かに必要な事かもしれません。でも優先すべき事は他にもあるはずではないですか?」


 本人は意識しているのかはわからない。

 しかし、口調も少し違う。

 こうなんというか、そこまで大きい声ではない。

 なのに、不思議とその場を支配している。

 そんなような感覚を覚えた。


「今は私と同じ顔のミューの行方と、シェリアナさんの妹、シェリイナさんの救助を優先すべきではないかと思います」


 普段とは違う雰囲気のリラ。

 アラルも言葉を続ける事が出来ず唖然としていた。


「とりあえずは、ハンドル達が集めてくる情報を待つのと、それぞれの情報とかの共有だな」


 内心では空気に呑まれていた。

 何も言えなくなりそうだった俺。

 なんとかそう締め括った。


 アラルは不満そうだ。

 だが、一応納得してくれたらしい。

 反論とかはしなかった。


 情報の共有は、大事な事だ。

 その為、俺から、ここに入ってからの行動と状況。

 一つ一つを、その場の全員に説明していった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ