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black ogre  作者: zephy1024
第一章 美小鬼王編
30/68

030.ドウラ国突入③

「シェリアナには悪いが、詳しい話しを聞いてる時間は今はねぇぞ。とりあえずお前、いい加減名前を教えやがれ。名前がわからねぇと呼び難いだろうが?」


「あぁ、そうだった。私はハンドル・ドウナ。サウザン・ドウナの次男だ。父は・・サウザンは、仮面女ミューが現れてから、おかしくなってしまった」


「仮面女ミュー? 誰だそりゃ?」


 訝しげな表情になるアラルとシェリアナ。


「仮面の女なら私も見ました。リリラの魔術を魔術で無効化したようで、ミューと言うのですか? 彼女はかなり高位の魔術師のようです」


 ライサの発言に、驚きを隠しえない二人。


「魔術無効の魔術? そんなの聞いた事ないわ」


「あぁ、俺も初めて聞いたぜ? そんな事可能なのか?」


「残念ながら、彼女の言葉は真実です。シェリアナ殿には思い当たる節があるはずですが?」


 ハンドルが、ライサの言葉を裏付けるように言葉を発する。

 再び予想外の事を彼は言った。


「思い当たる節?」


 しばし思考の世界に没頭するシェリアナ。


「ま・まさか? シェリイナの魔術がほとんど効果なかったのは」


「おそらくミューの仕業でしょう。我々ドウラ国がシャルルアン国へ攻め入った時、彼女も同行しております。そしてシェリイナ殿は、ここに連れてこられた時に、ミューと魔術合戦をしたようです。一時期リリラ殿、ライサ殿が入っていた牢にいました。そこで、こちらの素性に気付いた彼女からは、いろいろと話しを伺いました。ミューの魔術無効の魔術に関しては、その時にシェリイナ殿から聞かされました。父とミューは王城に眠っていた、黒き鬼の残した負の財産を利用して、何かをするつもりのようです」


「負の財産? そりゃなんだ?」


 アラルの問いかけに、ハンドルは首を横に振るだけだ。


「詳細はわかりません。私がここに閉じ込められる前に、父とミューが偶然そのような話しをしているのを、耳にしただけですので。父はもう私の知る父ではないでしょう。なので殺してでも父を止めなければなりません」


 昏い決意の篭った瞳。

 先程の絶望の眼とは、趣を意にしている。

 彼の言葉にアラルとシェリアナ、ライサは順番に顔を見合わせた。

 アラルはハンドルの瞳をしばし見つめ、覚悟の程を見定めようとする。


「ハンドル、あんたの決意が、覚悟が良いか悪いかは俺にはわからん。だが、まずはそこから出なきゃはじまらねぇよな」


 鍵束の鍵を使い、順番に開けれる鍵を探すアラル。

 シェリアナもライサも、彼の行動に同調しているようだ。

 止めようとはしなかった。


 そして開け放たれた鉄格子の扉。

 中に無言で進んでいくシェリアナに、アラルは驚く。


「アラル。あなただけが、場合によっては同族殺しになる片棒を被る必要はないわ」


 ハンドルを縛り付けている頑丈な手枷足枷。

 造作も無く剣を使い斬り裂いた。

 拘束から開放されたハンドルは、一度地面に崩れ落ちた。

 だが、ゆっくりと立ち上がり、手足の感覚をしばし確かめる。


 一通り体の調子を確認し終わった彼。

 アラルと、彼の隣に戻っていたシェリアナ。

 二人に向き直り、真剣な眼差しで二人を見やる。


「このご恩は忘れませぬ」


 大地に頭をこすり付けるかの如く、跪き涙を流し始めた。

 その涙は、変わってしまった父への涙なのか?

 これから行なうつもりの、凶行への涙なのか?

 本人しかわからないだろう。


「おいおい、やめてくれ。そうゆうのは全てが終わってからにしろや」


「とりあえず頭を上げて下さい。私達はするべき事があります。拘束されたすぐで申し訳ないですが、サウザンの元までの案内お願いできますでしょうか?」


 渋々立ち上がったハンドル。

 上背の差だ。

 アラルとシェリアナ、ライサからは見上げる形になる。


「はい。もちろん、あなた方に請われなくても案内するつもりでしたから、それぐらいはして当然です。こちらへ」


 ハンドルの案内で、サウザン・ミューの元へ向う一行。


「しかしなんでハンドルを殺さなかった? それに次男ってことなら、少なくとも長男もいるはずだろ?」


 アラルの疑問。

 視線は前を向いたまま、ハンドルが答えた。


「我々は四人兄弟です。兄と姉、弟は順番に王城跡に派遣されたようです。理由はわかりませんが」


「殺さない理由が何かあるってことか?」


「負の財産と関係あるのかしら?」


 シェリアナの思いつきのような発言。


「それはわかりません。しかしミューを捕まえて吐かせればわかるかもしれません」


「とりあえず急ごうぜ。そのミューって女の魔術師? はいくらアキトでもやっかいかもしれん。教えてやらねぇと」


「えぇ、そうね。急ぎましょう」


「アラル殿、シェリアナ殿のお仲間、リラ殿の最凶の護衛がアキト殿と言うのですか?」


「あぁ、そうだ。ハンドル、魔術無効って事は、俺達戦士や聖騎士の力さえ無効化出来るかもしれん。先に知ってるのと知らないのとでは、スタートラインが変わるからな」


「確かにそうかもしれません。急ぎます」


 今まで拘束されていた人物とは思えない。

 かなりの速度で歩き始めたハンドル。

 そのタフさに舌を巻いたアラル。

 シェリアナもライサも同様のようだ。


 背後からの、六つのおかしな眼差しに気付いたハンドル。

 前を向いたまま、周囲への警戒を怠る事はなく言った。


「お三方どうされました?」


「い・いや何でもねぇよ。そういやぁ、何でお前はあそこにいれられてたんだ?」


「ミューの危険性を父に直談判した為です。どうやらミューの差し金のようでした」


-----------------------------------------


 俺達は、罠らしき物にも遭遇する事なく進んでいった。

 洞窟内、深く考える事もなく真っ直ぐに歩いていく。

 そして、辿り着いたのは両開きの扉。

 見るからに金属製で、それなりの重さもありそうだ。


「右側を開ける。リラとアムは左側の扉の前で待機して動くなよ」


「はい」


「ン!」


 元気な返事なのはいいんだけど。

 二人とも明らかに、いつでも動けるような体勢ですよね?

 いやまぁ正しいんですけどね。


 扉に触れてみるが、特に何も起きない。

 何かしらの罠があるという事はないようだ。

 扉の右側に、両の手の平を押し付ける。


 徐々に開いていく扉。

 相手側の戦力が集結している可能性も考えてはいた。

 が、そんな事もなく扉は開いた。


 扉の奧は、広い円状にになっている。

 中央に少し豪華な椅子が二つ。

 その椅子の一つに、座っている鬼小鬼(オーガゴブリン)が一人。

 こいつがおそらくサウザン・ドウナなのだろう。


 椅子の側にはもう一人いた。

 仮面をかぶっており、表情はよくわからない。

 だけど、体のラインから考えて少女のようだ。

 何者かはわからない。

 しかし、状況が状況だけに、警戒した方がいいだろうな。


 そしてもう一人、後姿でもわかった。

 リリラさんが、位置的にはサウザンと話しをしている。

 俺にはそうに見えた。


 手枷と足枷をされているようだ。

 話しに余程夢中だったのだろう。

 俺達には気付いていないようだ。


「後ろを向いてみるがいい」


 男の声が微かに聞こえた。

 その声に反応するかのように立ち上がったリリラさん。

 こちらを向いた。


 俺と視線が合い、彼女が一気に驚きの表情に変わる。

 その後に、青褪め絶望したかのような眼差しになった。


「リラ、アム、リリラさんがいる。いくぞ」


「はい」


「ン!」


 俺を先頭に歩いていく。

 驚いているのはリリラさんだけ。

 他の二人は予定通り。

 とでも言わんばかりの余裕の表情だ。


「な・・なんで来たの・・。リラまで連れて・・。これじゃ・・意味ないじゃない・・」


 まるで絶望したかのようにリリラさん。

 彼女のか細い声が、俺の耳に聴こえる。

 何に絶望しているのか知らない。

 が、あんたの方こそ大馬鹿野郎だと、言ってやりたくなった。


 でもリリラさんの説得はリラの仕事だ。

 そう思って俺は言葉を飲み込む。


「あんたがサウザン・ドウナか?」


 俺は、王というよりは戦士という出で立ちの鬼小鬼(オーガゴブリン)を睨む。


「その通り。サウザン・ドウナだ」


「そっちの仮面女は?」


「有能な部下とでも言えばいいだろうかな」


「ミューと申します。お見知りおきを」


 まるでどこぞのお姫様のように、服の裾を握り優雅に礼をしてきた。

 だが俺は、彼女に何処と無く違和感を感じている。

 その違和感の理由はさっぱりわからない。


「王として命ずる。リラ・シャルドナ=レラを渡してもらおうか」

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